メルセデスF1チームのファクトリー、英国ブラックリーの本拠にある組み立てエリアに置かれたマシン
Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.

来季F1マシンの出来、2024年だけでなく2025年も左右の可能性

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2026年にF1レギュレーションが刷新される事から、チームが目下取り組んでいる来季のマシンは単に2024年だけでなく、2025年のチャンピオンシップ争いまでをも左右する可能性がある。

F1は持続可能性に向けた取り組みを加速し、2026年にパワーユニット(PU)規定を大幅に改定する。総出力の50%は電動パワーとなり、100%持続可能なバイオ燃料が導入される。

国際自動車連盟(FIA)とF1のロゴ、2022年6月30日F1イギリスGPにてCourtesy Of Alfa Romeo Racing

国際自動車連盟(FIA)とF1のロゴ、2022年6月30日F1イギリスGPにて

これに伴い車重が増加する事などを受け、車体の小型化、軽量化に関する研究が進められているが、PUとは異なり規定が確定していないためシャシーの詳細は未知数だ。それでも誰もが白紙の状態から開発を進める事は間違いない。

独「AMuS」の報道によるとテクニカル・ワーキング・グループでは過去数週間に渡って、2026年型マシンの早期開発を禁止するルールの策定に向けて議論が行われている。

現時点ではまだ承認されていないが、風洞およびCFDシミュレーションによる2026年向けの空力開発は2025年1月以前に禁止される見通しだという。

これには一部のチームが2024年から次世代マシンの開発を開始する事を防ぐ目的があるという。早期の開発着手は2026年以降のチャンピオンシップで優位に立つための必要条件であり、これを防ぐことで1チームのみが独走する一強支配の可能性を減らす事が可能になる。

ドイツのケルンに位置するトヨタ・モータースポーツGmbHYの風洞施設、2019年5月20日 (2)Courtesy Of TOYOTA MOTOR CORPORATION

ドイツのケルンに位置するトヨタ・モータースポーツGmbHYの風洞施設、2019年5月20日 (2)

歴史を紐解くまでもなく、レギュレーションの大規模変更は全てのチームとって極めて大きな飛躍のチャンスにして、限られた貴重な機会である。ゆえに各チームは2025年型マシンの開発に割くリソースを減らす方向性を追求している。

メルセデスのテクニカル・ディレクターを務めるジェームズ・アリソンは、予算上限が課される中で2026年向けの開発にリソースを投じるためには2025年型マシンの開発を妥協する必要があるとして、2024年型のパーツの多くを持ち越す必要があると説明した。

またアストンマーチンのマイク・クラック代表も「2025年を念頭に置いて2024年の計画を立てているのは確かだ」と認めた。

この方向性は2021年によく似ている。グランドエフェクトカー導入前の最終シーズンにF1はマシン開発を厳しく制限した。その結果、例えばマクラーレンの「MCL35M」(2020年型はMCL35)やレッドブルの「RB16B」(2020年型はRB16)という命名が象徴するように、各チームは旧型シャシーを使い回す事となった。

向こう2シーズンを左右するだけに、来季のマシンは極めて重要だ。伝えられるところによるとチームの大部分は、グランドエフェクトカーが導入された2022年以降の2シーズンに渡ってほぼ同じモノコックを使用してきたが、2024年に向けてはこれを刷新する見通しだという。

データとノウハウの蓄積により、現行グランドエフェクトカーはギアボックスと側面衝突構造の位置関係により空力パフォーマンスが損なわれる可能性がある事が判明してきたとされる。

ギアボックスに関してはアンダーフロアの空力学的自由度に大きな影響を及ぼすため多くのチームが、これを組み合わせるモノコックと合わせて2024年に向けて刷新を計画しているという。

2025年は翌シーズンに向けた開発に殆どのリソースが割かれる見通しであることから、シーズンを通した各チームのアップグレードは極めて稀なものとなりそうだ。