FIAに法的措置を警告、モータースポーツUK会長「口封じ命令」を経てベン・スレイエムの”公約違反”を非難

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モータースポーツUKの会長であり、プロドライブの会長を務めるデビッド・リチャーズが声明を発表し、国際自動車連盟(FIA)のガバナンスに関する問題を厳しく批判した。さらに、この問題が解決されない場合、法的措置を講じると警告したことを明らかにした。

WMSCからの締め出し

リチャーズが声明を発表する契機となったのは、先月開催されたFIA世界モータースポーツ評議会(WMSC)での締め出しだった。

リチャーズを含む複数のFIAメンバーは、WMSC会議に参加するために新たな機密保持契約(NDA)への署名を求められた。しかし、リチャーズはこれを「口封じ命令」と表現し、署名を拒否。その結果、彼を含む一部のメンバーがWMSC会議への参加を禁止される事態となった。

リチャーズは特に以下の点を問題視している。

  • すべての情報が機密扱いとされ、合理的な情報共有が制限される。
  • FIAが独自の判断でNDA違反を決定し、異議申し立ての余地がない。
  • 違反時には即時罰金5万ユーロ(約800万円)が科され、さらなる損害賠償請求のリスクがある。

一方で、新たなNDAについてFIAは「すべての組織で一般的な慣行」であり、「機密情報の不正開示を防ぐ目的がある」と説明。また、WMSCのメンバーの大多数がこの措置を支持していると主張している。

FIAのガバナンス問題

リチャーズの声明は、NDAの問題にとどまらず、FIAの統治体制全体に対する疑問を提起する内容となっており、特に、2021年12月にモハメド・ベン・スレイエムがFIA会長に就任して以来、組織運営の透明性が欠如していると指摘している。

リチャーズは、ベン・スレイエムが2021年の選挙時に掲げた「非執行型の会長としての職務遂行」「有能なCEOの任命と権限付与」「行動の完全な透明性」といった約束が果たされていないばかりか、状況は「ますます悪化している」と指摘した。

これに加え、複数のFIA幹部が不透明な状況下で解任または辞任する事態が相次いでいることに触れ、さらにはFIAの監査・倫理委員会の独立性が損なわれていると批判した。

また、イギリスの代表メンバーが特定の問題を追及した際、突然解任されたことも指摘している。

法的措置の可能性と今後の展開

リチャーズとモータースポーツUKの法務チームは、FIAに対し公式な質問状を提出し、明確な説明を求めている。しかし、現時点でFIAからの回答は得られていない。

リチャーズは、「この問題が解決されない場合、さらなる法的措置を取ることをFIAに通知した」と述べ、FIAに対する法的対応を辞さない姿勢を示した。

また、FIAの行動は「会員主導の組織としてふさわしくない」と主張し、FIA自らが定めた規約に違反している可能性があると指摘。さらに、「今年はFIA会長の再選が行われる年であり、新しい会長が任命される可能性もある」と強調した。

今年12月に4年の任期が終了するベン・スレイエムは、再選を目指して立候補する見通しだが、現時点で明確な対抗馬はいない。

FIAの統治に対する透明性と説明責任が問われる中、リチャーズの主張はF1をはじめとするモータースポーツ界全体に波紋を広げている。FIAが今後どのような対応を取るのか、またリチャーズが本当に法的措置を講じるのか、その動向に注目が集まる。