マックス・フェルスタッペン(Red Bull)とシャルル・ルクレール(Ferrari)、2022年2月24日にカタロニア・サーキットで行われたF1バルセロナテストの記者会見にて
Courtesy Of Red Bull Content Pool

マイケル・マシは責任転嫁の犠牲者だ、とフェルスタッペン…クビにしたFIAを声高に批判

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レッドブル・レーシングのマックス・フェルスタッペンは、物議のアブダビGPを経てF1レースディレクターの職を失ったマイケル・マシは犠牲者であり、退任決定は責任逃れだとして国際自動車連盟(FIA)を批判した。

FIAのモハメド・ベン・スレイエム新会長は先日、セーフティーカー解除を巡るアブダビの調査結果を受けマシの退任を発表した。今季はFIA世界耐久選手権(WEC)やDTMで審判を務めてきた事で知られるエドワルド・フレイタスとニールス・ヴィティヒが交代制でレースを監督する。

アルファロメオF1のストラテジー・エンジニアを務めるルース・ブスコムビーとFIAレースディレクターを務めるマイケル・マシ、2020年10月22日F1ポルトガルGPの舞台アルガルベ・サーキットにてCourtesy Of Alfa Romeo Racing

アルファロメオF1のストラテジー・エンジニアを務めるルース・ブスコムビーとFIAレースディレクターを務めるマイケル・マシ、2020年10月22日F1ポルトガルGPの舞台アルガルベ・サーキットにて

マシの突然の退任についてチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーはtalkSPORTとのインタビューの中で「実際のところ彼はルールに則っていた。何も悪い事はしていない」「マイケルを解任せよとの非常に大きなプレッシャーがあったと考えている。個人的には(退任は)正しくない決断だと感じている」などとしてFIAを批判していたが、フェルスタッペンも同じ様に統括団体を強く批判した。

F1バルセロナテスト2日目のランチブレイク会見の中でマシ退任について問われたセバスチャン・ベッテル(Aston Martin)は「なんと言って良いか分からないよ」と返し、シャルル・ルクレール(Ferrari)は「難しい状況の中で最善の決断を下してきたし、今後の活躍を祈る」と直接的な回答を避けたものの、3人目のフェルスタッペンは開口一番「適切な決断とは言えない思う」と直球で返した。

レース監督体制の変更と合わせてF1は2022年に向けて、レース中にチーム代表者がレースディレクターと直接コミュニケーションを取る事を禁止する。

F1のスポーティング・ディレクターを務めるロス・ブラウンは以前、メルセデスのトト・ウォルフ代表やレッドブル・ホンダのクリスチャン・ホーナー代表らが、重要な局面で無線を使ってマシに圧力を掛けた事を問題視していた。

フェルスタッペンは「誰もがアブダビでの決定について色んな事を言うけど、どんなスポーツであれ、チーム監督に相当する人から『イエローカード』『レッドカード』『ノーディシジョン』『ノーファウル』って常に耳元で叫ばれ続けているレフェリーを想像できる?」と続けた。

「そんな状況で判断を下すのは不可能ってものでしょ。マイケルは自身で決定を下す必要があったのに、彼の耳元では叫ぶ声が飛び交っていたんだ」

「結局のところ、それを許可していたのは彼をクビにした連中なんだから、それを受け入れろって言われても不可能な話さ」

「最終的に彼らは彼を単にクビにした。本当に信じられないよ」

「僕としては、マイケルの身に起きた事は凄く不公平だと思っている。何しろ本当にスケープゴートにされてしまったんだからね」

メディアからの質問に答えるマックス・フェルスタッペン(Red Bull)、2022年2月24日にカタロニア・サーキットで行われたF1バルセロナテストの記者会見にてCourtesy Of Red Bull Content Pool

メディアからの質問に答えるマックス・フェルスタッペン(Red Bull)、2022年2月24日にカタロニア・サーキットで行われたF1バルセロナテストの記者会見にて

フェルスタッペンは過去2年間に渡って母国にろくに帰れず身骨を砕いて仕事に取り組んでいたマシに同情し、オフシーズン中に連絡を取った事を明かした。

「彼は本当に有能で良いレースディレクターだったと思う。マイケルの事を思うと本当に気の毒だ」

「何も新しい二人のレースディレクターに反対しているわけじゃないんだ。彼らも凄く有能で素晴らしいレースディレクターだと思ってる」

「でも個人的にはマイケルの事を思うと本当に悲しくて、彼にメッセージを送った。正しい決断じゃないよあれは」

マシは度々、前任の故チャーリー・ホワイティングと比較されてきたが、そもそもキャリアが異る上に、ホワイティングには当時F1を牛耳っていたバーニー・エクレストンという絶対的権力者にして絶大なる支持者がいた。

史上最年少F1デビューを果たし、年齢を理由に各方面からの批判を浴び続けてきたフェルスタッペンは、マシの境遇を自身と重ね合わせて擁護した。

「亡くなったチャーリーの後を継ぐのは本当に大変だったはずだ。彼には長年に渡る経験と、周りからのたくさんの手助けがあった」

「単にマイケルにはもう少し時間が必要だっただけかもしれない。誰にでも経験は必要だからね」

「僕だってこのスポーツに参加した1年目は、今思えば全く以てただのルーキーだったけど、今は当時よりも遥かに成長したと思うし、それはマイケルも同じだったんじゃないかと思う」

「だから、彼をさっさとクビにしたのは誤った決断だと思ってる。とは言え、次に何をやるにせよ彼の成功を願っているし、それがF1のレースディレクターより良い仕事である事を祈ってる」

会見に同席していたフェルナンド・アロンソは昨シーズンを通してトラック・リミットを含むマシの判断に苦言を呈してきた人物だが、それでもなお、マシがドライバーの安全を最優先に考えていた事は間違いないと指摘した。

「マイケルが常に僕らを守ろうとしていたのは確かだ。これは僕らがレースディレクターに求めている資質でもある」とアロンソ。

「あらゆる決定というものは、ある人にとって好ましいものでも、他の人にとっては受け入れ難いものだったりする。僕の事を言えば、オープニングラップでのコースリミットを含めて何度か不公平だと感じた事があったけど、結局のところ、下される決定の全てが公平だと思える事なんてありゃしないんだ」

「それはワールドチャンピオンシップを戦っているか否かという事は関係なく起きる」

「でも彼は僕らを守ってくれていた」

マシの次の役割はまだ明らかにされていない。