今のF1は過剰規制…故ホワイティングを懐かしみ、一連の裁定に不満を並べ立てるレッドブルのホーナー代表
レッドブル・ホンダのクリスチャン・ホーナー代表はF1サウジアラビアGPでの物議を醸した一連のインシデントとスチュワードの裁定を受け、故チャーリー・ホワイティングの存在を懐かしんだ。
チャーリー・ホワイティングはFIAレースディレクターを務めるマイケル・マシの前任者で、2019年のオーストラリアGPの前夜に亡くなるまで、長きに渡って同職を務めてきた人物だ。
ジェッダ市街地コースで行われたサウジアラビアGPの決勝レースでは、タイトル争いを繰り広げるマックス・フェルスタッペンとルイス・ハミルトンとの間で幾つかのインシデントが発生した。
F1が過剰に規制されていると主張するホーナーはその一例として、スタンディング・リスタートに向けたラップ中にハミルトンが先頭のフェルスタッペンから10車身以上離れて走行した件が審議されなかった事を挙げた。
ホーナーは「私はこれまで長い間、規制が過剰だと言い続けてきた。10車身ルールがあるかと思えば、再スタート時のフォーメーションラップはフォーメーションラップではないのだ。あまりにルールが多すぎる」と語った。
「このスポーツは今日、チャーリー・ホワイティングを恋しく思ったのではないだろうか。私はそんな感じを受けた」
「こんな事を言って申し訳ないが、彼の経験は…。なんと苛立たしい事か」
「マイケル(マシ)やスチュワードが難しい判断を迫られたのは承知している。特に舞台がこの手のサーキットで、デブリの量やコーナーの種類などを考えると尚更にね」
ホーナーはこのように理解を示す一方「でもそれは誰にとっても同じ事なんだ」と述べ、ルールの適用に一貫性がないことは言い訳にならないと主張した。
「2週間前のドーハ(カタールGP)もそうだったが、今日もほとんどの裁定が我々に不利なものだった。昨日は2つのインシデントがあったが、控えめに言っても、(判断が)変化に富んでいる」
ハミルトンは前日の予選でダブル・イエローフラッグ無視とニキータ・マゼピンへの妨害行為で審議されたが、いずれもペナルティが科される事はなかった。
赤旗中にはレッドブルのスポーティング・ディレクターを務めるジョナサン・ウィートリーとマシとの間で奇妙なやり取りが行われていた。
1回目の赤旗からのリスタート直後のターン1で、タイトルランナー達のサイド・バイ・サイドが発生した。行き場を失ったフェルスタッペンはコース外に出た後、ハミルトンの前に出てラップリーダーの座に留まった。その後、セルジオ・ペレスとシャルル・ルクレールの接触事故により2度目のレッドフラッグが振られた。
中断の最中にマシはレッドブルに対し、ポールポジションを放棄してハミルトンの後ろに下がるという申し出を受け入れる用意が我々にはあるが、どうだろうか?と問うた。ペナルティを科す代わりに、自らポジションを戻せという内容だったものと思われる。
ホーナーはレース後「まるでスーク(アラブ諸国の青空市場)にいるような感じだった。普通じゃない。こんな場面に出くわした事はこれまで経験がない」と皮肉った。
レース終盤には両者の間でインシデントが相次いだ。
2番手を走行していたハミルトンは、37周目のターン1でアウト側からフェルスタッペンに並びかけた。フェルスタッペンはイン側をキープするも曲がり切れず、両者はコース外に飛び出した。フェルスタッペンはハミルトンの前でコースに戻った。
このラップの後半、レースコントロールからの指示に従ってポジションを戻すべく最終コーナーで減速したフェルスタッペンのリアにハミルトンが衝突した。衝撃的なシーンだった。
スチュワードはターン1での一件に関して5秒ペナルティを科し、クラッシュの件についてはレース後に10秒ペナルティを科す裁定を下した。裁定が下される以前の段階から、ホーナーはこれらの出来事について不満を抱いていた。
「ルイスはオーバースピードだった。彼らはお互いにコース外に行き、ハードにバトルした。あれこそ”レースをさせる”べき一例だったと考えている」
「あれが5秒ペナルティに値するかって? 私に言わせればあれは厳しすぎる」
「私には彼がDRSを与えたくないがために、オーバーテイクを避けようとしているように見えた。その結果、ルイスがマックスのリアに乗り上げたんだ」
「あれで我々はかなりのダメージを受ける事になった。本当にフラストレーションが溜まるし、本当に腹立たしい」