角田放出とハジャー抜擢の「2つの理由」―メキーズが語る決断背景とF1復帰予言、一方で”伏された一点”とは

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なぜレッドブル・レーシングは、2026年のマックス・フェルスタッペンのチームメイトとして角田裕毅を留任させず、新人のアイザック・ハジャーを抜擢したのか。その理由を説明するチーム代表の言葉は、F1という世界の非情な論理と、角田への揺るぎない信頼が入り混じるものだった。

2025年の最終戦アブダビGPの初日、ローラン・メキーズはこの問いに対し、「純粋な速さだ。それに尽きる」と冷徹な判断基準を明かした。ただ同時に、「ユーキは再びチャンスをつかむと思っているし、そうなることを願っている」と、角田復活への強い思いも口にした。

決め手は「純粋な速さ」ハジャーが示した素質

来季、4度のF1ワールドチャンピオンの隣に座るのはハジャーだ。メキーズはその選定理由を極めて端的に語った。

「純粋な速さだ。それに尽きる。この世界で最も重要なのはそこだからね」

メキーズによれば、ハジャーの評価を決定づけたのは、彼がF1マシンに乗り始めた当初から見せてきた圧倒的なパフォーマンスだったという。

「彼はシーズン序盤にF1マシンへ乗った瞬間から、とんでもない速さを示した。最初から際立っていたんだ」

「我々には『本物のチャンピオンは成長する』との強い信念がある。速さという素質があるだけでなく、成長してさらに速くなり、それまでのレースでできなかったことをやってのけるようになる、というね。アイザックには、そのスタート地点の高さゆえに、大きな可能性があると考えた」

メキーズはまた、「この先何年かを見据えた時に、厳しい判断を下さなければならなかった」とも語り、中長期的観点からの決断であったことを示唆した。

フェルスタッペンが契約終了を待たずにチームを去る可能性がある以上、レッドブルは“次のフェルスタッペン探し”を怠るわけにはいかない。少なくとも角田は彼の後継者に足ると納得させるだけの結果を残せていない。一方でハジャーは、ルーキーゆえに角田と比較して遥かに未知数が多い。

表彰台の上で歓喜する2位マックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)と3位アイザック・ハジャー(レーシング・ブルズ)、2025年8月31日(日) F1オランダGP決勝(ザントフォールト・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

表彰台の上で歓喜する2位マックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)と3位アイザック・ハジャー(レーシング・ブルズ)、2025年8月31日(日) F1オランダGP決勝(ザントフォールト・サーキット)

「苦渋の決断だった」角田への信頼と苦悩

角田は何も”遅いドライバー”との烙印を押されたわけではない。メキーズは「ユーキのことは本当によく知っているし、彼がどれほどの速さを持っているのかも分かっている」とした上で、角田に対するチームのサポートが決して完璧ではなかったとも認めた。

「今年はできる限りのサポートをしようと努めてきた。そこから得た学びを無駄にせず、慢心することなく、今後、もっと良い仕事ができるよう努めるつもりだ。我々は決して”十分にできた”とは思っていない」

角田が苦戦した背景には、チーム側のサポート体制の不備があったとメキーズは認めたが、それでも最終的にレッドブルは、角田の半ば確立されたとみなされる実力ではなく、ハジャーが持つ未知の可能性に懸けた。

「レッドブル・レーシングとしては、アイザックとユーキのどちらを選ぶかは本当に難しい判断だった。我々はユーキに対して色々と試行錯誤を重ねた。そして、彼は前進していた。ただ、アイザックの持つ並外れたポテンシャルに”賭けるべき”だと感じたんだ」

苦渋の決断であったことは、メキーズの口調から明らかだった。

第二の疑問「なぜVCARBのシートを得られなかったのか」

ガレージに立つアーヴィッド・リンブラッド(レッドブル・レーシング)、2025年12月4日(木) F1アブダビGPメディアデー(ヤス・マリーナ・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

ガレージに立つアーヴィッド・リンブラッド(レッドブル・レーシング)、2025年12月4日(木) F1アブダビGPメディアデー(ヤス・マリーナ・サーキット)

日本のファンにとって最大の疑問の一つは、なぜ角田は姉妹チームであるレーシング・ブルズ(VCARB)のシートさえ得られなかったのか、ということだろう。

角田ではなくアーヴィッド・リンブラッドを選んだ理由について問われると、メキーズは一切の回答を避けた。レッドブル・レーシングのチーム代表として姉妹チームの人事に言及すべきではないと考えたのか、それとも語れない理由があるのか。答えは伏せられたままだ。

それでもメキーズの一連の発言から、角田ではなくハジャーが選ばれたのには2つの理由があることが明確となった。一つはハジャーが持つ「生粋の速さ」、そしてチームとして確信は持てないまでも「懸けるに値する」と判断された将来性だ。

「ユーキは戻ってくる」復活を予言

チーム代表会見に出席するローラン・メキーズ(レッドブル・レーシング代表)、2025年12月5日(金) F1アブダビGPフリー走行(ヤス・マリーナ・サーキット)

チーム代表会見に出席するローラン・メキーズ(レッドブル・レーシング代表)、2025年12月5日(金) F1アブダビGPフリー走行(ヤス・マリーナ・サーキット)

リザーブドライバーへの降格は、角田にとってキャリアの終わりを意味するのか。メキーズはこれをそれを明確に否定し、過去の事例を挙げて角田の「復活」を予言した。

「私はユーキが再びチャンスをつかむと思っているし、そうなることを願っている。我々のチームはこれまでも、かなり迅速にドライバーに関する決断を下すことで知られてきたからね」

メキーズが引き合いに出したのは、2024年シーズン末の出来事だ。当時、リアム・ローソンが2025年に向けて昇格チケットを掴み取り、角田は蚊帳の外に置かれたかのように見えた。

「ユーキは『自分はいつかチャンスを得られるのだろうか』という思いを抱えたまま冬に入った。彼にとっては受け入れがたい結果だったはずだ」

「それでも彼はチームに戻ってきて、我々と共に『すべてを最大化し、限界のその先を目指す』という目標を掲げた。そして3戦後、彼はレッドブル・レーシングのマシンをドライブしていた」

わずか3戦──この逆転劇の速さこそが、レッドブルというチームの特徴だ。そしてメキーズは、同じことが再び起こり得ると示唆する。

「この先、VCARBで何が起きるかについては”私からは”言えない。確かなのは、レッドブルとしてユーキにファミリーへ留まってほしかったということ──そして彼は今後、我々のリザーブドライバーとしてチームに残るということだ」

将来的なF1復帰を強く信じているのはメキーズだけではない。角田本人もそうだ。シート喪失が決まった直後にして、復帰への確度をこれほど強く抱いている様子は、むしろ違和感すら覚える。

それは、当事者間である種の見通しがすでに共有されているのではないか──そう感じさせるほどだ。ドライバー交代に関する具体的な条件が、すでに話し合われている可能性すら匂う。

「挫折は誰もが経験する」長いキャリアの一章として

パドックへ到着する角田裕毅(レッドブル・レーシング)、2025年11月22日(土) F1ラスベガスGP決勝(ラスベガス市街地コース)Courtesy Of Red Bull Content Pool

パドックへ到着する角田裕毅(レッドブル・レーシング)、2025年11月22日(土) F1ラスベガスGP決勝(ラスベガス市街地コース)

今回の降格が角田にとって失望と胸の痛みを伴う出来事であることは間違いない。だがメキーズは、これは長いキャリアの中の「一つの大きな挫折」に過ぎないと語る。

「この部屋にいる全員、そしてそれ以外の誰もが、一度は大きな挫折を経験しているはずだ。今回の件は、彼にとってもそういう挫折だ。だが、彼の中には再びチャンスをつかむために必要な多くが備わっていると、私は確信している」

その言葉は社交辞令の域を超え、メキーズの本音を感じさせるものだった。

F1という過酷な世界で生き残るには、挫折を乗り越える力が不可欠だ。ルイス・ハミルトンも、ミハエル・シューマッハも、アイルトン・セナも、キャリアのどこかで壁にぶつかっている。そこから立ち上がれるかどうかが、真のチャンピオンを分ける。

メキーズは、角田裕毅にそれを乗り越える資質があると信じている。

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