ルイス・ハミルトンの後任候補5名、メルセデスに開いたその巨大な穴を埋められるのは誰か
ルイス・ハミルトンの電撃離脱はメルセデスに大きな課題を突きつけた。急転直下の出来事ゆえ、現段階で具体的なプランがあるとは考えにくく、トト・ウォルフ代表は7度のF1王者が抜けた事による巨大な穴を埋められる人物を早急に模索しなければならないだろう。
とは言えそもそも、ハミルトンの代わりを務められるドライバーは、いるとしても多くなく、加えて間も悪い。
マックス・フェルスタッペンはレッドブルとの間で2028年末までの契約を締結しており、シャルル・ルクレールとランド・ノリスは先月、チームとの長期契約にサインしたばかりで、オスカー・ピアストリもマクラーレンと2026年まで契約を結んでいる。
ドライバーとしての力量もさることながら、メルセデスが持つチームカルチャーとの相性や、ジョージ・ラッセルとの関係性も考慮すべきポイントとなろう。ここでは候補となり得る5名を取り上げる。
フェルナンド・アロンソ
最大の注目はフェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)の動向だ。齢42にして未だ野心的な2度のF1ワールドチャンピオンが、最も高い競争力が期待できる有望株の一人である事に疑いはない。
アロンソは昨年、チームメイトのランス・ストロールが一度もポディウムに上がれなかったのとは対照的に8度の表彰台を獲得。年齢による衰えに対する疑惑の目を払拭させた。
ただ、いつまで同じように振る舞えるかは分からない。ネックとなり得るのは年齢とキャラクターだろう。
2025年シーズン開幕時点でアロンソは43歳となる。歳を重ねる毎にそういった指摘も少なくはなってきたが、しばしば”政治的”と評されてきたそのスタンスがメルセデスのチームカルチャーと相容れるのかという点にも少なからず疑問符が付く。
カルロス・サインツ
バルテリ・ボッタスの電撃復帰というシナリオも興味深いところだが、ハミルトンの移籍によりシートを失う事になったカルロス・サインツがメルセデスにとって有力候補となるのは間違いないだろう。
サインツは昨年、僚友シャルル・ルクレールに負けず劣らずのレースを戦い抜いた。22戦を消化しての両者のポイント差は僅か6点に過ぎず、レッドブル以外で唯一、優勝を果たしたドライバーでもあった。
計4チームを渡り歩いて実績と経験を積んできた中堅にして優勝経験もある。真面目な性格もメルセデスと相性が良さそうに思われる。
アレックス・アルボン
ここ2年で急速に株を上げているアレックス・アルボンも興味深い選択肢と言える。レッドブルでの苦節の時は過去のものとなり、今やリードドライバーとしてウィリアムズの再建に大きな役割を果たし、その評判を完全に立て直してみせた。
昨年はチームの総得点のなんと96%を一人で持ち帰り、ウィリアムズをコンストラクターズ選手権7位に導いた。
優勝経験こそないものの、ドライバーとして心技体揃って飛躍と成熟の段階にあり、年齢もまだ27歳と若く、将来への期待も大きい。
また勤勉で実直な性格に加え、ジュニア時代からジョージ・ラッセルと非常に良好な関係を保っている点もポイントが高い。
アンドレア・キミ・アントネッリ
傑出したメルセデスのお抱えジュニアドライバー、アンドレア・キミ・アントネッリも当然、リストに入るだろう。
17歳のイタリア人ドライバーはイタリアF4、ADACフォーミュラ4、フォーミュラ・リージョナル中東選手権、そしてフォーミュラ・リージョナル欧州選手権(FRECA)でタイトルを獲得した若手筆頭株の一人で、F3を経由せずに今年、FIA-F2選手権デビューを果たす。
2007年、当時22歳だったハミルトンは新人にも関わらず優勝4回、表彰台12回を獲得し、1点差でチャンピオンシップを争うセンセーショナルなデビューを果たした。中長期を見据えて攻めの一手を打つならアントネッリは”あり”と言える。
とは言え、ラッセルがウィリアムズで3年間の”修行”を強いられたように、メルセデスはジュニアドライバーにチャンスを与えるという点で保守的なところが見受けられる。
リザーブ・ドライバーのミック・シューマッハという手もあるが、今年を含めてシングルシーターからは2年遠ざかっているだけに、シミュレーターでの経験は高く評価されるところだろうが、可能性はあまり高くないように思われる。
エステバン・オコン
現在はアルピーヌとの契約下にあるが、今もメルセデスがマネジメントし続けているという点でエステバン・オコンを取り上げないわけにはいかない。優勝経験があり、今年で8シーズン目と経験も積んできた。
ただし27歳のフランス人ドライバーはチームメイトと無意味に対立する傾向があり、また、ハミルトンの実質的な後継者としての座をラッセルに奪われた経緯があるため、メルセデスの評価はさほど高くはないように見える。
可能性という意味で言えばオコンの起用より、セバスチャン・ベッテルのメルセデス電撃F1復帰の方がまだ高いように思われる。