辛すぎる…元F1ディレクターのマイケル・マシ、知られざるアブダビ論争のその後…殺害予告に罵詈雑言の嵐
昨シーズンまでF1レースディレクターを務めていたマイケル・マシは、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)が最終ラップでタイトルを獲得するという衝撃的な結末を迎えた昨年の最終アブダビGPをきっかけに、殺害予告を含む罵詈雑言の嵐を受けていた事を明かした。
マシはアブダビGPの最終盤、セーフティーカーからの再スタートに際してタイトルを争う2台の間を走行していたマシンにのみラップバックを許可。この結果、フェルスタッペンは最終周にルイス・ハミルトン(メルセデス)を交わし、F1ワールドチャンピオンに輝いた。
オーストラリア出身の元レースディレクターはハンガリーGPが行われた7月31日、News Corpに対して「暗い日々もあった」と打ち明け、自身に向けられた恐ろしい罵詈雑言の数々を明かした。
「間違いなく、世界で最も嫌われている男だと感じた。死の脅迫を受けたこともあった。私と私の家族を追いかけるつもりだと言っていた」
ソーシャルメディア上で罵詈雑言の嵐を浴びることになったマシはF1レースディレクターの任を解かれ、所属していた統括団体であるFIAを去った。
マシはSNSを通して受け取った数々の悪質なメッセージについて「衝撃的だった。人種差別的で、罵倒的で、不道徳なものだった。私の事をありとあらゆる悪口で呼んだんだ」
「そして、それはずっと続いている。Facebookだけでなく、ビジネス用のプラットフォームであるはずのLinkedInでも同じような嫌がらせがあったんだ」
マシはFIAを離れた後、母国オーストラリアへと戻ったが、カウンセラーは愚か、家族や友人にでさえ、助けを求める事をしなかったという。
「誰にも話したくなかったんだ。親戚や友人にでさえもね。親しい家族にだけは話したけど、本当に手短に話しただけだった」
「身体的な影響もあったけど、それ以上に精神的に堪えた。兎に角、殻にこもっていたかったんだ。話す気も起きないし、一人になりたかった。本当に辛かった」
マシは最後に、こうした辛い経験を経て「遥かに強い人間になった」と付け加えた。
FIAは今季より、マシの後任としてエドゥアルド・フレイタスとニールス・ヴィティヒの2名を任命。また、レース中のレースディレクターの無線を非公開とし、審判を遠隔で支援するためのバーチャル・レース・コントロール・ルームを設置するなど、レースディレクターの負担軽減に取り組んだ。
マシの解任はアブダビ論争の再発防止の一環として行われたものだが、シャルル・ルクレール(フェラーリ)やジョージ・ラッセル(メルセデス)、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)等、マシ解任後の新たなレースディレクター制の問題点を指摘する声は多く、レース審判に関する論争は相変わらず続いている。