F1参戦1000グランプリを迎えたエッソとモービルcopyright Getty Images / Red Bull Content Pool

技術解説:燃料やオイルがF1マシンのパフォーマンスに与える影響

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レッドブル上層部のお偉方は、スクーデリア・フェラーリの燃料の匂いがイチゴかグレープフルーツかで揉めているようだが、燃料やオイルといった”水物”は、マシンパフォーマンスにどれほどの違いをもたらし得るものなのだろうか?

日本においてはJIS規格によって品質が担保されており、レギュラーガソリンに限って言えばメーカー毎の違いは殆どないため、クルマ好きのハイオク車に乗るユーザー以外は、燃料に関心を持つは少ないかもしれない。一方で、エンジンオイルは粘度や種類にバリエーションがあるため、こだわりを持つ方もいるだろう。

パワーユニットやタイヤと比較すると、燃料やオイル関連の技術的な話がF1の話題に上ることは多くない。だが、これらがパフォーマンスに与えるインパクトは無視できない。

2019年F1 チーム別燃料・オイルメーカー

2019シーズンのF1には、5つのフューエルサプライヤーが各々チームと契約を結び、オイルと燃料を供給している。オイルと燃料は、タイヤにおけるピレリのような公式サプライヤーが存在しない。

開発を考慮すれば、基本的には同一エンジン、同一燃料を用いる事が望ましい。しかしながら、マクラーレンはワークスルノーとは異なる燃料とオイルを使用。ブラジルのペトロブラスと提携している。

チーム エンジン 燃料オイルサプライヤー
フェラーリ フェラーリ シェル
ハース フェラーリ シェル
アルファロメオ フェラーリ シェル
メルセデス メルセデス ペトロナス
レーシングポイント メルセデス ペトロナス
ウィリアムズ メルセデス ペトロナス
レッドブル ホンダ エクソンモービル
トロロッソ ホンダ エクソンモービル
ルノー ルノー BPカストロール
マクラーレン ルノー ペトロブラス

フューエルサプライヤーは何を供給?

フューエルサプライヤーがチームに提供するのは、燃料とエンジンオイルだけではない。大別すると以下の5つに分けられる。

  • エンジンオイル
  • ハイドロリックオイル
  • ギアオイル
  • グリース
  • 燃料

エンジンオイルは300度にも達する高温に耐えながら、内燃機関の冷却及び金属同士の摩擦を低減して、パワーと性能を最大限に引き出す。F1パワーユニットICEは1分間に最大で15,000回転するため、エンジンオイルにはこれに耐えうる強靭な性能が必要となる。

ハイドロリックオイル(作動油)は、ギアシフトやスロットル、DRSステアリングシステムの操作を制御する油圧システムに用いられる。ギアオイルは、ギアボックスの効率を向上させトラクションロスを削減。リアタイヤへの動力伝達性を高める事が求められる。

各種グリースは、ドライブシャフトやホイールベアリングといった部位を潤滑し、抵抗を最小限に抑えてスピードを高める。燃料に求められるのはエンジン出力の最大化と保護。エネルギー含有量を最大化しつつ、ノッキングを抑えて効率を上げる必要がある。

エンジンで生み出されたパワーは、様々な機関を通してタイヤへと伝えられる。この間には約300もの可動部分が存在し、その全てにオイルが介在するわけだが、各々の部位における抵抗が僅かな値だったとしても、それは積もり積もって大きな抵抗となり、折角作り上げたエンジンパワーを毀損してしまう。

レギュレーションでは組成要素や添加物を厳密に定めており、FIA国際自動車連盟の検査と承認なしに実戦投入する事はできない。

1年間における改善の21%は燃料とオイルの進化に由来

スクーデリア・フェラーリのチームウェアにプリントされたシェルのロゴ

1.6リッターV6ハイブリッド・ターボエンジンが導入されて以降、F1ではメルセデスがパワーユニット開発で他を圧倒してきたが、2018シーズンはフェラーリが大幅躍進を果たし、これに匹敵するパフォーマンスを示した。シェルによると、フェラーリが2017年から2018年に果たした改善の内の21%は、オイルと燃料に由来するものであったというから驚きだ。

ただし、21%という数値をどう捉えるべきかは難しい。これはほんの数馬力であるかもしれないし、1周あたりに換算すると百分の数秒程度かもしれない。だが、世界トップを争うF1は、僅かなマージンが大きな差につながるスポーツだ。

フェラーリの燃料は、ドイツの港湾都市ハンブルグにあるシェルの研究開発所で開発されている。シェルは年間21000時間という膨大なリソースを投じて、跳ね馬のために研究開発を行っており、1シーズンに約25000リットルものガソリンを供給する。

F1マシンの燃料と言えども目指す方向性は市販車のそれと同じであり、摩耗と熱からエンジンを保護することにある。だが、求められる水準が圧倒的に異なる。シェルの開発チームは、各セッションごとにエンジンオイルを分析。常時エンジンの状態を解析すべく、50人ものチームを現場に投入している。

F1で採用されている先進的なターボエンジンの燃料には、燃焼性の良さや高いアンチノック性、高オクタン価や高い冷却性など、さまざまな性能が求められる。シェルはマラネロが開発したエンジンに最適な燃料を供給すべく、20万通りものシミュレーターを行い、ベストな燃料をブレンドしている。