キャデラックXT5クロスオーバーのリアハッチに取り付けられたロゴ
Courtesy Of General Motors

キャデラックF1チーム、2026年からの参戦で基本合意…アンドレッティ基盤でマリオが取締役に

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ゼネラルモーターズ(GM)は米国現地2024年11月25日、傘下の高級車ブランドの名を冠した「キャデラックF1チーム(Cadillac Formula 1 Team)」として、2026年よりFIA-F1世界選手権に参戦することで、F1と基本合意に達したと発表した。

キャデラックは2016年のハース以来、F1に参戦する初の新チームとなる。これによりF1グリッドは11チーム、計22台に拡大する。

短期間での準備が必要なため、アンドレッティ・グローバルのF1プロジェクトを基盤として、英国シルバーストンの本拠で参戦に向けた準備を進める。1978年のF1ワールドチャンピオン、米国出身のマリオ・アンドレッティがチームの取締役に就任する。

GMは2028年より、パワーユニット(PU)サプライヤーとしてF1に参戦することが昨年1月に発表されている。2026年及び2027年はフェラーリからカスタマーPUの供給を受ける可能性が高い。

英BBCは、F1の関係筋からの情報として、アンドレッティ・グローバルを所有するTWGとGMは、参戦を確保するために4億5000万ドル(約694億円)の希釈化防止料を支払うと伝えた。これは1チームあたり4,500万ドル(約70億円)の収益となる。

2021年~2025年を対象としたコンコルド協定には、新規チームに対して2億ドル(約308億円)の希薄化防止料を義務付ける規定がある。2026年以降については現在、再交渉が行われている最中で、既存チームは希薄化防止料を現行の3倍にあたる6億ドル(約925億円)に引き上げることを要求していると見られている。

マリオ・アンドレッティ、2024年5月16日インディ500プラクティスにてCourtesy Of Penske Entertainment

マリオ・アンドレッティ、2024年5月16日インディ500プラクティスにて

GM/キャデラックの参戦について、F1の商業権を持つリバティメディアのグレッグ・マフェイCEO兼社長は、「F1に更なる価値と関心をもたらす」と述べ、F1のステファノ・ドメニカリCEO兼社長は、「F1の進化を示す重要かつ前向きな証」であると主張した。

また、GMのマーク・ロイス社長は、F1は「限界を押し広げる革新と卓越性が要求されるモータースポーツの頂点」であるとして、「情熱と誠実さを持って競い合い、世界中のレースファンのために、このスポーツを高めていくことに尽力していく」と述べた。

GM/キャデラックの参戦計画は、アンドレッティ・グローバルを基盤とする。同組織は既に国際自動車連盟(FIA)から新規参戦の承認を受けており、GMのサポートを得て、運営拠点や組織づくりを着々と進めてきた。

アンドレッティは、ニック・チェスター(テクニカル・ディレクター)やジョン・トムリンソン(エアロダイナミクス責任者)、徳永直紀(シニア戦略アドバイザー)、パット・シモンズ(エグゼクティブ・エンジニアリング・コンサルタント)、そしてロブ・ホワイト(最高執行責任者)など、元ルノーF1の上級職を数多く引き入れている。

ルノーF1チームのテクニカル・ディレクターを務めるニック・チェスターCourtesy Of XPB / James Moy Agency

ルノーF1チームのテクニカル・ディレクターを務めるニック・チェスター

11番目のチームは、長年の議論と政治的圧力を経て実現した。

急転直下の合意の背景には、今年9月にアンドレッティ・グローバルのCEOを退いたマイケル・アンドレッティと、2024年末限りでの退任が発表されたリバティ・メディアのグレッグ・マフェイCEO、そしてF1が反トラスト法違反の疑いで米国司法当局の調査に直面したことが挙げられる。

マイケル・アンドレッティはF1参戦に向けて、2020年にザウバーの買収を試みたが失敗し、その後、アンドレッティ・グローバルを立ち上げ、FIA主導のF1参戦入札に参加。更に、米国で最も売れている自動車メーカーであるGMと提携した。

FIAはアンドレッティの参戦を承認したが、フォーミュラ・ワン・マネジメント(FOM)はこれを認めなかった。背景には、マイケル・アンドレッティに対する個人的嫌悪があったと見られており、マフェイは参戦に最も強く反対していた人物の一人であると広く考えられている。

FOMの決定を受けてアンドレッティは、米国の独占禁止法である反トラスト法に違反するとして米国議会に苦情を申し立て、これを受けて調査が開始された。正当な理由が示されなければ最悪の場合、米国当局はF1に数十億ドル規模の罰金を科す可能性もあったと見られていたが、今回の基本合意で全てが収まる格好となった。

F1のステファノ・ドメニカリCEOとリバティメディアのグレッグ・マフェイCEO、2023年5月6日F1マイアミGPCourtesy Of Red Bull Content Pool

F1のステファノ・ドメニカリCEOとリバティメディアのグレッグ・マフェイCEO、2023年5月6日F1マイアミGP

マイケル・アンドレッティの退任に伴いF1プロジェクトは、アンドレッティ・グローバルの新たな大株主であるダン・トウリスとマーク・ウォルターによって運営されることとなった。

Group 1001のCEO兼社長であり、TWGのモータースポーツ事業CEOを務めるトウリスは、金融プラットフォーム「Gainbridge」を通してアンドレッティのインディカー・チームと提携する形でモータースポーツへの関与をスタートさせた。

ウォルターは金融サービス会社グッゲンハイム・パートナーズのCEOであり、ワールドシリーズ優勝チームのロサンゼルス・ドジャースやプレミアリーグのチェルシーFCの主要オーナーでもある。

トウリスは、「GMと提携し、F1にダイナミックな存在感をもたらすことに胸が高まっている。我々は力を合わせてアメリカの革新性を体現し、世界中のレースファンに忘れられない瞬間を届ける世界クラスのチームを築き上げている。FIAとFOMが我々の申請を支持し、我々がチャンピオンシップにもたらす価値を認めてくれたことに感謝したい」と述べた。