火花再び…ウォルフ「信用できない」ホーナーに不快感、妻スージーに関するFIA調査での対応を巡り
メルセデスのトト・ウォルフ代表は、機密情報の漏洩と利益相反の疑惑に関して行われた国際自動車連盟(FIA)の調査を巡り、レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表の対応に不快感を示した。
匿名のチーム代表告発
ウォルフの妻でF1アカデミーのマネージング・ディレクターを務めるスージーを介した情報漏洩の疑いがあるとの報道を受けFIAは昨年12月、コンプライアンス部門が調査に着手したと発表したが、発表から48時間足らずで調査は打ち切られた。
発端となった英誌「BusinessF1」の報道では、フォーミュラ・ワン・マネジメント(FOM)経由でしか知り得ない情報に基づき、ウォルフがチーム代表者会議の中で発言したことに対して、匿名のライバルチームの代表者らが不満をあらわにしたとされる。
調査終了の発表が行われた前日、F1グリッドに並ぶ全てのライバルチームは、足並みをそろえて声明を発表し、「F1チーム代表とFOMのメンバーとの間で機密情報がやりとりされたという疑惑について、FIAに苦情を申し立てていないことを我々はここに確認する」と述べた。
消極的だったホーナー、共同声明の舞台裏
ウォルフは英紙ガーディアンとのインタビューの中で、フェラーリのフレデリック・バスール代表を含むライバルチームの迅速な反応に感謝を表すとともに、ホーナーだけが他のチームと同じ声明に署名するのを渋ったとして不快感を示した。
「私はどのチームにも、電話一本すらしなかった」とウォルフは語った。
「フレッド(バスール)が『これは本当に不公平だ』と言って、この件を引き受けてくれてたんだ。ギュンター・シュタイナー(ハース元代表)からジェームズ・ヴァウルズ(ウィリアムズ代表)まで、みんながこの件に賛同してくれた」
「だが、クリスチャンだけは我々を支持する声明への署名に難色を示した」
ウォルフによると、ホーナーは「Sky Sportsのインタビューを受けるから、そこで自分はこの件に関与していないと言うつもりだ。だから署名はしない」と発言した。メルセデスを含む他の9チームは「それでいい」と返答したが、同時に「署名しないと見栄えが良くない」とホーナーに助言した。
ウォルフは、2回目のやり取りの中でホーナーが、FIAに対して「正式」に苦情を申し立てたチーム代表者は存在しないという内容に声明を変更するよう求めたと主張した。ホーナーが「非公式」に苦情を申し立てたと仄めかした格好だ。
ホーナーの要求に対して他の8チームは、「それなら我々は我々の声明を出すから、君は君で声明を出せばいい」と返答したが、最終的にホーナーは提案された声明にサインしたという。
この件について、ホーナーと話をするか?との質問に対してウォルフは「いや、彼の言葉を信頼できるとは思わない」と答えた。
「スージーは巻き添えの被害に遭ったのだと思う。それは、彼女が女性レーシングドライバーとして成し遂げた成果や、変革への彼女の貢献を軽視したことに起因するものだ。それだけでなく、私を困らせるために妻を軽視し、彼女が車内外で達成したことに至るまでの痛みを伴う旅を否定する行為でもあった」
刑事告訴と責任者退職、調査のその後
FIAの調査終了を経てスージー・ウォルフは、自身の婚姻関係に焦点を当てた「威圧的で女性蔑視的な行動」であり、「根拠のない主張」に基づく「侮辱」であるとして今年3月、フランスの裁判所にFIAを刑事告訴した。
関連性は不明だが、奇しくも先週、昨年12月の調査中にFIAのコンプライアンス部門の責任者を務めていたパオロ・バサーリがFIAを去ったと報じられた。
ここ数シーズンはコース上で直接的に争う状況ではないため、幾らか落ち着いてはいるものの、ウォルフとホーナーは、マックス・フェルスタッペンとルイス・ハミルトンが激しいタイトル争いを演じた2021年以来の犬猿の仲として知られる。