GM、2029年よりF1パワーユニット供給開始へ―FIA正式承認

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F1を統括する国際自動車連盟(FIA)は2025年4月23日、2029年シーズン以降のF1パワーユニット(PU)サプライヤーとして、ゼネラルモーターズ(GM)を正式に承認したと発表した。

GM傘下の高級車ブランド「キャデラック」の名を冠した新チームは、2026年よりFIA-F1世界選手権に新規参戦するが、当初はフェラーリ製PUを搭載。2029年以降にGM製PUを導入することになる。

GMの参入により、PUメーカーはホンダ、フェラーリ、メルセデス、アウディ、レッドブル・パワートレインズ(RBPT)、そしてGMを加えた6社体制となる。

GMのPUプログラムは、GMとTWGモータースポーツが共同で設立した新会社「GM Performance Power Units LLC」が専属で担当する。CEOには、GMのパワートレイン部門で長年にわたる経験を有するラス・オブレネスが就任しており、すでにプロトタイプの開発が進められている。

現在は、米ノースカロライナ州コンコードにあるGMシャーロット・テクニカルセンター近郊の施設で開発が進められており、2027年第1四半期の稼働を目指して、同地に新たなF1エンジン専用工場の建設が予定されている。

2029年シーズンよりキャデラックF1チームF1パワーユニットを供給するGM Performance Power Units LLCのラス・オブレネスCEO、2025年1月9日Courtesy Of General Motors

2029年シーズンよりキャデラックF1チームF1パワーユニットを供給するGM Performance Power Units LLCのラス・オブレネスCEO、2025年1月9日

FIAのモハメド・ベン・スレイエム会長は、GMのF1参入について次のように歓迎の意を表した。

「2年以上前、私はF1世界選手権に11番目のチームを迎えることを提唱し、そのビジョンに基づいてプロジェクトを進めてきた。困難な局面もあったが、今日の進展がその取り組みの正当性を証明している。GMのような世界的自動車メーカーがF1に参加することは、我々のスポーツの国際的拡大に向けた大きな一歩である」

さらにベン・スレイエムは、GMが追求する「技術革新、持続可能性、競争力」の価値観が、FIAの将来的なビジョンと合致していることを強調した。

キャデラックF1チームは、2026年の参戦開始から2028年末まではフェラーリ製PUおよびギアボックスを使用する計画だ。この3年間を通じて、チーム体制の整備およびシャシーとPUの統合を進めることが予想される。

これまでF1に対して距離を置いてきた米国の自動車メーカーが、自社製のF1エンジン開発にまで踏み切るのは極めて異例のことであり、今後のF1におけるアメリカ勢の存在感が一層高まる可能性がある。

背景には、北米市場におけるF1人気の高まりと、それに伴うGMのブランド戦略の変化があるとみられる。GMにとって、今回のF1プロジェクトは単なる技術的挑戦ではなく、「グローバルブランドとしての地位確立」そして「新たなモータースポーツ文化の創出」に向けた布石でもある。