アンドレッティからフォーミュラEに初参戦する小林可夢偉
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いまさら聞けない…フォーミュラE レギュレーション《2017/18年シーズン版》

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フォーミュラE世界選手権のルールを定めたレギュレーションは、FIA国際自動車連盟によって管理・監督されており、A4サイズにして60ページから構成される。唯一の電気自動車(EV)世界選手権とあって、ファンブーストやマシン乗り換え、マシン充電など、他のモータースポーツにはない独自のルールが多く存在する。

2014年に発足したフォーミュラEも早や4年、規約にも少しずつ変更が加えられている。毎年12月31日までに次のシーズンのレギュレーションが発表され、チームはこれに厳格に従う必要がある。

2017年12月2日から始まる4thシーズンでは、開幕香港ePrixに日本人レーサーの小林可夢偉がスポット参戦したこともあり大きな注目を集めている。ここでは主にスポーティング(競技)レギュレーションに焦点を当てて、これだけは知っておきたいフォーミュラEの主なルールを厳選して紹介する。

選手権とポイントシステム

シャンパンファイトに興じるルーカス・ディ・グラッシ
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FIAフォーミュラEチャンピオンシップは、ドライバー及びチームの2つのタイトルから構成される。ポイントシステムは、他のFIA認定シリーズで採用されているものに準拠しており、同じくFIA公認の世界選手権であるフォーミュラ1と同じポイント制度となっている。

1位
25ポイント
2位
18ポイント
3位
15ポイント
4位
12ポイント
5位
10ポイント
6位
8ポイント
7位
6ポイント
8位
4ポイント
9位
2ポイント
10位
1ポイント

F1と異なる点として、フォーミュラEでは上記リザルトポイントに加えてポールポジションに3ポイント、決勝を10位以内の入賞圏内でフィニッシュし、かつレース中にファステストラップを叩き出したドライバーに1ポイントが追加される。

マシン

フォーミュラEのマシン
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開催初年度こそ「スパーク・ルノー・SRT_01E」のワンメイクであったが、2シーズン目以降はモーター、インバーター、ギアボックス、冷却システム等の独自開発が認められている。パワーユニットは化石燃料を一切使わない電動モーター、最高出力は1000馬力のF1マシンを比べると見劣りする270馬力、最高速度は225km/hに制限されている。

他のフォーミュラカーシリーズとは異なりかなりリア側が重く、独特のドライビングが求められる。詳しくは、フォーミュラEマシン 技術データ及び諸元表を参照されたい。

レースフォーマット

シェイクダウン:金曜日

一部のイベントを除き、レース前日の金曜日にシェイクダウンセッションが開催される。サーキットによっては実施できない場合もある。ドライバーは、このセッションを利用して電子システムや車の信頼性をチェックする。ただし、モーター出力は110kwに制限されており、低速での走行となる。

シェイクダウンでは、FIA国際自動車連盟によるトラックレイアウトや縁石等のチェックが行われ、ドライバー達はブリーフィングでフィードバックを行う。

プラクティス:土曜午前

各イベント毎に45分のPractice 1と、これに続く30分間のPractice 2が用意される。ドライバーにとっては初の本格走行の時間。2日間連続でイベントが行われる開幕香港や最終モントリオールようなダブルヘッダーの場合には、2日目のイベントでPractice 2が行われない。

モーター出力は200Kwに引き上げられ、ドライバーはトラックの感触を確認し、マシンセットアップを最適化していく。

予選:土曜午前

予選ではタイム計測によって決勝のグリッドを争う。ドライバー達はくじ引きによってグループ分けされ、1時間に渡るセッションに挑む。ドライバーには各6分の時間が与えられ、その中でベストタイムを目指す。上位5人は「スーパー・ポール・シュートアウト」と呼ばれる次のラウンドに進み、3ポイントが得られるポールポジション争いを行う。

スーパー・ポールでは、1台ずつがタイム計測を行い、前のマシンがクロスラインを横切ると同時に、次の競技者がピットレーンからコースに出ていく。予選でのモーター出力は200kw。

決勝:土曜午後

フォーミュラEの決勝レースはePrixと呼ばれる。スタートはグリッドに停止した状態から行われる。レースはおよそ50分間に渡り、ドライバーにはマシン変更のために必ず1度ピットストップする事が義務付けられている。レースで使用可能な出力は180kwに制限される。(3rdシーズンより10kw引き上げられた)

ファンからの投票によって決められる「ファン・ブースト」を獲得した3人のドライバーには、それそれ100kjずつのエキストラパワーが与えられる。

ダブルヘッダー

ウルグアイの町中で開催された2015年プンタ・デル・エステePrix
© Adam Warner / LAT / FE

フォーミュラEは全て市街地コースで開催されるため、開催都市の混乱を最小限に抑えるために、大半のレースが1日だけのワンデイイベントとなる。ただし、連続開催が可能な場合には、週末の2日間で2イベントをこなす。これをダブルヘッダーという。

ピットストップとマシン変更

フォーミュラEならではのルールがこのマシン変更。ドライバーは各レースで必ず一度ピットストップを行い、マシンを乗り換える事が義務付けられている。これは、現在のバッテリー容量(28kwh / ウィリアムズ製)では1レースを走りきれないため。ピット・インしたドライバーは、ガレージ内で満充電されている2台目のマシンに飛び乗る。

フォーミュラEではマシンを乗り換える必要がある
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乗り換えは各マシンに割り当てられたガレージまたは専用スロット内で行わなければならず、また、FIAのスチュワードによって安全装置とベルトが正しく固定されている事が確認されなければならない。加えて、このチェックのための十分な時間を確保するために、37秒という最低作業時間が設けられている。37秒以内で乗り換えが終わったからと言ってコースに出ることは許されない

5thシーズンとなる2018/19年から供給が予定されているバッテリー容量は現行の倍近い54kwh(マクラーレン製)、理論上マシンの乗り換えが必要なくなると見込まれている。だが、ピットストップ戦略が単調になってしまいレースが退屈なものになるのでは?と言った議論もなされており、マシン変更の義務が継続されるかどうかはまだ未定となっている。

タイヤと割り当て

フォーミュラEのタイヤはミシュランのワンメイク。供給されるのは18インチの溝付き全天候型タイヤ”パイロットスポーツEV2″、ドライとウェットの区別はない。イベント毎に2本の新品フロントタイヤと2本の新品リアタイヤが全てのドライバーに供給される。これに加えて、ドライバーは前のイベントで使用したタイヤの中から、フロントタイヤとリアタイヤを一つずつ選びこれを使用する。つまり各イベントで使用可能なタイヤは新品と中古を合わせた計6つとなる。このルールは、ダブルヘッダーでも同様に適用される。

他のレースカテゴリーでは当たり前のように行われるタイヤの交換だが、フォーミュラEではパンクやダメージなどの安全性に関わる場合を除いてタイヤ変更は認められていない

充電

予選及び決勝レースではマシンの充電は禁止される。また、パルクフェルメと車検の間に充電することも認められていない。マシンへの充電は、プラクティスか各セッション間のみ許可される。

ファン・ブースト

フォーミュラEには「Fan Boost(ファン・ブースト)」と呼ばれる独特の仕組みがある。これは、公式サイトやSNS上で行われる人気投票によって選ばれた上位3名のドライバーに、レース中の攻撃や防御のために使用可能な追加のエネルギーが与えられるというもの。ファンがレースに参加するという点で、フォーミュラE特有のシステムとなっている。

ファンブーストガール
© Jed Leicester/LAT/Formula E

投票は、イベント開催の5日前からレース開始6分後まで行われる。ファンは、ソーシャルメディアか公式サイトを通じて1日1回に限り投票する事ができる。得票数上位3名には、2台目のマシンで1回のみ使用可能な100kJのエネルギー使用権利が与えられる。時間制限はないし使用しなくても良いが、ブーストを使うことでモーターの発熱量が増加したり、エネルギー残量が減少するなど、獲得したからといってラッキーといった類のものではない。

また、17/18シーズンは決勝でのエネルギー制限が200kwと向上していることもあり、ファンブーストで得られる出力は僅か、年々その価値のは減少しつつある。

ソーシャルメディアで投票する場合には、#ハッシュタグを使用する。「#FANBOOST」に加えて投票したいドライバーの名前をハッシュタグとして使う。

e-ライセンス

一般道を車で走るのに運転免許証が必要なように、フォーミュラEに参加するためには「e-ライセンス」と呼ばれる資格が必要となる。FIAフォーミュラEチャンピオンシップに参加するには、電動レースカー特有の安全性に焦点を当てたFIAの訓練、技術面とスポーツ面のルールのレビューを行った上で、以下のいずれかの条件を満たす必要がある。

  • FIAスーパーライセンスシステムにおいて過去3年間で20ポイント以上
  • 以前にスーパーライセンスを保持
  • 過去にフォーミュラEで最低3レース出場
  • 前シーズンのチャンピオン

上記条件が満たせない場合、ドライバーは「シングルシーターで一貫した能力を示し続けている」事をFIAに対して証明する必要がある。

テスト

チームとドライバーには年間9回の公式テストへの参加が認められている。シーズン前に5回、シーズン中に2回、シーズン後の2回。年間6日まで許されているプロモーション用の走行を除き、プライベートテストは一切許可されていない。各テストは、3時間の午前のセッションと3時間の午後のセッションで構成される。


開催日程とエントリーリストについては、2017/18年フォーミュラE 開催日程とチーム及びドライバーリストを参照されたい。