
再びのFIA電撃復帰―物議のシャイラ=アン・ラオ、会長補佐に就任
国際自動車連盟(FIA)は2025年4月30日、F1第6戦マイアミGPを目前に控え、シャイラ=アン・ラオをモハメド・ベン・スレイエム会長の特別顧問に任命したと発表した。ラオ氏は5月1日付で就任し、F1を含むFIA管轄下の7つの世界選手権に関連する規制および商業的課題について助言を行う。
ラオ氏は、イギリスのソリシタ資格およびフランス・パリ弁護士会所属の弁護士資格を併せ持つ。2016年5月から2018年末までFIAの法務ディレクターを務めた後、メルセデスF1チームに移り、法務責任者およびチーム代表トト・ウォルフの特別顧問を歴任。2022年6月にはモータースポーツ暫定事務局長としてFIAに復帰した。
だが、半年足らずでその職を退任。退任に先立っては、ベン・スレイエム会長による性差別的な言動を告発する書簡を提出したと報じられた。
また、暫定事務局長時代には、レッドブルやフェラーリをはじめとする複数のライバルチームが、ラオ氏とメルセデスとの関係性を理由に、公正な職務遂行への懸念を表明していた。とりわけ、コストキャップ違反で処分を受けたレッドブルは、調査過程においてラオ氏がメルセデス側に情報を漏洩した可能性があると疑っていたとも報じられた。
さらに、2022年の第9戦カナダGPに向けて、FIAがフロアに2本目のステー追加を許可する技術指令を突如発行した際、唯一これに即応できたのがメルセデスだったことも、ライバルチームが疑念を抱く一因となった。
ラオ氏の復帰について、ベン・スレイエム会長は「嬉しく思う。彼女は国際的なモータースポーツの分野において優れた実績を持つ人物だ。我々のチームにとって大きな資産となるだろう」と歓迎の意を示した。
一方のラオ氏は、「FIA会長の補佐役として、各種規制および商業的枠組みの強化に貢献できることを楽しみにしています。FIAはグローバルスポーツにおいて特別な存在であり、このタイミングでモータースポーツの未来をより確かなものにするため、FIA会長およびFIAを支援できることを嬉しく思います」と述べた。
FIAは2021年に2,400万ユーロ(約39億円)の赤字を抱えていたが、2024年には220万ユーロ(約3億6,000万円)の黒字を達成するなど、組織改革と財政再建を進めている。ラオ氏の再登用は、こうした取り組みの一環として位置づけられている。