F1:競技規約を変更…2022年マシンの開発禁止、シャットダウン対象にエンジンメーカーを追加
国際自動車連盟(FIA)は2020年3月31日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がもたらす課題への対処案を実行に移すため、世界モータースポーツ評議会(WMSC)を開催し、電子投票によってレギュレーションの変更案を承認した。
コスト削減のためにF1とF1チームは、2021年のテクニカルレギュレーションを2022年に延期する事で合意していたが、これが正式に承認された。2021年に向けてはシャシー開発が凍結される予定となっており、これにはサバイバルセルのホモロゲーションやその他主要なメカニカルコンポーネントが含まれる見通しだ。
パンデミックの影響でF1だけでなく世界ラリー選手権(WRC)やFIA世界耐久選手権(WEC)を始めとするFIA管轄下のシリーズイベントの多くが延期あるいは中止に追い込まれる中、WMSCは変化する情勢に迅速に対処すべく、FIA規約第16.4条と第16.10条に基づき、緊急事項の決定権をFIA会長に委譲する決定を下した。
これにより現在FIA会長を務めるジャン・トッドは強大な権力を手にする事になるが、決定に際してはスポーツ担当副会長とスポーツ担当事務局長、そして該当する場合は関連するスポーツ委員会会長との協議を経る事が必要となる。
またこの日のWMSCでは、F1とWRCに関するレギュレーションの変更も承認された。グランプリ開催数の確保がビジネス上の必須課題となっているF1は、チャンピオンシップの商業的価値を守り、可能な限りコストを抑えたレースカレンダーの再編を可能とするために、2020年のスポーティングレギュレーションの以下の項目を変更する。
- FIAとF1による無投票でのカレンダー変更を可能に(第5条5項削除)
- テストに関する規約の変更(第10条5項)
- シャットダウンの対象にパワーユニットメーカーを追加(第21条10項、第21条11項)
- レース数減少の場合のパワーユニット交換可能基数の変更(第23条3項)
- 2020年末まで2022年型マシンの空力開発を禁止
また柔軟性と実効性を確保するために、チームの60%の賛成を以て特定条項が変更できるよう、第1条3項が追加された。むろん、正式発効のためには世界モータースポーツ評議会の承認が必要となる。
今シーズン中(2020年3月28日~2020年12月31日)に、新規約が始まる2022年シーズン仕様のエアロダイナミクスに関する開発を進める事が禁止された。2022年型マシンに関する風洞及びCFD作業も禁止となる。
F1チームは現在、前倒しされた”サマーブレイク”に伴いファクトリーを閉鎖しているが、これに合わせてホンダを含むパワーユニットメーカーをシャットダウン対象に含むよう規約が変更された。エンジン開発部門は従来、シャットダウンの対象外であった。また、公衆衛生上の懸念や政府当局の規制を理由として、シャットダウン期間が延長され得る事が確認された。
何らかの理由によって1シーズンが14戦以下になった場合、各ドライバーが1シーズン中に使用できるパワーユニット各コンポーネントの基数が変更された。11戦以下の場合は、内燃エンジン、MGU-H、MGU-K、ターボチャージャーが各々2基、ES、CEが各々1基までで、12戦~14戦の場合は全コンポーネントが各々2基まで使用できる事となる。
なおバルセロナでのプレシーズンテストではメルセデスAMGの二軸ステアリングシステム(DAS)が大きな注目を集めたが、FIAはこの日「第10.4.2条に定義されているように、DASは2021年の規定では認められない」と改めて強調した。