レッドブル、ハータ起用計画打ち切り…あの”引く手数多の要注目株”と交渉開始か
コルトン・ハータのアルファタウリでの2023年F1デビューの夢は完全に潰えたようだ。報道によるとレッドブルは、スーパーライセンス取得の見通しが立たない事から計画を断念した。
事の発端は、アルピーヌが夏の騒乱でフェルナンド・アロンソとオスカー・ピアストリの両名を失い、エステバン・オコンの来季チームメイトとしてピエール・ガスリーに白羽の矢を立てた事にあった。レッドブルは後任確保を条件にガスリー放出を容認した。
だが、ハータが参戦中のインディカーはスーパーライセンスのポイント配分が低く、今季を終えて30点と、取得のための要件(40点)を満たしておらず、最後の望みを繋ぐ不可抗力条項の適用に関する議論も起こったが、国際自動車連盟(FIA)も一部チームも否定的だった。
また不足分の8点を埋めるためにフォーミュラ・リージョナル・アジア選手権への参戦の可能性も取り沙汰されていたが、実際に必要点数を稼げるかどうかは分からない。アルファタウリ、アルピーヌ、アンドレッティ・オートスポーツ、そしてハータは不確定リスクを負う事になる。
Motorsport-Totalは、レッドブルが角田裕毅の来季チームメイトにハータを据える一連の取り組みを終了したと報じ、レッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコの「アメリカ人ドライバー、特にコルトン・ハータのような男が、3レースを開催する予定の活況溢れるアメリカ市場にとって、どれほどの価値を持つのかについて、人々が気づいていないのは残念だ」とのコメントを伝えた。
ハータが候補として浮上したのは実力も去ることながら、レッドブルがアメリカ市場における現在および将来的な価値を高く評価したからでもある。チームのタイトルスポンサーが米国のIT巨人、オラクルである事も一役を担ったものと考えられる。
ヘルムート・マルコはまた、インディカーで7勝を誇るドライバーが、FIAが定めた官僚的なポイントシステムのためにF1マシンに乗るに足る能力を証明しなければならないのは「理解できない」ことだと述べた。
これに伴い、今月中にハンガロリンクで行われる予定のアルピーヌの非公開テストへのハータの参加もキャンセルされたようだ。
アルピーヌにとって、ハータのアルファタウリ入りはガスリー引き抜きのための絶対条件であり、レッドブルはあらゆる可能性を追求するためにハータのテストをアルピーヌに打診したものとみられている。
2015年のアレクサンダー・ロッシ以来となる8年ぶりのアメリカ人F1ドライバー誕生の夢は打ち砕かれたものの、これを以てガスリーと角田裕毅の来季ラインナップが確定したわけではないようだ。
ヘルムート・マルコは「どんな可能性があるか、現在検討中だ」と述べ、引き続きガスリー後任候補の評価を進めている事を明らかにした。
候補者については明言していないが、報道によるとミック・シューマッハ(ハース)やFIA-F2選手権に参戦中のユアン・ダルバラ、岩佐歩夢、デニス・ハウガーら育成ドライバーはリストに挙がっていないと言う。
ではレッドブルは一体、誰に目をつけているのだろうか?
伝えられるところによるとヘルムート・マルコは9月16日(金)正午に、自身が事務所を構えるオーストリアのグラーツ市街地でニック・デ・フリースと面会したと言う。
オランダの日刊紙「テレグラーフ」は、デ・フリースが来季アルファタウリの「最有力候補」に浮上したとして、契約締結が迫っていると報じた。
デ・フリースは虫垂炎を発症したアレックス・アルボンの後任として先日のイタリアGPで急遽デビューを飾り、予選・決勝ともに同じFW44を駆るニコラス・ラティフィを凌駕。9位入賞でポイントを持ち帰るという見事な活躍を見せた。
無論、デ・フリースはウィリアムズの来季最有力候補でもあるが、同時にアルピーヌも27歳のオランダ人ドライバーの獲得を目指していると取り沙汰されている。まさに引く手数多の要注目株だ。
なおハータが不参加になったとは言え、アルピーヌのプライベートテストは来週にも予定通り行われるものと見られており、ジュニアドライバーのジャック・ドゥーハンと並びデ・フリースが参加する見通しだ。
ただ、グラーツでの会談が契約書へのサインの場であったとするならば、デ・フリースのテスト参加はキャンセルとなる可能性もありそうだ。