チーム代表プレスカンファレンスに出席したメルセデスのトト・ウォルフ代表、2024年6月21日F1スペインGP
Courtesy Of Sauber Motorsport AG

ラッセルへの”勝てる”無線、F1キャリア史上「最も非常識だった」と赤面のメルセデス代表トト・ウォルフ

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F1オーストリアGP終盤のジョージ・ラッセルへの無線についてメルセデスのトト・ウォルフ代表は、20年来に渡るF1キャリアの中で「最も非常識」なものだったと認め、「永遠に恥じる」と語った。

首位を争うマックス・フェルスタッペン(レッドブル)とランド・ノリス(マクラーレン)が残り8周で衝突したことで、当時3番手を走行していたラッセルに突如、”棚ぼた勝利”のチャンスが舞い込んだ。

この事故を目にしたウォルフが興奮のあまり、無線を通して「ジョージ、勝てるぞ! 勝てるぞ、ジョージ」と叫ぶとラッセルは、上司に対して「糞ったれ!ドライブさせてくれ!」と怒鳴り返した。

無理もない。当時のラッセルは、1周4,318mのレッドブル・リンクの最難関の一つ、ターン3に向けて、高速からの難しいハードブレーキングに差し掛かるタイミングだったのだ。

チームメイトのルイス・ハミルトンとカルロス・サインツ(フェラーリ)をリードするジョージ・ラッセル(メルセデス)、2024年6月30日F1オーストリアGP決勝レースCourtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.

チームメイトのルイス・ハミルトンとカルロス・サインツ(フェラーリ)をリードするジョージ・ラッセル(メルセデス)、2024年6月30日F1オーストリアGP決勝レース

分別を欠いたウォルフの無線についてラッセルは、トップチェッカーを受けた後の会見の中で、「トトが突然、耳元で『勝てるぞ!』って叫んだんだ。その瞬間、危うくクラッシュしかけたよ。それほど大きな声だったんだ」と語った。

ウォルフは自らの振る舞いを次のように振り返った。

「あれはメルセデスで過ごした20年間の中で最も非常識な行為だった。私は永遠にこれを恥じるだろう」

「ドライバーにメッセージを送るタイミングには気をつけなければならない。ブレーキング中や高速コーナーでは絶対にやってはならないからだ」

「彼がどこにいるのかGPSで確認しなかったんだ。ただ、2人が互いにぶつかり合うのを見て、感情的にボタンを押して『これで勝てる』と言ってしまった」

「あのメッセージで彼をコースアウトさせる可能性もあった。そんな事になったらどんな気分になっただろうか」

「私は感情的な人間だ。チーム、ルイス(ハミルトン)、そしてジョージの活躍を見るのは楽しい。あの瞬間、ただ感情に流されてしまった。彼が言ったように、本当に恥ずかしかった」

キャリア2勝目を上げメルセデスのチームメンバーと喜び合うジョージ・ラッセル、2024年6月30日F1オーストリアGP決勝レースCourtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.

キャリア2勝目を上げメルセデスのチームメンバーと喜び合うジョージ・ラッセル、2024年6月30日F1オーストリアGP決勝レース

ステアリングを握っている時こそ、当然ながらも暴言で突き返したラッセルだが、クルマを降りた後、上司の例の非常識な振る舞いは「情熱の表れだ」と理解を示した。

「これは僕ら全員が情熱に溢れていることの表れだ。チームはここのところ、多大な努力を注いできた。ファクトリーの皆は一刻も早くアップグレードを用意するために残業を続けてきた。時にはその努力に見合うだけの報酬を得られないこともあるけど、今日は報われた」とラッセルは付け加えた。

残り8周で降って湧いたリードを手にしたとは言え、後方からオスカー・ピアストリ(マクラーレン)が猛追する中、ラッセルは勝利を確信していなかった。

「正直、ピアストリに追いつかれると思っていたんだ。でも、追いつかれるのと追い越されるのは別の話だと考えることにした」とラッセルは振り返る。

「昨日のレースでは10周に渡ってカルロス(サインツ)にDRSを許してしまい、僕もカルロスのDRSに8周もいたけど、オーバーテイクするのは楽じゃなかった。だから自分に『ベストを尽くせ、ヒーローになろうとするな、そうすれば勝てる』って言い聞かせたんだ」

表彰台に立つ2位オスカー・ピアストリ(マクラーレン)と優勝したジョージ・ラッセル(メルセデス)、2024年6月30日F1オーストリアGP決勝レースCourtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.

表彰台に立つ2位オスカー・ピアストリ(マクラーレン)と優勝したジョージ・ラッセル(メルセデス)、2024年6月30日F1オーストリアGP決勝レース

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