ランビアーゼとフェルスタッペン、激しい口論の裏にある成功哲学と”兄弟”の如き関係性
マックス・フェルスタッペン(レッドブル)と、”GP”ことレースエンジニアのジャンピエロ・ランビアーゼは、トップチェッカーが確実視される状況にあってなお、時に無線を通して激しい口論を交わす間柄だが、これこそが数々の記録の更新と3年連続の王座をもたらした要因の一つなのかもしれない。
フェルスタッペンがトロ・ロッソから昇格した2016年のスペインGP以来、2人はコンビを組んでいる。7年前の5月の事だった。ランビアーゼは、レッドブルでの初陣に向けてシミュレーターで準備に取り組む当時18歳のオランダ人ドライバーをサポートした。そしてその的確なフィードバックに即、感銘を受けた。
2人はタッグ結成初戦のカタロニア・サーキットで予選4番手を獲得し、ルイス・ハミルトンとニコ・ロズベルグが同士討ちを喫した決勝で、キミ・ライコネンの猛攻を振り切ってキャリア初のトップチェッカーを受けた。以降これまでに通算52回の優勝を飾り、3度のF1ワールドタイトルを手にしている。
ポッドキャスト「Talking Bull」の中でフェルスタッペンは、自身の「振る舞いや成長」という点において「大いに助けになったのは当然だ」と述べ、8シーズンに渡って築き上げてきたランビアーゼとの関係と、彼に対する信頼を強調した。
だがレース中の2人の無線は古くからのファンを除けばかなり険悪なものに聞こえるかもしれない。例えば今年のベルギーGPでは、特にタイヤの使い方に関して指示を聞かず、わが道を征くフェルスタッペンに対してランビアーゼは「頭を使え」「僕の指示を聞け」と苛立ちを募らせた。
「みんなは僕らの関係をあまり理解していないように思う。時々、激しいやり取りをすることもあるけど、それがレースに対する僕らのアプローチなんだ。お互いにベストを望んでいるんだよ」とフェルスタッペンは語る。
「今は何も言う必要がない。たとえオーバーステアやアンダーステアが少し出たとしても、GPは僕のドライビングに合わせてクルマのどこを変えれば良いか分かっているからね」
「この手の信頼関係を築くには時間がかかるから、僕はレースエンジニアの交代に一貫して反対してきたんだ。良い走りをするうえで決定的に重要だからね。一緒に長くいられるほど良い」
「これほど支配的なシーズンでさえ、物事が上手くいかない状況になると僕は気分が悪くなるけど、それはGPも同じだ」
「お互いに勝つ事を望んでいるし、完璧なんてあり得ないけど、それでもできるだけ完璧に近いものにしたいと思って、そのために努力している」
「だからこそ、時には言い争ったりすることもある。でもそれは、僕らがあくまでも勝利を目指しているからであって、週末を終えて『どうすればもっと上手くできたんだろう』って言いたくないからなんだ」
ランビアーゼは、自身が「弟」と呼ぶフェルスタッペンを「飽くなき」という形容詞で表現して「それは自分自身にも当てはまると思う」としたうえで、週末はもとより普段から互いに率直な意見をぶつけ合う事が重要との考えを示した。
過度なプレッシャーがのしかかる中、レースでは一瞬で最適解を見つけてそれを実行しなけばならない。明快かつ率直である事は、礼儀正しい事よりも遥かに重要だ。
ランビアーゼは「何か問題があれば遠慮なく率直に話すべきだ。互いに対して率直になることで短期間での利益を迅速に追求することができる。結局はそれがレースの週末におけるクルマのパフォーマンスを最大化することに繋がるんだ」と語った。
2人は今や、ルイス・ハミルトンとピーター・ボニントン、かつてのセバスチャン・ベッテルとギヨーム・ロケリンに並ぶパドックで最も成功し、よく知られる名コンビとなったが、その関係性は決して一朝一夕に作られたわけではない。
ランビアーゼは「7~8年を経て、お互いの事を知り尽くしているのは至極、自然な話だ。どうしたら相手を刺激することになるのか、なだめられるのか、どうやって相手の肩に腕を回せば良いのかが分かるようになる」と語る。
「2018年、2019年、2020年当時のクルマは、チームが望むほどの競争力がなかった。マックスはチャンピオンシップに絡めない事に対する不満を募らせ、この間は何度か浮き沈みを経験した」
「だが、2021年以降は本当に厳しいシーズンではあったが、これを通して関係と絆が強まったんだ」