ミルトン・キーンズでレッドブル・レーシングのシートフィッティングを受ける角田裕毅(レーシング・ブルズ)、2025年3月27日(木)
Courtesy Of Red Bull Content Pool

かつての短パン少年が挑む“極上の重圧”─角田裕毅、表彰台を見据えて鈴鹿レッドブルデビューへ

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2025年のF1日本グランプリで、角田裕毅がついにレッドブル・レーシングの正ドライバーとして母国鈴鹿に挑む。その胸中を語った最新のインタビューには、昇格の舞台裏からRB21への印象、ホンダとの思い出、冗談交じりの過去秘話まで、角田の等身大の言葉が詰まっていた。

「まさか鈴鹿で走るとは」想定外の昇格と“人生で一度きり”のプレッシャー

ホンダ青山本社ビルで行われたトークイベントには、約400人のファンが集結。その場で角田は、「まさか日本グランプリで、いきなりレッドブル・レーシングのマシンをドライブするとは思っていませんでした」と率直な心境を明かし、昇格の知らせを「現実味がなかった」と振り返った。

「いろんなことがバタバタすぎて、嬉しいという気持ちをゆっくり噛み締める余裕はなかったですね。ただ、意外と落ち着いてもいました」と明かし、「すべてが噛み合って、今いい状態でここに立てていると思います」と現在の心境を語った。

そして、「これ以上にないプレッシャーとチャレンジングな状況は、おそらく人生で一度きり。それが一番楽しみです」と、力強く前向きな姿勢を見せた。

「特別に難しい印象はなかった」RB21への印象と手応え

レッドブルのリザーブドライバーとして臨んだ今季初めのシートフィッティングについて、角田は「どうせ乗らないと思っていたので、正直ちょっと適当に作った部分もありました。1回座って、もうこれでいいよ、みたいな感じで」と軽い気持ちで挑んでいたことを告白。「まさかそのシートを使うことになるとは」と苦笑しつつ、今回は真剣に調整し直したという。

レッドブルでの初陣の舞台は、今週末に控える日本GPのフリー走行1回目。ドライバー泣かせで知られる、ピーキーな特性と狭いセットアップウインドウを持つRB21を初めてドライブすることになるが、角田はすでに2日間のシミュレーター作業を終えており、「特別に難しい印象はなかった」と自信をのぞかせた。

「レッドブルの“前が曲がりやすいクルマ”というイメージは確かにありました。でも、それが特別に難しいとか、変な印象はなかったですね。もちろん、それはあくまでシミュレーター上の話ですけど」

「マックス(フェルスタッペン)とはクルマに対する好みも違うと思うので、僕は僕で自分に合った良いクルマを作って、まずはマシンの理解を深めて、FP1から徐々に走っていければなと思います」

昨年末のポストシーズンテストでのレッドブル初走行についても言及。「普通に乗れる感じだった」と振り返りながら、レッドブルが自身のドライビングスタイルに合っていると口にしていたことについては、「ちょっとセールストークも入ってたかもしれませんけど」と冗談を交え、会場の笑いを誘った。

表彰台への現実的なアプローチ「まずは楽しむこと」

「あまり期待値を上げたくないのが正直なところ」としながらも、鈴鹿での目標は「表彰台」と明言。一方で、「最初からうまくいくとは思っていない」と冷静な見通しも示した。

「まずはRB21がどういうクルマなのか、VCARBと比べてどんな挙動なのかを少しずつ確かめていきたい」と語り、「楽しんで乗れれば、結果はついてくる」と自然体で臨む姿勢を見せた。

原点のカート時代とタイヤマネジメント

角田の原点を語るうえで欠かせないのが、カート時代の師匠である道上龍の存在だ。全日本カート選手権KFクラス時代の角田について、道上は「鈴鹿南コースで最後尾から優勝したレースは忘れられない」と振り返る。

当時の自身について角田は、「知識がなくて、キャブの調整ができずによく壊していた」と述懐。また、現在F1で高く評価されているタイヤマネジメントについても、「マジで下手でした(笑)。というか、タイヤマネジメントなんて考えてなかったです」と苦笑し、「F4までは『とにかく全開!』って感じで毎周走ってました」と笑顔を見せた。

ホンダとともに走る最後の鈴鹿─感謝と未来へのエール

2025年はホンダがレッドブルにパワーユニットを供給する最後の年でもある。角田は、初めて東京青山のホンダ本社を訪れた際の思い出を反省を含めてこう振り返った。

「たしか17歳ぐらいで、高校の帰りにTシャツと短パン姿で行ってしまって。普通の高校生、中学生みたいな格好で、初めてのミーティングに臨んだのを覚えています」

そんな原点を思い起こしながら、角田は「ホンダの最終年というこの特別なタイミングで、最高のホンダエンジンを積んだレッドブル・レーシングのマシンで鈴鹿を走れることは、なにかのご縁だと思います」と語り、「これまでの感謝を込めて、そしてこれからのホンダの未来に向けて、エールを届けるような走りをしたい」と決意を口にした。

母国鈴鹿、ホンダ最終年、そしてレッドブルでの念願のデビュー。あらゆる要素が重なった特別な一戦に挑む角田裕毅の走りに、日本中が注目している。

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