2017年よりメルセデスF1のテクニカル・ディレクターを務めてきたジェームス・アリソン
Courtesy Of Daimler AG

一部のF1チームは規約解釈を誤り「悲痛な2022シーズン」を過ごすだろう、とメルセデス

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メルセデスF1チームの最高技術責任者(CTO)を務めるジェームズ・アリソンは、一部のF1チームがレギュレーションの解釈を誤り「悲痛なシーズン」を過ごす事は避けられないと考えている。

2022年に向けF1は、オーバーテイク促進とコスト削減、競争力の平準化のためにテクニカル・レギュレーションを刷新した。文字通り従来型マシンからのキャリーオーバーは殆どなく、クルマはゼロベースで設計される。

2021年メルセデスのリバリーを施した2022年型F1マシンのCG (2)

目に見える箇所のエアロダイナミクスは大幅に簡素化され、その分のダウンフォース不足を補うために車両の下部エリアに関しては開発の自由度が与えられた。そして従来の13インチに代わって18インチの大口径タイヤが導入される。

F1チームは現在、2月末のバルセロナでの公式プレシーズンテストに向けて開発の最終段階にある。まだ新車を発表したチームはなく予想する材料も乏しいが、誰もが未経験の歴史的なルール改定ゆえに、アリソンは誤ったコンセプトを採用するチームが出てくるのではと睨んでいる。

「Road to 2022: Setting the Scene for F1’s New Era」と題されたメルセデス公開の動画の中でアリソンは「変化の程度が大きいため順位を予測するのは難しい」と認めながらも、次のように予想した。

「想像するにクルマがあまりにも新しく、あまりにも異なる事から、グリッド上の1つ2つのチームは酷く誤った方向に進んでしまうだろう。そして悲惨な1年を過ごす事になるのではと私は考えている」と語った。

「程度の差こそあれ、我々の誰もが予想しなかった事をテーブルの上に残すだろう。そしてライバルのクルマを見て『なぜこれを考えなかったのだろう』と思う事になるのではないだろうか」

「そして、そのアイデアをできるだけ早く自分達のクルマに搭載するために奔走する事になるだろう。開幕戦の結果、ポジションがどうであれ、必死になって前へ前へと進んでいこうとするはずだ」

「逆に幸運にも前のポジションを確保できた場合は、迫ってくる”オオカミ”を後ろに退けておく事ができるだろう」

「本当に忙しない戦いになるだろう。シーズンを通してグッスリ寝れる状況にならない事は間違いない」

2022年のルール変更について”空力の鬼才”と称されるエイドリアン・ニューウェイは以前、「過去40年で最大の変化」と評したが、1991年にベネトンでF1キャリアをスタートさせたアリソンもまた、自身の30年以上のキャリアの中で「最大」と断じた。

大規模なルール変更で失うものが大きいのは、メルセデスやレッドブルなどの以前の規約下において競争力を維持してきた既得権益チームだが、アリソンは新たな時代においてもメルセデスがトップに立ち続けるチャンスがあると信じている。

「今回のように全てが刷新さるようなレギュレーションには、至るところにチャンスが転がっている」

「もちろん、チャンスがあれば同時にそこには危険もある。我々は潜在的な地雷原の中から宝物の小箱を全て拾い上げ、最終的にグリッドの先頭に立てるようなクルマを作ろうとしている」