F1レギュレーション解説「ギアボックス編」

ギアボックスcopyright formula1.com

F1レギュレーションの中から、ギアボックスに関連する主だったルールを厳選しその要点を以下にまとめる。

ギアボックス交換ペナルティ

最も頻繁に話題に上がるのはギアボックス交換だ。

2021年以前のルールは6戦連続での使用を義務付け、違反した場合は5グリッド降格ペナルティが科された。例外として、前戦をリタイヤで終えた場合は降格無しでの交換が許されていたため、リザルトが奮わなくなりそうな場合、意図的にリタイヤを選択するという一種の裏技が存在した。

これは2022年に変更された。

ギアボックスは新たに創設されたRNC(基数制限コンポーネント)のリストに加わった。これはその名の通り、シーズンを通して各ドライバーが使用できる数に制限が設けられているコンポーネントのことを指す。当初は前後のブレーキディスク&パッドもRNCに入れられていたが、最終的にはギアボックスのみに整理された。

ICE(内燃エンジン)やMGU-Hなど、細かくコンポーネントが分けられているパワーユニット規定と同じ様にギアボックスは以下の2種類に細分化され、各々に年間上限基数が設定された。

  • ギアボックス・ケース及びカセット
  • 駆動部品、ギアチェンジ、補助部品

両者ともに当該年のチャンピオンシップが23戦以下の場合は4基まで、24戦以上の場合は5基までに制限され、違反した場合は当該競技会で5グリッド降格ペナルティが科せられる。

また、それ以降も新しいギアボックスを使用する度に同じく5グリッド降格の罰則が科される。

ただこれとは別に「FP1及び/またはFP2においてシーズン中に4回はRNCの割り当て外ギアボックス・アッセンブリーを使用できる」と定められている。

なおギアボックス・カセットは駆動部品やギアチェンジなどを囲むハウジングの事で、ギアボックス・ケースはリア衝撃構造やサスペンションユニットを内包する車体後方の構造コンポーネントを指す。

チェンジギア、ドッグリング、リバース(ファイナルドライブ、リダクションギアを除く)に関しては、テクニカル・デリゲートが物理的損傷を認めた場合、大会中いつでも同一仕様に交換することができる。

ドライバー交代が発生した場合の扱い

ドライバーがシーズン途中に交代した場合や、コロナ感染で欠場を強いられ他のドライバーが代役を務める場合は、エンジンやタイヤなどと同じ様に、元のドライバーに割り当てられたものを使用しなければならない。

つまりペナルティの対象条件も継承される。

開発凍結

カセット、駆動コンポーネント、ギアチェンジ・コンポーネント、補助コンポーネントに関しては、2022年シーズンの開幕を前に開発が凍結された。例外的な状況を除いて2025年末まで変更は許されない。

信頼性の問題を解決するための変更は、FIAの承認を得た場合に限り許可される。変更によってパフォーマンス向上が見込まれる場合は却下される。

なおギア比は各シーズンの開幕戦までにFIAテクニカル・デリゲートに申告し、シーズンを通してこれを使わなければならない。ただし2022年はシーズン中に1度だけ、ギア比の変更が許される。

製造・素材に関するルール

  • 前進8速および後進1速のギアを備えること
  • ギアチェンジはドライバーが”機械的”に制御出来なければならない
  • ギヤはスチール製でなければならない
  • 半自動ギアボックスはOK、自動ギアチェンジとCVTは使用不可
  • ギアボックスの後方には衝撃吸収構造を設置すること
  • コックピット前方に、コックピット外側からクラッチを解除出来る機能を設置し、白い丸で囲んだ赤文字「N」で記す事

手短に2022年のF1レギュレーションを知りたい方は「2022年F1ルール主要変更点のまとめ」を、より詳しくルールの全体像を知りたい方は「F1ルール完全網羅版」を参照されたい。

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