ノリス、シャンパンに忍ばせた”警告文”…ハンガリー表彰台でセーフティーファースト対応
2025年F1第14戦ハンガリーGPで今季5勝目を挙げたランド・ノリス（マクラーレン）。表彰セレモニーを前に、スポンサー契約に基づきシャンパンボトルにサインと一言メッセージを記すよう求められると、彼はこう書き込んだ。
「Don’t break the trophy!（トロフィー壊すなよ！）」
ノリスが書き込んだのは、一昨年、自らが起こした“ある出来事”に対する強い自戒のメッセージだった。
2023年破損騒動─軽口から謝罪へ
2023年のハンガリーGP。2位で表彰台に上ったノリスは、シャンパンシャワーの最中に誤って優勝者マックス・フェルスタッペン（レッドブル）の磁器製トロフィーを倒して破損させてしまった。
Courtesy Of Red Bull Content Pool
壊れた優勝トロフィーを手にレッドブルのチームメンバーと優勝を祝うマックス・フェルスタッペン、2023年7月23日（日）F1ハンガリーGP決勝レース（ハンガロリンク）
当初、ノリスは「マックスが端っこに置いたからじゃない？ 僕の問題じゃないよ。あれは彼の問題だ！」と冗談交じりに語り、さらに日本の伝統修復技法「金継ぎ」をググる様子をSNSに投稿するなど、笑い話にしようとしたが、後に深く反省し、関係者に謝罪した。
「心から謝罪したい。そんなつもりはなかったんだ。ハンガリーの人達にとってどれほど意味があるものかは分かっている。あれは彼らの文化の一部だ」
加えて、「マックスにも謝った。あの件に関して冗談を言ったけど、ネタにすべきじゃなかったのかもしれない。もしマックスが僕のトロフィーに同じことをしたら、腹が立ったと思うし、あれを作るために時間と労力を費やした人たちにも謝りたい」と語り、真摯な姿勢を見せた。
copyright Lando Norris
ランド・ノリス（マクラーレン）がハンガリーの老舗磁器メーカー「ヘレンド」に依頼して制作してF1ハンガリーGPのスペシャルヘルメット
2025年、完璧な“対策”─トロフィー避難
そして迎えた2025年。今度は自身が優勝者として表彰台の頂点に立ったノリスは、同じ過ちを繰り返さないための「対策」を講じた。
国歌演奏が終わり、トロフィー授与が済むと、ノリスは素早く行動を開始した。まず自らの優勝トロフィーを手に取り、表彰台の端へと”避難”させる。そして次に、3位のオスカー・ピアストリのトロフィーも”安全地帯”へ。
「よし、これで準備完了だ」
そう言わんばかりの表情で、ノリスは勢いよくシャンパンボトルを開け、晴れやかな気持ちでシャンパンファイトを楽しんだ。表彰台下で見守っていたマクラーレンのメカニックたちは、そんな光景に思わず心の中でこうつぶやいたに違いない──「ランドは本当に成長したな」と。
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お得意のパフォーマンスでシャンパンを開けるランド・ノリス（マクラーレン）、2025年8月3日(日) F1ハンガリーGP決勝レース（ハンガロリンク）
文化財級？ハンガリーGPトロフィーの芸術性
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絵付け、ヘレンドが手掛けたF1ハンガリーGPの優勝トロフィーの制作工程
ノリスが過去に壊してしまったトロフィーは、ハンガリーの老舗磁器メーカー「ヘレンド」が手がけた特注品。200年近い歴史を持つこの名門ブランドの職人30名が、約半年の歳月をかけて完成させた芸術品だった。
アール・ヌーヴォーやエキゾチシズムといった古典様式を想起させる装飾に、白磁の持つモダンな美しさが融合したこのトロフィーの制作費は、1個あたり約4万ユーロ（約631万円）にものぼったとされる。
今年の優勝トロフィーもまた、同社が制作を担当。その価値と重みを誰よりも理解していたノリスだからこその、あの行動とメッセージだった。
Courtesy Of McLaren
表彰台の上で老舗磁器メーカー「ヘレンド」製の優勝トロフィーを抱えるランド・ノリス（マクラーレン）、2025年8月3日(日) F1ハンガリーGP決勝レース（ハンガロリンク）
2025年F1第14戦ハンガリーGPでは、3番グリッドからスタートしたランド・ノリス（マクラーレン）が今季5勝目を達成。2位にチームメイトのオスカー・ピアストリ、3位表彰台にジョージ・ラッセル（メルセデス）が続く結果となった。
F1サーカスはこの後、サマーブレイクを迎える。ザントフォールト・サーキットを舞台とする次戦オランダGPは、8月29日のフリー走行1で幕を開ける。
