
誰が決めた? 現行F1規則に矛先、セパンでの「全く容認できないレゴレース」に批判続出
2026年F1第16戦バーレーンGPのレース開始を巡る混乱に、ドライバーたちは厳しい評価を下した。長引く待機に不満を示し、現行パワーユニット(PU)や制御の複雑さにも改めて批判の言葉を投げかけた。
マレーシアのセパン・インターナショナル・サーキットで行われた今回のレースは、豪雨で開始が40分遅れた。ある程度天候が改善してからスタート手順が進められたものの、フォーメーションラップ中に複数のマシンが相次いで加速不能となり、停止した。それは前代未聞の光景だった。
「本当に異常だった」前代未聞の加速不能に困惑
「最初にそうなったのは僕だった。それでミラーを見たら、後ろのみんなが……『おい、どうなってるんだ? 僕が走り出すのを待っているのか、何が起きてるんだ?』って感じだった」
ポールシッターのマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)がこう振り返ると、2番手スタートのルイス・ハミルトン(フェラーリ)は「まるでレゴレースみたいだった」と大笑いした。
今年7月の第9戦イギリスGPでは、レゴ製カートでドライバーズ・パレードが行われた。2万8000個を超えるブロックで組み上げられたこのカートは、最高速度が時速25kmに制限されていた。
「本当に異常だった。まさにレゴ・パワーだよ。ある時なんて、ストレートで5台が横並びになっていた。何が起きているのか誰にも分からなかった」とアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)は指摘する。
「それから1周して、まだ8台くらいが低速で走っているのが見えた。ルイスも1台だけでゆっくり走ってたよね」とフェルスタッペンが続けると、ハミルトンは「僕はコース上で一度止まって、クルマとエンジンを停止させてから再始動しなきゃならなかった。そんなこと今まで一度もやったことがない」と説明した。
「観客だったガッカリだ」長い待機に苦言
一言で言えば今回のトラブルは、セーフティーカー(SC)先導下での極端な低速走行によってエンジン回転数とターボの過給圧が低下する中、雨天時にMGU-Kの出力を250kWに制限するFIA管理のソフトウェアで不具合が発生し、MGU-Kの出力が失われた結果、一部のマシンがアクセルを踏んでも再加速できず、徐行あるいは停止に至ったものだ。
この影響でスタート手順は再び中断され、実際にレースが始まったのは当初の予定から1時間33分後だった。
Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.
メインストレートでマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)と首位を争うアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)、後方に続くジョージ・ラッセル(メルセデス)、2026年10月4日(日) F1バーレーンGP決勝(セパン・インターナショナル・サーキット)
ジョージ・ラッセル(メルセデス)は、遅延から赤旗中断、その後のSC先導ラップまでを振り返り、レースの開始を待つ観客にとっても不満の残る進行だったと指摘した。
「今日は一日中、何だかもたついている感じだった。開始が遅れ、赤旗になり、セーフティーカーの後ろを延々と周回して、それから突然、チェコ(セルジオ・ペレス)を前に行かせるために追加のラップまでやることになった」
「僕がスタンドであの展開を見ていたら、少しがっかりしていたと思う。良くなかったね」
セルジオ・ペレス(キャデラック)も、マシンが停止した状況を「レンタルカートに乗っていて時間切れになったようなものだった」と評し、F1にとって「まったく受け入れられない」と批判した。
一方、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)は「バグが原因でF1レースが遅れたのは見たことがない」と振り返り、「見栄えの良いものではなかった」と指摘しつつも、「説明がある前に誰かを責めるのは不公平だと思う」と注意を促した。
現行規則に矛先「誰がこの方向に進むと決めた?」
ドライバーの不満は、単に延々と待たされたことだけにあるわけではない。
ラッセルは「今のパワーユニットは極めて複雑だ。複雑にすればするほど、問題が起きる余地も増える。将来に向けて、その点は頭に入れておく必要がある」と強調した。
フェルスタッペンは「まあ、何と言えばいいのか……。こういうのは、このスポーツで見たいものではないよね。今回のことから教訓を得てほしい」と大きくため息をついた。
2026年に導入された現行PUは、総出力の約半分を電動モーターが担っており、そのパワーをいつ回生し、いつ使用するかといった管理のためにソフトウェアに大きく依存している。
こうした複雑さは、レーシングドライバーの本能に反する不自然なマシンを生み出した。フェルスタッペンは今年2月、2026年のF1レギュレーションを「反レース的」と批判した。
ランド・ノリス(マクラーレン)は、今回の一件は「ああいう電子制御の仕組みは、そもそも採用すべきではない」ということの表れだと指摘。一方、カルロス・サインツ(ウィリアムズ)は、今回の事態に至った経緯をF1は厳しく検証する必要があると主張した。
「ドライバーにとっても、チームにとっても、PUにとっても、メーカーにとっても、今のレギュレーションが極めて複雑なのは明らかだ。複雑すぎる」とサインツは語る。
「繰り返しになるけど、僕が唯一疑問に思うのは、5年前に誰がこの方向に進むと決めたのか、ってことだ」
「僕らは、このスポーツや規則から与えられたものを使って、最善を尽くしている。FIAもF1も、4~5年前に決まったことに対して、できる限りのことをしている。でも、4~5年前に決められたことが間違っていたのは明らかだ」
「これ以上、あまり言うことはない。学び、同じ間違いを繰り返さず、同じような奇妙な事態に苦しむことがないようにするだけだ」
誰もが期待しているのは、今後同様の事態を防ぐための建設的な取り組みだ。今回の一件は、FIAのモハメド・ベン・スレイエム会長らが主張する、電動パワーを最小限に抑え、機能を大幅に簡素化したV8エンジンへの回帰を求める声をさらに強めることになるだろう。
「これだけ多くのソフトウェアや制御が関わっていれば、こういうことは起きる。自然吸気のV8だったら、絶対に起きなかった」とサインツは語った。
雷雨とマシンに相次いだ技術的トラブルにより、2度の開始遅延を余儀なくされた2026年F1第16戦バーレーンGPでは、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)がポール・トゥ・ウインで今季初勝利を挙げた。
マリーナベイ市街地コースを舞台とする次戦シンガポールGPは、10月9日のフリー走行1回目(FP1)で幕を開ける。