鈴鹿ラストランに臨むセバスチャン・ベッテル(アストンマーチン)、2022年10月9日F1日本GP決勝レース
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

泣ける、痺れるアロンソとの激闘!80cm差で振り切り鈴鹿ラストランを金星で飾ったセバスチャン・ベッテル

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マックス・フェルスタッペン(レッドブル)を巡るチャンピオンシップ争いのドラマに注目が集まる中、少し下のフィールドでは2人合わせて計6度のF1世界王者による激闘が繰り広げられていた。

4度の鈴鹿ウィナー、セバスチャン・ベッテル(アストンマーチン)は9番グリッドから好スタートを切り、ターン1に向けてポジションを上げていったものの、巻き上げられた水しぶきのせいで視界は悪く、フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)との接触によりグラベルへと飛び出し、最後尾にまで転落した。

フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)と争うセバスチャン・ベッテル(アストンマーチン)、2022年10月9日F1日本GP決勝レースCourtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)と争うセバスチャン・ベッテル(アストンマーチン)、2022年10月9日F1日本GP決勝レース

これで彼が愛して止まない鈴鹿での最後のレースは終わったと、誰もが思った事だろう。4度のF1ワールドチャンピオンは2022年末を以てF1を去る。だが現実は違った。

その後、セーフティーカー(SC)導入の契機となったカルロス・サインツのクラッシュを含め、アレックス・アルボン、ピエール・ガスリー、周冠宇のインシデントにより16番手まで巻き返すと、SC再開時には先陣を切ってウェットからインターミディエイトタイヤに交換する攻めの一手を打ち、決定的なアドバンテージを作り出した。

路面の水は徐々にはけ、ライバルたちが一通りインターへと履き替えた頃には6番手に浮上。ベッテルは4番手を争っていたエステバン・オコンとルイス・ハミルトンに迫り、前の集団から5秒程度の位置を保ちながら、後方から迫るアロンソからの追撃を防いでいた。

だが、レース終盤にアルピーヌはアロンソに2回目のピットストップを指示。一時的に2ポジションを失ったものの、アロンソは新品インターのアドバンテージを活かして驚異的なペースを刻みベッテルに迫っていった。

そして迎えたファイナルラップ。2度のF1王者は最終シケインでベッテルのイン側に飛び込みオーバーテイクを仕掛けた。だが縁石に乗りすぎた事で体勢を崩し、抜き切る事はできなかった。

2人はサイド・バイ・サイドとなって最終コーナーにアプローチ。まさに完全な横並びとなってフィニッシュラインへと向かっていったが、ベッテルが僅差でポジションを守り切り、6位の金星を挙げてチームに8ポイントを持ち帰った。

勝敗を分けたのは1000分の11秒だった。フィニッシュライン通過時の速度を260km/hとして計算すると80cmに満たない差だった。ファンがSNSに上げた次の動画は、その争いが如何に痺れるものであったかを物語っている。

アロンソはInstagramのストーリーに次の画像を投稿し、ベッテルとアストンマーチンを称えた。

鈴鹿ファイナルラップでのセバスチャン・ベッテル(アストンマーチン)との超接近サイド・バイ・サイドの争いをシェアしたフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)のInstagramのストーリー、2022年10月10日F1日本GPcopyright fernandoalo_oficial@Instagram

鈴鹿ファイナルラップでのセバスチャン・ベッテル(アストンマーチン)との超接近サイド・バイ・サイドの争いをシェアしたフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)のInstagramのストーリー、2022年10月10日F1日本GP

レースを終えたベッテルは、別れを惜しむファンからのサポートを受けた鈴鹿での最後の週末を「夢のようだった」と評した。

「もちろん、(規定周回数の)半分しか走れなかったのは残念だが、少なくとも観客席のファンがレースを見ることができて良かった」

「再スタートに向けて路面が乾くのを待っていたためだけど、観客の皆にとっては、雨の中で濡れながら2時間も外で待ち続けるのはかなり大変だったろうと思う」

ファンに手を振るセバスチャン・ベッテル(アストンマーチン)と個人PRマネージャーを務めるブリッタ・ロースケ、2022年10月9日F1日本GPCourtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

ファンに手を振るセバスチャン・ベッテル(アストンマーチン)と個人PRマネージャーを務めるブリッタ・ロースケ、2022年10月9日F1日本GP

「スタートはかなり良かったんだけど、ターン1で接触してしまった。あの時は何も見えなかったんだ」

「アクアプレーニングが起きていたのか、それとも僕がミスをしたのか、よく分からないけど、それまでに得たポジションを全て失ってしまい最後尾になってしまった」

「レースが再開された時、僕らはインターに履き替えるためにすぐにピットに入った。あれは良い判断だった。それにピット作業も素晴らしかった」

「あの後は狂ったようにプッシュしてフィールドの殆どのマシンをアンダーカットしていった」

「夢のような週末だった」

「8ポイントを獲得できたのは大きな成果だ。ここでの最後のレースが終わってしまって寂しいけど、最高の週末を過ごす事ができた」

「素晴らしい鈴鹿のファンのみんなには、ただただ『ありがとう』と言うしかない」


10月9日(日)に鈴鹿サーキットで行われた2022年F1第18戦日本グランプリレースでは、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)が今季12勝目と共に自身2度目のチャンピオン獲得を成し遂げた。

サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)を舞台とする次戦アメリカGPは10月22日のフリー走行1で幕を開ける。レッドブル・レーシングはコンストラクターズ選手権制覇を懸けて臨むことになる。

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