2台同時にオーバーテイクされてしまったマクラーレン・ホンダのフェルナンド・アロンソ
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オーバーテイク

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オーバーテイクとは、モータースポーツにおける追い越しのことで、前を走行する車を追い抜かし順位を上げる行為を指す。周回遅れを追い越してもオーバーテイクとは言わない。

オーバーテイクする方法

モータースポーツ競技では、規定によってエンジンの排気量が指定されていたり車体の製造が細かく規定されていたりする。そのため、一般的には各マシン間のパフォーマンスが接近することから、オーバーテイクは決して容易ではない。このような理由もあって、多くの場合オーバーテイクが見られるのは距離の長い直線コース部分か、直線コースの終わりの箇所に限られてくる。

スリップストリームを利用する

最もポピュラーなオーバーテイクの方法は、スリップストリームを利用する方法である。これは、前を走行するマシンの後ろに発生する空気抵抗の少ないエリア=スリップストリームに入り込むことで、自車の速度を大幅に上げてオーバーテイクを行うものである。

この方法でオーバーテイクを行うためには、ロングストレートに入る前のコーナーでピッタリと前車に追走し、ストレート区間に入ったら迅速かつ確実に加速するようにアクセルを踏み込むことが必要となる。よって、如何に直線速度が速いマシンであっても、コーナリングが苦手なマシンではスリップストリームをうまく使いこなすことができない。

ブレーキングで仕掛ける

長い直線コースの終点など、強烈なブレーキングを必要とする箇所において、前を走行するマシンよりもブレーキのタイミングを遅らせることでオーバーテイクを行う。ロングストレートの終わりにはしばしばシケインが設置されており、大きなブレーキングが必要となるように設計されていることが多い。

ブレーキを遅らせるということは、オーバーテイクのチャンスを増やすと同時に、かなりのリスクを負うことにもなる。以下はその主なリスクであるが、かえって順位を落としてしまうことも多々ある。

ブレーキングによるオーバーテイクには、ハードブレーキング時にも挙動が乱れない安定した車体と、タイヤを傷つけることなくブレーキ性能を最大限まで使いこなせるドライバーの腕が必要となる。どんなに直線速度が速いマシンであっても、ブレーキング時のスタビリティーが低いマシンではブレーキング勝負を仕掛けることはできない。逆に直線速度がさほど速くなくても、制動時のスタビリティーが高いマシンであれば、ブレーキングによってオーバーテイクすることが可能となる。近年の傾向としてレッドブルF1チームのマシンがこれにあたる。

オーバーテイクボタンを使用する

すべてのモータースポーツ競技・マシンに共通するわけではないが、レースカーには多くの場合”オーバーテイクボタン”と呼ばれる魔法の装置が備え付けられている。仕組みもまた一様ではないのだが、ステアリングに設置されたこのボタンを押すことで、エンジンに送られるガソリンと空気の混合気の比率を一時的に変更してエンジン出力を上げたり、あるいは一定時間の間だけエンジン回転数を上げたりすることで急加速が可能なようになっている。

フォーミュラEのステアリング
©FIAformulaE

上の写真はフォーミュラEのステアリングだが、フォーミュラEには”ファン・ブースト”という、ファンがお気に入りのドライバーのオーバーテイクを手助けできるシステムがある。これは、人気投票でTop3に輝いたドライバーに、レース中に1回、5秒間の出力アップを許可するもので、オーバーテイクボタンの1種である。

ドライバーの腕による純粋な追い越しではなく、一種の禁じ手的なところがあるため批判の声も根強いが、オーバーテイクの回数を増やしレースそのものの展開を盛り上げるという点で有効な仕組みとも言える。