”ホンダ知財引き継ぐレッドブル”との提携を模索するのはワーゲンにとって「理に適った話」とメルセデス
メルセデスのトト・ウォルフ代表は、F1パワーユニットに関するホンダの知的財産(IP)を引き継ぎ自社運用・開発を進めていくレッドブルとの提携を模索するのは、新規参入を検討中のフォルクスワーゲン(VW)グループにとって理に適った話だとの考えを示した。
レッドブルはシーズン開幕を前にした今年2月、ホンダF1パワーユニット技術を引き継ぎ、これを運用していくためのエンジン会社「レッドブル・パワートレインズ」を設立。英国ミルトンキーンズにあるF1ファクトリーの一角に専用施設を設けた。
だがその目的は、単にPU開発凍結期間である2022年~24年までをホンダIPを使用する事で乗り切るという当初のそれを越えて、独自エンジン開発という次元の異なる話に進展した。
レッドブルは第3戦ポルトガルGPを前に、V6ハイブリッドのベンチマークであり続けていた好敵手メルセデスHPPの幹部、ベン・ホジキンソンを起用する事を発表し、2025年以降の独自エンジン開発に向けて舵を切ると宣言した。
レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は、プロジェクトへの投資額は「2004年にジャガーからチームを買収して以来最大」であり、これを以て「どんな新しいレギュレーションにも対応できるように準備を進めている」として、一連の発表は独自エンジン製造に向けた「非常に明確な意思表示」だと説明した。
「イギリスで本格的なエンジン工場が設立されたのは、HPPを除けば過去50年で初めてのことだと思う。つまりこれは非常にエキサイティングな機会と言える」とホーナーは語る。
「我々としては、車体開発のためのチーム作りの際に行ったように、適切な人材を見極め、その人材を惹きつけることが重要だ」
現時点で2025年以降の具体的なエンジン規約は定まっていないが、F1と統括団体の国際自動車連盟(FIA)は「持続可能」で「強力なパワー」を持ちながらも「安価」であり「新規メーカーの参入を促す魅力」あるパワーユニットを目標に据えている。
これは実際上、アーキテクチャや技術面においては現行の1.6リッターV6ハイブリッド・ターボを踏襲するものになると予想され、それが故にこそ、レッドブルが独自エンジン開発を標榜したとも言える。
ホーナー代表は、現時点では独自エンジン開発一本で考えており、外部との話し合いはないとしているものの、ウォルフ代表はSky Sportsとのインタビューの中で「プラットフォームを問わずレッドブルと長年に渡って関係を築いてきただけに、VWグループが彼らとの関わり合いについて検討するのは当然」であり、依然として”レッドブル・ポルシェ”あるいは”レッドブル・アウディ”誕生の可能性は潰えていないとの考えを示した。
「彼らがレッドブルとの関係を検討し、ホンダのIPを活用できるかどうか、そしてフォルクスワーゲンのパワーユニットがそういう形で参入するにせよ、そこから学ぶ事が可能かどうかを検討するのは合理的な話だ」とウォルフは指摘する。
「実際にどうであるかは私には分からないし何も関係のない事だが、こうした関係や知的財産を活用することで彼らは利益を得ることができるだろう」
ウォルフ代表はまた「私はレッドブルが正しい戦略的一歩を踏み出したと考えている」と述べ、ライバルチームの経営判断に全面的に理解を示した。
「彼らは、独自パワーユニットを推し進める道と、おそらくは新しいOEMが加わるデュアルトラック(複線戦略)を目指しているのだと思うが、これは間違いなく賢明な判断であり、IPの継承に関してホンダとの間で結ばれた取り決めもまた、理に叶ったものと言える」
VWグループはディーゼルエンジンの排出規制不正問題が足かせとなり、F1参戦計画を断念した経緯があるものの、2025年からのF1参戦への興味を公言し、更には将来のPUのあり方を議論するワーキンググループにも参加しており、参戦の可能性が最も高いブランドと見なされている。