
フェルスタッペンの”中指”がFIAの監視網をすり抜けた理由―F1プレシーズンテスト動画が拡散
2025年F1プレシーズンテスト中のある場面が、SNSで大きな話題を呼んだ。マックス・フェルスタッペン(レッドブル)がウィリアムズのピット前を通過する際に中指を立てた映像が拡散したのだ。しかし、国際自動車連盟(FIA)はこの件について特に調査を行わない方針を示した。
現在、フェルスタッペンはペナルティポイントが8点に達している。F1競技規則では、12カ月間の間に12点に達すると1戦の出場停止処分が科される。フェルスタッペンの場合、少なくとも6月30日までポイントが減ることはなく、今回の行為が追加処分の対象となるかどうか注目されていた。
オンボード映像では、フェルスタッペンがコースインする際、ウィリアムズのピットウォール付近にいた人物に向かって中指を立てる様子が確認された。当初、これはRB21の技術的詳細を撮影しようとしたフォトグラファーへの抗議ではないかと推測された。
Max giving someone the middle finger 😭😭pic.twitter.com/1yiOFkBU4L
— Verstappen News (@verstappenews) February 28, 2025
しかし、独Motorsport-Totalによると、その場にいたのはフェルスタッペンの友人であり、ウィリアムズのジュニアドライバーであるルーク・ブラウニングだったことが判明。例のジェスチャーは悪意あるものではなく、仲間同士の冗談交じりの挨拶だったようだ。
フェルスタッペンのジェスチャーについて、FIAは公式な調査を行わなかった。テストではレーススチュワードが不在であること、会見場ではなくコース上での出来事であること、さらに侮辱的な意図を持つものではなかったことなどが考慮されたものと見られる。
近年、FIAはドライバーの不適切な言動や行為に対する監視を強化している。
F1においては、2024年シンガポールGPの公式記者会見中、フェルスタッペンが「fucked」と発言したことで、シーズン終了後のFIAイベント(ルワンダ開催)において社会貢献活動を命じられた。
FIAの厳格な対応はF1にとどまらず、世界ラリー選手権(WRC)でも同様の事例が発生している。先月、アドリアン・フルモーがテレビインタビューで「We fucked up(やらかした)」と発言し、3万ユーロ(約469万円、うち2万ユーロは12ヶ月間の猶予付き)の罰金を科された。
こうしたFIAの方針に対し、多くのF1ドライバーが不満を抱いており、GPDA(F1ドライバー労働組合)とモハメド・ベン・スレイエムFIA会長との間で対立が深まっている。
F1ファンからも批判の声が上がっており、ロンドンで行われたF1のシーズンローンチイベントでは、FIAの名前が出た瞬間に観客からブーイングが起こった。
FIAの規則強化についてフェルスタッペンは、「成人に対して言葉の使い方を細かく取り締まるのはやりすぎ」であり、「もっと常識的に考え、柔軟に対応すべき」と主張。また、メルセデスのトト・ウォルフ代表は、FIAの方針に一定の理解を示しつつも、「感情の爆発」と「他者への攻撃」は区別すべきだと指摘している。
結局のところ、今回の「中指事件」はSNSで話題になったものの、FIAの調査対象にはならなかった。ただし、今後もドライバーの言動が厳しく監視されることは確実であり、FIAとの関係性は引き続き論争の的となりそうだ。