レッドブル・リンクのターン1脇に設置された「#AUSTRIANGP」モニュメント、2023年7月2日F1オーストリアGP決勝レースにて
Courtesy Of Alfa Romeo Racing

前代未聞の1200件!F1オーストリアGP走路違反の内訳分析「素人っぽい」対策要求の声

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トラックリミット違反の可能性があるとして国際自動車連盟(FIA)はレース後、1200件を超える膨大な数の調査を行った。アストンマーチンによる異議申し立てを受け、レースコントロールが大混乱に陥ったであろうことは想像に難くない。

FIAは昨年、フランス・ジュネーブにリモートオペレーションセンター(ROC)を設置し、違反行為の監視を遠隔地からサポートする体制を築いた。今季は人員が増やされ、更に強力なバックアップ体制が敷かれた。

今回、膨大な数の疑わしき事例が発見されたのはシステムの強化の恩恵と言えるだろう。ただ、その数があまりに多過ぎたために見落としが発生し、処理が間に合わず、レース後にリザルトが大幅に変更される事態に発展したのは、ある意味皮肉的でもある。

順位を争うアルファロメオとマクラーレン、2023年7月2日F1オーストリアGP決勝レースにてCourtesy Of Alfa Romeo Racing

順位を争うアルファロメオとマクラーレン、2023年7月2日F1オーストリアGP決勝レースにて

計84件の違反、14台の最終リザルトが変更

F1第10戦オーストリアGPでは最終2コーナーで走路外に飛び出すドライバーが多発した。報告された件数は「1,200件以上」に及んだ。この「前例のない状況」を受け、FIAは「レース中にすべての疑わしき事例を調査できなかった」と認めた。

レース後に行われた再検証の結果、最終的に計84件(公式文書では連番が83まで振られているが、抜けがあるため正確には84件)ものラップタイムが抹消される事となった。ターン9での違反は28回、最終ターン10での違反は36回に及んだ。

膨大な数の再調査の結果、レース後に8名のドライバーに追加で12件のペナルティが科された。表彰台の顔ぶれに変更はなかったものの、完走19台の内、14台の順位に変動があった。

トラック・リミット違反は反則4回で5秒、5回で10秒のタイムペナルティが科されるが、「あまりにも違反回数が多かった」ために「リセット」が認められた。つまり5回の違反で一旦、ゼロに戻すという措置が取られるほどだった。

最多違反はエステバン・オコン

レッドブル・リンクの最終コーナーを駆け抜けるエステバン・オコン(アルピーヌ)、2023年7月2日F1オーストリアGP決勝レースにてCourtesy Of Alpine Racing

レッドブル・リンクの最終コーナーを駆け抜けるエステバン・オコン(アルピーヌ)、2023年7月2日F1オーストリアGP決勝レースにて

レッドブル・リンクでの71周のレースの中で、全20名中18名が少なくとも1回のトラック・リミット違反を犯した。その内の9名がタイムペナルティを受けた。一度も違反しなかったのはジョージ・ラッセル(メルセデス)と周冠宇(アルファロメオ)の2名のみだった。

最もトラック・リミット違反の回数が多かったのは10回のエステバン・オコン(アルピーヌ)で、計30秒が加算された。9回、計20秒の角田裕毅(アルファタウリ)とアレックス・アルボン(ウィリアムズ)がこれに続いた。

オコンはアンセーフリリースでも5秒を受けており、累計のタイムペナルティは35秒に達した。合計回数5回と、1レース中に受けたペナルティの数としてはF1史上最多である可能性がある。

ドライバー 走路違反回数
マックス・フェルスタッペン 1
フェルナンド・アロンソ 1
シャルル・ルクレール 2
バルテリ・ボッタス 2
ランド・ノリス 3
オスカー・ピアストリ 3
セルジオ・ペレス 3
ランス・ストロール 3
ニコ・ヒュルケンベルグ 3
オスカー・ピアストリ 3
ケビン・マグヌッセン 4
ローガン・サージェント 6
ルイス・ハミルトン 6
カルロス・サインツ 6
ニック・デ・フリース 6
ピエール・ガスリー 7
アレックス・アルボン 9
角田裕毅 9
エステバン・オコン 10

アマチュアか…スチュワード、対策を要求

世界トップレベルと見なされているF1ドライバーが走路違反という素人のような過ちを大量に重ねた事を受け、スチュワードはレッドブル・リンクにおける走路違反の取り締まりに関して解決策を見つけるよう強く勧告した。

レース後、レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は「少しアマチュアっぽく見えるから見直す必要があると思う」と述べ、スチュワード同様に何らかの対策が必要だと訴えた。

F1ではマイケル・マシのレースディレクター退任を経て昨年より、トラック・リミットの取り締まりに関して一貫して白線を用いるアプローチを貫いてきた。従来はコース毎に、特定コーナーのみを監視、判定条件も時に白線であったり、時に縁石であるなど柔軟なやり方がとられていた。

決勝に先立ち行われた予選での47件のラップタイム抹消を受けマックス・フェルスタッペン(レッドブル)は、レッドブル・リンクはレイアウトとタイヤへの負荷の関係などから、コース内に留まるのが極めて困難で、クルマの中から白線を視認する事が「超難しい」と指摘した。シャルル・ルクレール(フェラーリ)に至っては「クルマの中から判断するのは不可能」とまで言い切った。

FIAはこれまでレッドブル・リンクに対して、ターン9と10の出口にグラベルを設置するよう働きかけてきた。ただここはMotoGPなどの二輪競技の舞台でもあり、実現には至らなかった。今回の件を受け、改めてサーキット側にグラベルの設置を求めていくという。

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