フェルスタッペン「全てが最悪のシナリオ」誤算が生んだ制御不能、立ち塞がったノリス、外れた思惑
マックス・フェルスタッペンにとって、F1アゼルバイジャンGPは2024年シーズン最悪の週末になったと言えよう。パフォーマンスが奮わなかったのは主にセットアップ変更の誤算にあるが、戦略違いのライバルに進路を塞がれ、ランド・ノリス(マクラーレン)が脅威の追い上げを見せたことで状況は更に悪化した。
前戦イタリアGPで「モンスター」呼ばわりされたRB20だが、アゼルバイジャンではバランスの改善が見られた。しかしながら、Q1開始に向けて施したセットアップ変更が仇となり、フェルスタッペンは昨年のマイアミGP以来初めて、僚友セルジオ・ペレスに予選で敗北した。
結果としてみれば6番手スタートの5位フィニッシュはポジションアップには違いないが、ペレスとカルロス・サインツ(フェラーリ)の終盤のクラッシュがなければ7位でフィニッシュしていたはずだ。
バクーでの自身のマシンについてフェルスタッペンは、土曜に行った変更がドライビングを難しくしたと説明した。特にフロントタイヤの応答性が悪く、低速コーナーではクルマが跳ね回り、最終的には「制御不能」な状態に陥った。ブレーキトラブルにも悩まされた。
フェルスタッペンはレース全体を振り返って「全てが最悪のシナリオだった」と語った。
「低速コーナーでクルマが酷く跳ねてしまい、タイヤが文字通り地面から離れていた。そうなると当然、望ましくないことに路面との接触が失われてしまう。その結果、更に滑るようになり、タイヤは一層、オーバーヒートした。それを回避する術がなかったから、ペースが安定しなかった」
「(セットアップの変更で)良い方向に進むだろうと思っていたけど、結果的にはそうじゃなかった」
タイヤ交換を終えてコースに戻ると、自身とは異なる戦略を採用して第1スティントを引っ張っていたアレックス・アルボン(ウィリアムズ)とノリスに前を塞がれた。
「アレックスとランドの後方で身動きが取れなくなってしまったのも少し不運だった」とフェルスタッペンは振り返る。
「その2人と争っていると、ジョージ(ラッセル)に追い抜かれてしまった。その後のペースは良く、僕とジョージはトップ集団に追いついていった。でも、ジョージに近づいてダーティーエアーの範囲に入った途端、更にクルマが跳ね回ってスライドが酷くなった」
「そこから更に近づくと、もっと滑るようになってしまい、レースの終盤には全くコントロールできないような状態になってしまった。今回も本当に厳しいレースだった」
ファステスト・ラップ狙いの最終ピットストップが、チームメイトのペレスとサインツのクラッシュにより意味をなさなくなったのも皮肉だった。ボーナスの1ポイントを狙ってソフトタイヤに交換した直後、クラッシュが発生してバーチャル・セーフティーカー(VSC)が導入された。
タイトル争いのライバルであるノリスは、黄旗を巡る混乱に見舞われて予選Q1敗退を喫しながらも、フェルスタッペンより前の4位でフィニッシュした。これによりフェルスタッペンのリードは59ポイントに縮まった。
そんな最悪の週末にあってもフェルスタッペンは、この日の結果を「ポジティブ」と評した。
マクラーレンはオスカー・ピアストリが優勝し、コンストラクターズ選手権でレッドブルを逆転したが、ドライバーズ選手権という観点で見れば、完璧な週末を過ごしたわけではない。
マクラーレンとノリスについてフェルスタッペンは「もっと良い仕事ができたはずだ」と語った。
「僕ら自身がもっと上手くやっていけば、彼らはシーズンの最後まで完璧な週末を過ごさなきゃならない。だから多分、僕にとって(今日の結果は)ポジティブだと思う。本来なら差を広げたいところだったけど、今日のレースはこれだけで済んだから、それでも満足してる」
59ポイントという差は、ノリスが残りの週末の全てで、平均してフェルスタッペンより8ポイント以上多くを稼がなければならないということを意味する。これはグランプリレースにおける1位と2位とのポイント差よりも大きい数字だ。
2024年F1第17戦アゼルバイジャンGPでは、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)がポールシッターのシャルル・ルクレール(フェラーリ)を逆転して今季2勝目を上げた。
マリーナベイ市街地コースを舞台とする次戦シンガポールGPは9月20日のフリー走行1で幕を開ける。