カルロス・サインツSr.と英国のラリーチーム「Mスポーツ」の創設者マルコム・ウィルソン、2024年7月12日(金)グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードにて行われたフォード・ラプターT1+のダカール2025発表イベントにて

リード物議の辞任を経てFIA会長、“ラリー界の重鎮”を競技副会長に指名―英国内で波紋

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国際自動車連盟(FIA)のモハメド・ベン・スレイエム会長は、スポーツ担当副会長の後任として、英国のラリーチーム「Mスポーツ」の創設者であるマルコム・ウィルソン(69歳)を指名した。最終的な任命は、6月にマカオで開催されるFIA総会での投票によって決定される見通しだ。

前任のロバート・リードは今月上旬、FIA内部における「統治基準の根本的な崩壊」を理由に辞任した。この発言は、FIAの統治構造に対する深刻な懸念を露呈するものとなった。リードは「適正な手続きを経ずに意思決定が下されている」と述べ、「透明性の欠如」を厳しく批判した。

2018年4月26日(木)、世界ラリー選手権(WRC)アルゼンチン(コルドバ)開催中に姿を見せた英国のラリーチーム「Mスポーツ」の創設者マルコム・ウィルソンCourtesy Of Red Bull Content Pool

2018年4月26日(木)、世界ラリー選手権(WRC)アルゼンチン(コルドバ)開催中に姿を見せた英国のラリーチーム「Mスポーツ」の創設者マルコム・ウィルソン

ウィルソンの指名が、英国のモータースポーツ統括団体であるモータースポーツUKに事前の相談なく行われたことから、英国内で波紋を呼んでいる。

イギリスの公共放送『BBC Sport』は、モータースポーツUKの広報担当者の発言として「マルコムがFIAのスポーツ担当副会長に指名されたことを知らされておらず、完全に驚いた」と報じた。また、FIAの元CEOであるナタリー・ロビンが、リードの退任について「深刻な構造的課題が今も続いていることを明確に示している」と述べたとも伝えた。

モータースポーツUKのデビッド・リチャーズ会長は今年2月、新たな機密保持契約(NDA)への署名を拒否したことで、FIA世界モータースポーツ評議会(WMSC)への参加を禁止される事態に直面した。リチャーズはこれを「口封じ命令」として激しく批判。FIAに対する法的措置も辞さない姿勢を示した。

ベン・スレイエムのFIA会長就任以降、ナタリー・ロビンのほか、元スポーティングディレクターのスティーブ・ニールセン、元テクニカルディレクターのティム・ゴスら数多くの上級幹部が相次いで辞任・離職している。

ウィルソンは、長年にわたりラリードライバーとしてモータースポーツ界で活躍し、自ら設立したMスポーツを率いてフォードの世界ラリー選手権(WRC)プログラムを成功に導いた実績を持つ。

ウィルソンは今回の指名について、「このような役職に指名されることは大変光栄であり、FIAのすべてのメンバーと協力して、モータースポーツの発展に貢献していきたい」と述べている。