稼ぎ頭の角田裕毅のレッドブルF1昇格シナリオ、失う側のRBメキーズ代表はどう捉えているのか?
シニアチームの都合でシーズン途中に角田裕毅あるいはダニエル・リカルドを失うことはRBにとって迷惑以外の何物でもないように思われるが、ローラン・メキーズ代表はこれをどう捉えているのだろうか。
レッドブルとRBの首脳陣はベルギーGP後にセルジオ・ペレス(レッドブル)の去就を決定する計画で、後任候補として角田裕毅とリカルド、そしてリザーブ・ドライバーのリアム・ローソンの名前が取り沙汰されている。
ドライバー交代劇についてメキーズは、F1ベルギーGPの舞台スパで「チーム外部の人々が興奮するのは理解できる」としつつも、今年再出発を切ったばかりのRBとしての最優先事項は「クルマの開発」であるとして、ドライバーに関する問題は「最後の部分」としながらも、シーズンの半分が終わった今、将来のラインナップに検討するのは「自然なことだ」と認めた。
「我々にとっては、この新しい冒険をスタートさせ、クルマを機能させることが全てだ。シーズンが進むにつれ、クルマを改善していけたことは本当に良いことで、ドライバーたちも正しい方向性を探るうえで重要な役割を果たしてくれた」とメキーズは語る。
「ユーキは目を見張るような素晴らしい形でシーズンをスタートさせた。そしてダニエルはこの前半戦の終盤に調子を上げ、開発の局面で本当に重要なガイド役を果たしてくれた」
「今まさにシーズンの半分が終わった。我々チームの旅は半分が過ぎた。将来について話し合うのか? そうだ。それは自然なことだ」
「もちろん我々は話し合いを行うが、それは必ずしも(ラインナップが)変わることを意味するわけではない。変わらないかもしれない。それは普通のことだ」
「我々の置かれた状況においては贅沢なことにリアムもいる。非常に競争力があるドライバーで、(シートを)待ち続けていることは我々も承知している」
一般論としてドライバー交代はチームにとって幾つかの点でデメリットとなり得る。
後任ドライバーがクルマやチームのシステムに適応するまでに時間がかかれば、即座に最高のパフォーマンスを発揮することができず、チームのコンストラクターズランキングに悪影響を及ぼす可能性がある。F1においてはエンジニアを含むチームメンバーとのコミュニケーションが重要な役割を担うだけに尚更、懸念されるところだ。
また、人気のあるドライバーを失う場合は、スポンサーシップやファンの支持に影響を与えたり、チームメンバーの士気に悪影響を及ぼす可能性も考えられる。
さらに、ドライビングスタイルやセットアップの好みの違いから、チームとして進むべき技術的な方向性がブレる恐れもある。
これまでにチームが獲得した合計33ポイントのうち、7割近い22ポイントを稼ぎ出しているだけに、RBにとって角田裕毅は特にシーズン途中に失いたくないドライバーの一人であるように思われる。同じことはマシン開発の方向性を導いたとして高く評価されているリカルドにも言える。
ピーター・バイエルCEOによればRBの首脳陣達に、ドライバーに関する決定権はない。人事権を握るのはレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表とヘルムート・マルコだ。
自分たちのドライバーがレッドブルに昇格するという手の及ばない動きについて、RB内部ではどのように捉えられているのだろうか?
「ドライバー達がレッドブル・レーシングへの昇格を望んでいることは全く問題ない。我々のDNAと目標は、レッドブル・ファミリーのためにドライバーを育成し、最終的にレッドブル・レーシングに送り出すことにある」とメキーズは説明する。
「ユーキやダニエルがレッドブルに行きたいと思っていることは正しい方向性だし、これは我々のプロジェクトにとって、レッドブル・レーシングのドライバーを育成する能力を示すという点で非常に重要なKPI(重要業績評価指標)であり続けている」
問題ないとしつつもメキーズは、競争力あるドライバーを失うことで生じる問題もあると認めた。
「他方、現在は競争力というKPIの重要性も大いに増しているため、この二つのバランスを見つける必要があるが、きっと方法を見つけることができるだろう」とメキーズは付け加えた。