
致命的な勘違い? ハミルトン、実質初のQ1最下位…その裏に”92mの罠”を含む悪夢の三重奏
ルイス・ハミルトン(スクーデリア・フェラーリ)にとって、2025年F1第22戦ラスベガスGPの予選は「悪夢」以外の何物でもなかった。「もちろん、最悪の気分だよ。気分がいいわけがない」と肩を落とす。
外的要因によるものを除き、純粋なペース不足によって予選最下位に沈むのは、彼の長いF1キャリアにおいても前例のない事態であり、フェラーリドライバーとしても、2009年アブダビGPでのジャンカルロ・フィジケラ以来、16年ぶりの不名誉となった。
2025年シーズンを「キャリアを通して最も困難な年」と表現したハミルトン。だが、ベガスでの最悪の結果を招いた要因は、不運だけでなく、彼自身の「勘違い」にあった可能性も見え隠れする。
エンジニアは叫んだ「プッシュし続けろ!」
Q1敗退の危機に瀕していたハミルトンは、セッション終了間際にコントロールラインを通過した。この瞬間、まだチェッカーフラッグは振られておらず、時計の針は残りコンマ数秒を示していた。つまり、ラストアタックに入る権利は残されていた。
ハミルトンは無線で「間に合ったか?」と尋ねた。 これに対し、レースエンジニアのリカルド・アダーミは「プッシュし続けろ!」と返した。
だが、ハミルトンはアクセルを緩め、アタックを放棄してしまった。
A hectic Q1 comes to an end, and unfortunately we lose @LewisHamilton in P20@Charles_Leclerc progresses to Q2 in P9 pic.twitter.com/N0SRxrNbai
— Scuderia Ferrari HP (@ScuderiaFerrari) November 22, 2025
2つのライン―92mの「視覚的な罠」
なぜハミルトンは諦めてしまったのか。それはラスベガス市街地コースの構造に起因する視覚的な誤認が原因と考えられる。
多くのサーキットと同様、ラスベガスでも「コントロールライン(タイム計測の基準)」と「スタートライン(グリッドの基準)」は別の場所に引かれている。コントロールラインの92メートル奥に、スタートラインが設置されているのだ。
ハミルトンは、コントロールラインではなくスタートラインを通過した直後、シグナルが赤く点灯(=セッション終了)するのを目撃し、「時間切れになってしまった」と錯覚した可能性がある。
ハミルトンは「ラインを通過したとき、シグナルは赤だった。どのみちグリップがなかったから、(もう1周したとしても)大した違いはなかったと思う」と語るが、データ上では実際のところ、コントロールライン通過時のシグナルはグリーンだった。
ボラードと黄旗の不運
Courtesy Of Ferrari S.p.A.
自ら倒したボラードが車体下部に入り込んだルイス・ハミルトンのフェラーリSF-25、2025年11月21日(金) F1ラスベガスGP予選Q1(ラスベガス市街地コース)
そこに至るまでも不運の連続だった。ボラード(プラスチック製のポール)と接触し、それが車体の下に挟まるアクシデントが発生。さらにコース上のイエローフラッグにより、勝負どころでアクセルを戻さざるを得なかった。
「最終コーナーでイエローフラッグが出ていて、ターン17へ向かうところでもイエローだったから、リフトしなきゃならなかった」
天国から地獄へ「最速だと思っていたのに…」
この結末が、より残酷なのは、直前のフリー走行3回目(FP3)まで、ハミルトンがトップ争いへの手応えを感じていたからだ。
「FP3ではクルマの感触が最高だった。『ようやく良い一日になるぞ』って本当に、本当に楽しみにしていたんだ。でも、そうはならなかった」
中国GPのスプリント勝利を除き、フェラーリ移籍後、メインレースでの表彰台がないハミルトン。「自分たちが最速だと思っていたのに、予選が終わってみれば20位だ」と語るその背中には、かつてないほどの落胆が漂っていた。
文字通りの最後尾スタートとなる土曜の決勝レース。7度の王者は何を見据えてグリッドに着くのだろうか。そして、この「最も厳しい年」をどのような形で締め括るのだろうか。
雨に見舞われた2025年F1ラスベガスGP予選では、ランド・ノリス(マクラーレン)がマックス・フェルスタッペン(レッドブル)を抑えてポールポジションを獲得。3番手にはカルロス・サインツ(ウィリアムズ)が続いた。
決勝レースは日本時間11月22日(日)13時にフォーメーションラップが開始され、1周6,201mのラスベガス市街地コースを50周してチャンピオンシップを争う。レースの模様はDAZNとフジテレビNEXTで生配信・生中継される。