スターティンググリッドにつく20台のF1マシン、2019年F1カナダGP決勝レースにて
Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

2021年以降のF1ルール策定を巡り政治的駆け引きが加熱…バジェットキャップを盾に中団チームが反乱

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2021年以降のF1レギュレーション策定を巡り、舞台裏でチーム間の政治的駆け引きが正念場を迎えている。モントリオールの週末に先立って、技術・スポーツ・財政に関する新しい規約の草案がチーム側に提示されたが、最大の論点はバジェット・キャップだ。

F1では資金力が競争力に直結する素地があるため、F1とFIA国際自動車連盟はチーム間の競争力を是正すべく年間1億7,500万ドル、日本円にして約189億3200万円の予算上限案を打ち立てた。現在のF1では競争力格差が固定化されつつあり、「ミッドフィールド」「中団グループ」なる表現こそが、今のF1チャンピオンシップの現状を物語っている。

3強と言われるメルセデス、フェラーリ、レッドブルの年間予算は、推定3億から4億ドル(日本円にして326億円から434億円)、他のチームの予算は約1億ドルから2億ドル(109億円から218億円)程度と見られており、その差は2倍から4倍近くにも達する。

ルノー、マクラーレン、レーシング・ポイント、アルファ・ロメオ、ウィリアムズの”ミッドフィールド”5チームは、今回提示された予算上限案を容認する姿勢をみせているが、メルセデスとフェラーリがこれに反対。そもそもミッドフィールドを争うチームは年間1億5,000万ドル(約162億円)を望んでいたとされ、今回の1億7,500万ドルに譲歩した形だ。

2021年のレギュレーション承認期限が今月末に迫まる中、その期限を10月に延期する動きが出ているが、先の5チームは今回提示されたコスト上限案が月内に承認されない限り、スポーツ及び技術に関する他の規約の期限延期を承認しない心づもりのようだ。延期には全会一致が必要とされる。

ルノーのシリル・アビテブール代表が「長引けば長引くほど、トップチームが利益を得ることになる」と語るように、中団チームが規約の早期決着を求める背景には、長期化は自分たちのアドバンテージにならないとの計算がある。

フェラーリは「ルールは遅れて公表され、議論が成熟したとは言えない」との理由で、メルセデスは上限予算の価格は妥当だとしながらも、規約を大幅に変更する事の方が、チーム間のパフォーマンスギャップを拡大させかねないと主張し、草案に反対の意向を示している。

なお草案では、ドライバー及びチーム内の高額所得者上位3名の年俸や、パワーユニットの一部購入費用、マーケティング及びホスピタリティ関連の費用、レース週末の旅費交通費など、幾つかの支払いがバジェットキャップの対象から除外されているが、チームによってはこの分だけで7,500万ドル、日本円にして81億円近くにも達するとみられている。