
F1カナダGP:角田裕毅に10グリッド降格、ペナポも加算―”釈明”認められず…一方でボルトレートは不問
角田裕毅(レッドブル)は、2025年F1第10戦カナダGPの決勝において、赤旗下で他車を追い越したことにより10グリッド降格のペナルティを受け、最後尾からスタートする。一方、同じく赤旗中の追い越しが疑われたガブリエル・ボルトレート(ザウバー)については、不問とされた。
予選を前に行われた最終プラクティス(FP3)では、開始から約20分後にオスカー・ピアストリ(マクラーレン)が、“チャンピオンズ・ウォール”として知られる名物の最終コーナーでクラッシュ。これを受けて赤旗が提示された。
この赤旗提示下において、角田とボルトレートがそれぞれ他車を追い越したことが問題視され、セッション後にスチュワードによる調査が実施された。
角田の釈明とスチュワードの判断
聴聞において角田は、「ピアストリのクルマからデブリが飛んでくる可能性を危惧し、追い越しを決断した」と釈明した。ピアストリはクラッシュを経て、低速走行でピットへと戻る途中だった。
スチュワードはこの件を慎重に検討した結果、ピアストリのクルマに明らかな損傷があったことは認めたものの、安全な距離を保ったまま角田が追走することは可能だったと判断。したがって、赤旗中の追い越しに正当な理由はなかったとし、規定違反と認定した。
テレメトリーデータによれば、追い越しの際、ピアストリが時速86kmで走行していたのに対し、角田のマシンの速度は時速171kmに達していた。
この処分により、直近12ヶ月間の累積ペナルティポイントは2点となった。また、予選11番手に終わったことで、2戦連続で決勝を最後尾からスタートすることとなった。
ボルトレートは不問「回避不可能な状況」
一方、赤旗中にマクラーレンのオスカー・ピアストリを追い越したガブリエル・ボルトレートについては、ペナルティを科さない裁定が下された。
赤旗が提示された際、ボルトレートはバックストレートを時速325kmで走行していた。対するベアマンは、コース右側を低速で走行していた。
テレメトリーデータによれば、ボルトレートは赤旗表示パネルを視認してから0.6秒以内にスロットルを完全に戻し、直ちにブレーキングを開始していた。その時点で、ベアマンとの距離はわずか57メートルしかなかった。
聴聞においてボルトレートは、「速度差があまりにも大きく、ベアマンを追い越さずに安全に減速することは不可能だった」と釈明。スチュワードはこの説明を妥当と認め、ボルトレートが合理的かつ迅速に対応していたと判断した。
このため、当該の追い越しは「回避不可能な状況で発生したもの」として違反とは認定されず、本件についてはこれ以上の措置を取らない決定が下された。