角田無視のレッドブルに”皮肉のオンパレード”、開幕戦を受け英専門誌がローソン昇格決断に手厳しい指摘

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2025年シーズンに向けてリアム・ローソンを昇格させた結果、角田裕毅という「明白なアップグレード」を導入し損ねたとして、英専門メディア「The-Race」のマット・ビアーは、皮肉たっぷりの論調でチームの決断を否定的に伝えた。

”明確な戦力アップ”を見過ごしたレッドブル

ビアーは開幕オーストラリアGPを振り返り、「レッドブルのセカンドドライバーは、マックス・フェルスタッペンから0.2秒以内のタイムを記録して予選でトップ5に入り、決勝ではフェラーリ勢と長時間にわたり競り合った。天候の変化に伴うタイヤ選択の判断ミスがなければポイントを獲得していた」と指摘した。

「2024年シーズンのほとんどでセルジオ・ペレスがフェルスタッペンに大きく遅れを取っていたことを考えると、これは明らかなアップグレードで、2025年のタイトル防衛が厳しい戦いになりそうな中で、フェルスタッペンにとって頼れるサポート役が現れた可能性があった」

「問題は、そのセカンドドライバーがレッドブルのマシンに乗っていなかったことだ。それはレーシング・ブルズの角田裕毅だった」

一方、実際にレッドブルのセカンドシートに座ったローソンは、予選Q1敗退という厳しい結果に終わり、決勝でもほぼ最後尾を走行。レース半ばを過ぎたところで周回遅れにされ、最終的にクラッシュでリタイアする苦しい週末を過ごした。

ビアーはローソンについて、初走行のコースにも拘らずターボの問題でFP3を失うなど、幾つかの不利な要因があったと擁護しつつも、「ペレスのファンに(お前たちの擁護は正しかったという)正当性を示す使命を背負っていたかのようだった」と皮肉交じりに評した。

アルバート・パーク・サーキットを走行するリアム・ローソンのレッドブルRB21、2025年3月16日(日) F1オーストラリアGP決勝(アルバート・パーク・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

アルバート・パーク・サーキットを走行するリアム・ローソンのレッドブルRB21、2025年3月16日(日) F1オーストラリアGP決勝(アルバート・パーク・サーキット)

「自制心の欠如」懸念、もはや過去のもの

角田の実力は今やかなり明確であり、特に2024年シーズンはマシンの不安定さを乗り越えて安定した成績を残した。しかし、レッドブルは彼を昇格させず、ローソンを選択した。その背景には、感情をコントロールできない角田の「自制心の欠如」に対する懸念があったとされる。

予選後にインタビューを受ける5番手の角田裕毅(レーシング・ブルズ)、2025年3月15日(土) F1オーストラリアGP(アルバート・パーク・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

予選後にインタビューを受ける5番手の角田裕毅(レーシング・ブルズ)、2025年3月15日(土) F1オーストラリアGP(アルバート・パーク・サーキット)

しかし、オーストラリアGPでの角田は冷静そのものだった。ピット戦略のミスによるポイント圏外への転落という事態に対してもパニックにならず、無線で戦略ミスを指摘しながらもチームを責めることはなかった。

レース後、レースエンジニアのエルネスト・デジデリオも「君のドライビングは本当に、本当に素晴らしかった。一切ミスをしなかった」と賞賛し、角田自身も「今日はついてなかった。ペースはあったし、今後のレースで取り返すしかない」と落ち着いたコメントを残している。

ビアーは「F1キャリア最高のレースをチームの戦略ミスで台無しにされた、気性の激しいドライバーとされる角田の対応は、極めて落ち着いていた」と評した。

”2番手タイム”では擁護できないローソンの走り

散々な週末を過ごしたローソンについて、チーム代表のクリスチャン・ホーナーは、唯一ポジティブな要素として、レース中のドライコンディションで2番目に速いラップタイムを記録したと主張した。

だがビアーは、それも前を走るザウバーのスリップストリームを利用した「たった1周限り」の結果に過ぎず、レースの大半で15番手を走行し、フェルスタッペンよりも数秒遅いラップタイムを記録していたとして「それにすがるのはあまりに頼りない」と反論した。

一方で、「ローソンは幸運だ。レッドブルは角田を信頼していないからだ」と指摘し、「レッドブルはすでに4年間にわたって、主に性格上の理由から角田を無視してきた。開幕戦での出来事がその状況を変える可能性は極めて低い」と綴った。

最終フリー走行中にガレージ内で過ごすリアム・ローソン(レッドブル・レーシング)、2025年3月15日(土) F1オーストラリアGP FP3(アルバート・パーク・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

最終フリー走行中にガレージ内で過ごすリアム・ローソン(レッドブル・レーシング)、2025年3月15日(土) F1オーストラリアGP FP3(アルバート・パーク・サーキット)

ただし、もし今後のレースでも同様の結果が続けば、つまりローソンが経験のあるサーキットでも復調できなければ、レッドブルは角田を再評価せざるを得なくなるかもしれない。

だが、それによって角田が仮にレッドブル昇格を果たしたとしても、ビアーによれば、それは「わかった、降参だ」という仕方なしに起用するという消極的な決断であって、「正当な評価によるものではない」と指摘した。

そして最後に、「レッドブルが角田の感情的な一面を受け入れる決断を下すには、メルボルンのようなパフォーマンスの対比があと何回必要なのだろうか?」と疑問を投げかけ、記事を締めくくった。

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