否定派ばかりじゃない、アンドレッティのF1参戦を支持するチーム
メルセデスやレッドブル・レーシングがアンドレッティ・グローバルのF1新規参戦に消極的な見解を口にする一方、マクラーレンとアルピーヌは11番目のチーム誕生を支持する立場を採っている。
元F1ドライバーにして、米国モータスポーツ界きっての名門チームを指揮するマイケル・アンドレッティはザウバー買収計画が頓挫した後、2024年のF1参戦を目指して国際自動車連盟(FIA)にエントリー申請を提出した。
これに対してFIAは新チームの受け入れに消極的な姿勢を見せ、トト・ウォルフ代表とクリスチャン・ホーナー代表はチームへの分配金が減少する事を理由に渋るスタンスを示した。
またアルファタウリのフランツ・トスト代表も「既に10つの素晴らしいチームが揃っている。最終的にはFIAとFOMの判断になるが、もしマイケル・アンドレッティの新しいチームに全ての材料が揃っていて、なおかつ全てのチームが賛成するならばイエスだが、そうでないならノーだ」と語った。
だが、既存チームのすべてがアンドレッティの参戦に否定的なわけではない。
マクラーレンのアンドレアス・ザイドル代表は「我々としてはアンドレッティチームを歓迎する立場だ。アメリカンチームの誕生によって我々は、米国での市場拡大を期待する事ができる」と語った。
また、チーム数の増加は「若手ドライバーのチャンスの増加」にも繋がるとして「我々は新チームの参戦にオープンだ。競い合える事を嬉しく思う」と付け加えた。
ザイドルのボスであり、アンドレッティと同じ米国出身のザク・ブラウンCEOもまた、グローバル版Motorsport.comとのインタビューの中で、アンドレッティの参戦に否定的なチームは「近視眼的」だと指摘し、参戦を歓迎する立場を明らかにした。
「我々はこのスポーツを成長させようとしているのだろうか? それともレーシングチームが陥りがちな、将来の事ではなく目先の事に囚われているのだろうか」とザク・ブラウン。
「アンドレッティという名は最も信頼できるレーシングチームの名であり、彼と彼の支援者達の人となりを踏まえれば、彼らが北米におけるこのスポーツの成長に役立つ事は疑いない」
アンドレッティはインディカーやIMSA、フォーミュラE、エクストリームEなど幅広いカテゴリーに参戦する米国屈指の名門で、チーム創設者のマイケルの父は言わずもがな、1978年のF1ワールドチャンピオン、マリオ・アンドレッティだ。
ブラウンはアンドレッティの新規参戦に伴い分配金が減少する可能性を認めつつも、それは一時的なものでありまた、参戦に際してアンドレッティが支払う”参入障壁金”によって最初の2・3年は変わらぬ収入が得られるはずだと指摘した。
2021年~2025年を対象としたコンコルド協定にはF1への新規参戦チームに対して2億ドル、約231億円の支払いを義務付ける規定があり、これは既存参戦チームに等分される。
チームはF1の年間収益の一部を”分配金”という形で受け取っている。つまり、F1の売上が横ばいの場合、参戦チームが増えると各チームの懐に入る分配金は減少する。これを補うための仕組みが先の”参入障壁金”だ。
ブラウンは更に、最大12チーム計24台までしかF1に参戦できないとする現行のスポーティング・レギュレーションに触れて「一旦12チームとなれば、このスポーツに参入するための手段は買収のみとなるわけで、そうなれば全チームの価値を更に高める事になる」とも指摘した。
アンドレッティの参戦を歓迎するのはマクラーレンだけではない。
2024年の新規参戦を前提に、既に自社(ルノー)のパワーユニットを供給する事でアンドレッティと合意に達しているアルピーヌのローラン・ロッシCEOは、ザイドルに同意した上で「(参戦によってF1の)価値が向上するのであれば歓迎するし、アンドレッティにはその可能性があると思う」「ヒエラルキーを固定化させない状況を作るという意味でもベターだ」と語った。
マイケル・アンドレッティは2024年のF1参戦について、残された時間は限られているとして、FIAに対して1ヶ月以内の決断を迫っている。