
ラッセルに2位を譲らせても“波風”なし「これが我々のやり方だ」――ウォルフが語るオランダGP終盤のチームオーダー
メルセデスは2026年F1第12戦オランダGPの決勝レース終盤、ジョージ・ラッセルに対してアンドレア・キミ・アントネッリを先に行かせるよう指示した。
ラッセルはチームオーダーに従って2番手を譲り、3位でレースを終えた。ランキング首位を走るアントネッリとの差は59ポイントに拡大した。この日のチームオーダーについて、チーム代表のトト・ウォルフは「難しい判断ではなかった」と説明した。
迫るフェラーリ、終盤の順位交代指示
残り16周の時点で、アントネッリはランド・ノリス(マクラーレン)に次ぐ2番手を走っていた。メルセデスはバーチャル・セーフティーカー(VSC)が導入された局面でアントネッリをピットに入れ、新しいタイヤに履き替えさせた。
コースに戻ったアントネッリの前にはラッセルがいた。アントネッリはすぐにラッセルに追いついたが、ザントフォールトでは追い抜きが難しい。さらに後方には新品タイヤを履いたルイス・ハミルトンとシャルル・ルクレールのフェラーリ勢が迫っていた。
メルセデスは2台を争わせず、ラッセルに対してアントネッリを前に出すよう指示した。
2500人の組織優先、ウォルフが語る論理
ウォルフは、傍から見れば決断に困る場面に映ったかもしれないが、メルセデス内部では判断基準が明確になっており、何ら難しい判断ではなかったと説明した。
「キミについてはフリーストップができた。チーム内部という意味でのフリーストップだ」
「あの判断は、外から見れば難しく映る。だが中にいれば難しくない。我々が何度も話し合ってきた場面で、今日も朝に話をしていたことだ。互いに争って時間を失うことはしない。フェラーリの2台が我々の首筋に息を吹きかけていたわけだからね」
ウォルフは、ドライバー個人の心情や立場よりも、チームにとっての最善の結果に判断の軸を置くとも語った。
「だから、もし立場が逆だったとしても、まったく同じ対応をしていた。チャンピオンシップでどちらがリードしているかは関係ない。チームとして最大限の結果を得ることがすべてだ」
「これが我々のやり方だ。2人のドライバーもそれを分かっている。こういうことを明確に話し合っていない他のチームのような状況は避けている」
「今は厳しい戦いの中にいる。チャンピオンシップのために2500人が働いているんだ。これは、ひとりだけの競技じゃない。我々はこの15年間、そういうやり方で戦ってきた」
ラッセル納得の3位「ずっと僕らのルールだった」
ラッセルは当初、無線で指示を受けた際、アントネッリはノリスを追い抜く可能性を見据えているのかと問い返した。それは、チームの判断に疑問を呈しているようにも見えたが、すぐに指示に従った。
「チームとしてずっと言ってきたことなんだ。違う戦略を採っている時は、互いに争わない。必ず順位を入れ替える。それがずっと僕らのルールだった」
「実際、VSCが出る前はキミの方が僕より前にいたし、彼はチームを守るために違うことを試した。フェラーリがやったことを、ある意味そのままコピーしたんだ」
「彼を後ろに抑えておけたか? たぶんね。でも同じくらい、5位まで落ちていた可能性もあった。だから最終的には、彼が2位に値したと思う。僕の方は3位が妥当な結果だった」
Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.
表彰台でシャンパンボトルを手に笑顔を見せるメルセデスの2位アンドレア・キミ・アントネッリと3位ジョージ・ラッセル、2026年8月23日(日) F1オランダGP決勝(ザントフォールト・サーキット)
ラッセルへの感謝と「リスク」認識
指示に従ったラッセルに、アントネッリは謝意を示した。同時に、自らの戦略がチームメイトを表彰台喪失のリスクにさらしたとの見方も示した。
「レースの後半は難しかった。特に最後のハードタイヤのスティントはかなり苦しかった。クルマにほとんど自信が持てなくて、簡単じゃなかったんだ」
「それからピットに入ったけど、あれも少し厄介だった。ジョージには感謝しなきゃね。彼のおかげで僕はかなり楽になったから」
「でも、あのまま同じタイヤで最後まで行くこともできたと思っている。あの判断で少しリスクを負ったけど、同時に僕を先に行かせることでジョージにもリスクを負わせてしまった」
「でも最終的には、あの状況の中でチームとして素晴らしい仕事ができたと思う。今日は2位が最大限だった。特に後半はマクラーレンのペースが速すぎたからね」
アントネッリは242ポイントでランキング首位を維持。ラッセルとハミルトンはともに183ポイントとなり、ランキング2位に並んだ。
2026年F1第12戦オランダGPの決勝レースでは、ランド・ノリス(マクラーレン)がポール・トゥ・ウインを達成。今季2勝目を上げた。レーシング・ブルズから代役参戦した角田裕毅は、入賞圏内に迫るも惜しくも11位と、ポイント獲得とはならなかった。
モンツァ・サーキットを舞台とする次戦イタリアGPは、シーズン第13戦として9月4日のフリー走行1で幕を開ける。