ホンダF1、21年以降のエンジン規約に言及。MGU-H廃止に反対…サプライヤー4社の立場の違いが明らかに
ホンダF1の現場統括責任者である田辺豊治テクニカル・ディレクターは、エンジンサプライヤーとしてのホンダの立場を説明した上で、2021年以降のMGU-Hの廃止には反対であるとの立場を初めて表明した。
現行のF1レギュレーションは2020年限りで満了を迎える事が決定しており、FIA国際自動車連盟とF1は今月末までに次世代の規約を確定させるべく、現行及び潜在的なパワーユニット供給メーカーとの会合を重ねている。
現時点で公に示されている規約の骨子においては、1.6リッターV6ハイブリッドターボエンジンという大きな枠組みは維持されるものの、熱エネルギーを回生し動力とするMGU-Hについては廃止が提案されている。
これは、昨年10月にリバティ・メディアが発表した初期の規約案において既に示されていたものであり、フェラーリやメルセデスそしてルノーの3メーカーは、程度の差こそあれこの青写真に否定的な姿勢を表明していた。だが、ホンダは沈黙を保ち続ける事を選び、立場を明らかにしていなかった。
今季よりホンダF1の現場トップに就任した田辺は、5月11日にカタロニア・サーキットで行われた2018年シーズン第5戦スペインGPの公式記者会見に初めて出席。メディアからの質疑に対して次のように答えた。
「MGU-Hが廃止される事になれば残念です。思うに、我々は2021年に向けてまだ全ての事柄が決定した段階にはいないと考えています。FIAが打ち出している方向性については尊重し、同様に他のマニュファクチャラーの方向性にも敬意を払っています」
「ですが、将来性のある最高峰の技術であるMGU-Hが無くなってしまうとすれば、それは寂しい事です。この技術は市販車領域にも関連していることですので。ホンダとしてはこのテクノロジーを維持したいと考えています」
田辺は、MGU-Hのハードウェアそのものを直接市販車部門に持ち込むことは出来ないものの、複雑なエネルギーマネジメントの知識体系やテクノロジーそのものに関しては転用が可能だと述べた。また、廃止はホンダにとってアドバンテージになるか?と問われると明確に否定。MGU-Hこそが今後の躍進の鍵を握るとの認識を示した。
ここで、現在F1にパワーユニットを供給している4メーカーのMGU-Hに対する立場の違いが明確となった。
ホンダの意見に対し、同席していたメルセデスのエンジン部門を率いるアンディ・コーウェルが賛同。MGU-Hの存在によって熱効率は5%向上し、燃料流用面でバラエティに富んだ戦略が生まれているとして、MUG-Hの廃止はF1にとって”後退”だと主張。存続を強く求めた。
フェラーリのマッティア・ビノットもコーウェルの見解に同意したが、場合によっては廃止を受け入れる可能性があると付け加えた。フェラーリは、エンジンの標準化には断固として反対であるものの、MGU-Hに関しては必ずしも廃止に反対しているわけではないのだという。
ビノットは、エンジンがF1における重要かつコアな技術であり続け、マニュファクチャラー間で技術的に異なる切磋琢磨の余地がある事こそが、フェラーリにとってもF1にとっても重要だと主張した。
ルノーのエンジン部門を率いるレミ・タフィンは、基本的にはMGU-Hの存在に価値を見出しているものの、現行規約が議論されていた当初は他にも様々な選択肢が存在していた、と述べ、幅広い視点で良い望ましい方向性を見出すために議論を尽くすことが重要だと述べるに留めた。
ホンダとメルセデスの2社が反対の立場を明確に示した一方、フェラーリとルノーは条件付きで廃止を容認するスタンスである事が明らかとなった。