角田裕毅の「時代は終わった」とローソン、レッドブル昇格を巡り―結果伴わぬ”強気発言”連発

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RB(現レーシング・ブルズ)時代のチームメイトである角田裕毅にレッドブル昇格のチャンスが与えられなかったことについてリアム・ローソンは、このスポーツにおいて同情するなど「あり得ない」と語り、「彼の時代は終わった。今度は僕の番だ」と主張した。

苦戦続くF1昇格初戦、中国でも復調の兆しなく

ローソンにとって2025年のレッドブル昇格は、待望のF1トップチーム入りであったが、デビュー戦のオーストラリアGPでは、信頼性の問題による走行時間のロス、18番手という予選順位、さらにはレース終盤でのクラッシュと、実に厳しい船出となった。

続く第2戦中国GPはスプリント・フォーマットが採用された。1回限りの金曜フリー走行ではコースオフを喫し、スプリント予選では最下位の20位に沈んだ。無線では「本当に申し訳ない」「タイヤの温度を落とせなかった」とチームに伝えるなど、焦りと悔しさをにじませた。

上海インターナショナル・サーキットを走行するリアム・ローソンのレッドブルRB21、2025年3月21日(金) F1中国GPフリー走行Courtesy Of Red Bull Content Pool

上海インターナショナル・サーキットを走行するリアム・ローソンのレッドブルRB21、2025年3月21日(金) F1中国GPフリー走行

一方、チームメイトのマックス・フェルスタッペンはスプリント予選でポールポジションに迫る速さを見せ、ルイス・ハミルトン(フェラーリ)と並ぶ最前列2番グリッドを獲得。その対比がローソンの苦戦を一層際立たせた。

英紙テレグラフによるとローソンは、「彼はスピードを上げてすぐに全開に持っていく」「出遅れたりせず、ウォームアップも必要ない」と、その実力を素直に評価した。

開幕戦での予選、そして中国のスプリント予選の両方で、ローソンはグリッド上の誰よりもチームメイトから大きく遅れを取った。ただ、上海でタイヤの温度をコントロールするのに苦労したのはローソンだけではなく、カルロス・サインツ(ウィリアムズ)もアレックス・アルボンに同程度、遅れた。

変わらぬ奔放な言動「どうでもいい」

ローソンは昨年、ダニエル・リカルドの後任としてRBからF1デビューを果たした際も、セルジオ・ペレスに中指を立て、フェルナンド・アロンソに食って掛かるなど、その奔放な言動と強気なレーススタイルで話題となったが、2025年もその姿勢に変化はない。

開幕戦、そして中国GPでの初日セッションを終えて、今季のレッドブル昇格については、角田の方が適任だったのではとの声が多く挙がっているが、ローソンがそうした声に耳を貸す様子はない。

パドックで会話するレッドブル・レーシングのリアム・ローソンとマックス・フェルスタッペン、2025年3月20日(木) F1中国GPプレビュー(上海インターナショナル・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

パドックで会話するレッドブル・レーシングのリアム・ローソンとマックス・フェルスタッペン、2025年3月20日(木) F1中国GPプレビュー(上海インターナショナル・サーキット)

マクラーレンのザク・ブラウンCEOが先週末に、レッドブルは「奇妙なドライバー選択をした」「ユーキこそが本来レッドブルに乗るべきドライバーだ」と発言したことに対しては、「どうでもいい」と一蹴。「彼はまだ、僕が彼の(チームの)国歌について話したことを気にしてるんじゃないかな」と皮肉交じりに返した。

この発言は、ローソンが昨年、マクラーレンがF1で勝利した際に英国国歌が流れることに対し、「ふざけんな」と冗談交じりにコメントしたことを指している。ニュージーランド人のブルース・マクラーレンがチーム創設者であることから、その違和感を表現したものだった。

「彼の時代は終わった。今度は僕の番だ」

レッドブル昇格の切符を自身が手にしたことをめぐり、角田に同情しているのか?との質問に対しては、「正直? ないね」と語り、「このスポーツでは(同情なんて)あり得ない」と答えた。

「それにこれまでのキャリアを振り返ってみると、F3では彼とチームメイトだったけど、僕が勝った。ユーロフォーミュラやニュージーランド(トヨタ・レーシング・シリーズ)でも彼とチームメイトだったけど、そこでも僕が勝った」

「そしてF1での昨シーズンだ。(上位カテゴリーへの)昇格のチャンスに関しては何度も彼に先を越されたわけで、だから同情はしない。彼の時代は終わった。今度は僕の番だ」

フリー走行前にファンと交流する角田裕毅(レーシング・ブルズ)、2025年3月14日(金) F1オーストラリアGPフリー走行(アルバート・パーク・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

フリー走行前にファンと交流する角田裕毅(レーシング・ブルズ)、2025年3月14日(金) F1オーストラリアGPフリー走行(アルバート・パーク・サーキット)

一方で角田は、レッドブル昇格のチャンスを逃したことに執着することなく、コース上で淡々と結果を積み重ねている。

開幕戦の予選ではフェラーリ勢を退け、フェルスタッペンに0.2秒差の5番手を獲得し、決勝でもトップ6圏内を走行。57周のレースうち44周目まで完璧な週末を送っていたが、チームの戦略ミスによりポイント獲得を逃した。

中国GPではフリー走行で10番手を刻むと、スプリント予選ではチームメイトのアシストを受け最終SQ3に進出。メルセデスを駆るアンドレア・キミ・アントネッリに0.035秒と迫る8番手タイムを記録した。

猶予はわずか、結果が求められる現実

レーシングドライバーに求められるのは、コース上でのパフォーマンスと、そこから導かれる結果である。ローソンに与えられた猶予は決して無限ではない。

レッドブル・レーシングのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは「3~5戦」で結果を示す必要があると示唆しており、期待に応えられなかった者たちが歩んだ末路は、レッドブルの歴史が物語っている。

ローソンはその重圧を理解しつつも、「自分自身に対する自信を失ったことは一度もない」と強調。「(上海は)僕にとって新しいコースだし、今週末はかなり厳しい戦いになるだろう。でも、このクルマで走る週末を過ごすたびに、僕は学んでいる」と付け加えた。

なおローソンは、F1でのレース経験こそないものの、2018年のF3アジア選手権時代に上海インターナショナル・サーキットでレースをしている。また、次戦の舞台となる鈴鹿サーキットでは、2023年のスーパーフォーミュラ参戦時、さらにリカルド負傷時の代役としてF1日本GPでの参戦経験があるため、「初挑戦」という言い訳は通用しなくなる。

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