ポーパシング監視ではなく「黒旗を振るべき」、FIAにセットアップの決定権を与えるのは「非常に危険」とレッドブル
F1第9戦カナダGPを前に国際自動車連盟(FIA)がポーパシング対策を打ち出した事に対してレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は、安全性の観点から許容できない程、振動しているマシンに対しては黒旗を振って即時失格とすべきだとの強硬姿勢を見せた。
FIAが発表した計画は、フロア底面に設置されたスキットブロックの摩耗具合と加速度センサーから得られる垂直方向の振動をもとに、許容値に収まらないマシンに対して車高を上げる事を命じるという内容だった。
これは技術指令の発行を通してある種の規制を設けるものだが、ホーナーは現行ルールの解釈で遅れを取っているライバルチームが要求した事実上のレギュレーション変更だと指摘し、ドライバーを危険に晒すマシンがあれば、FIAはルールを変更するのではなく即座にそのマシンを失格にすべきだと主張した。
「あるチームが目標を達成できなかったからといって、シーズンの半ばに事実上、レギュレーション変更とみなされる事が起きるのは不公平だろう」
「問題を解決すべきは明らかに、そのチームだという事が強調されて然るべきだ」
「ルールは誰にとっても同じであり、問題を抱えているマシンもあれば、そうでないマシンもある」
「マシンが危険かどうかについてはFIAが決めることだ。彼らには黒旗という武器があるのだから、ドライバーの安全を考慮してそのクルマが危険、あるいは容認できないとするなら黒旗を振るべきだ」
ホーナーはまた、安全性を追求するFIAのスタンスは「理解できる」としながらも、「週末に向けて何の相談もなく技術指令を出すのは間違ったやり方だと感じる」と主張した。その理由として、別種の新たな危険性をもたらす可能性があるためだと説明した。
「レースに向けてリアの車高やセットアップに関する決定権をFIAに与えるのは非常に危険だ。レース中に風が変わったらどうする? FIAが提示した基準値に基づいて、何らかの理由でポーパシングが悪化したらどうなる?」
「この規制を適用するための指標こそ、議論されなければならないのだ。その意図は素晴らしいが、導入の仕方が適切ではない」
レギュレーション変更を声高に主張していたメルセデスもまた、FIAの介入を評価する一方で、具体的な方法論については懐疑的な見方を示している。
FIAの短期対策はメルセデスが求めていたような全チームに対して一律に変更を義務付けるルール改定ではなく、振動に掛かる指標を設定し、その指標から逸脱した場合にセットアップ変更を指示するものだが、最高技術責任者を務めるジェームズ・アリソンはこれを「厄介なやり方」だと評した。
また、仮にその方向性で進めるのであれば、各車の指標を完全公開した上でライバルチームがそれをチェックできる環境を整えることが「必要条件」だと主張した。
FIAがブラックボックスの中で全ての判断を下す状況になれば、各チームがその客観性に疑念を抱きかねないというのがその理由だ。
ポーパシング規制が導入されるのは早くても2週間後のイギリスGPとなるが、果たしてそれまでに詳細を取りまとめる事はできるのだろうか? パドックには前途多難、不穏な空気が漂っている。