アンドレア・キミ・アントネッリとコルトン・ハータ
Courtesy Of Mercedes / Penske Entertainment

早くも物議…F1ライセンス規定変更に「白い目」ハータ拒否の一方でアントネッリに門戸を開いたFIA

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F1参戦要件であるスーパーライセンス規定の年齢制限が事実上、17歳に引き下げられたことを受け、インディカー・シリーズに参戦する元F1ドライバーのアレクサンダー・ロッシは冷淡な反応を見せた。

国際自動車連盟(FIA)は特例として、「FIA独自の裁量」によって17歳でのスーパーライセンス取得を認める条項を加えただけでなく、自動車運転免許証の所有を要件から削除した。これが物議を醸すことは必至だった。

今回のルール変更が先の2点に及んだことは注目に値する。なぜならば、これらは彼の誕生日である今年の8月25日を迎える前に、アンドレア・キミ・アントネッリがライセンスを取得するために不可欠な2点であったからだ。

アントネッリの母国イタリアでは18歳以上でないと運転免許証を取得できない。また旧ルールにおいてアントネッリは、18歳を迎えて最初に訪れる9月1日の第16戦イタリアGPまでF1デビューすることが叶わない状況だった。

FIAは5月中旬、メルセデスジュニアのアントネッリが早期にスーパーライセンスを取得できるよう、年齢制限に関する条件を免除するようにとの要請があったと認めた。今回の変更がアントネッリのために行われたことは明白だった。

この変更を受けロッシは、皮肉や不信感を含めてSNSに「例外が認められるのか。ふーん」と書き込んだ。この投稿には執筆現在で1万4千を超える「いいね」が付き、リプライに並ぶ陰謀論的なコメントや、米国排除の表れだとするとの意見が人気を集めている。

FIAはかつて、アルファタウリでの2023年F1デビューを念頭に、インディカーで活躍する米国人ドライバー、コルトン・ハータのライセンス取得を希望したレッドブルからの特例適用要請を拒否したが、欧州のジュニア・カタゴリーで研鑽を積みメルセデスの支援を受けるアントネッリに対しては門戸を開いた。

ハータのF1デビューの道が閉ざされた際にロッシは、F1での活躍に足る「才能と資質」がハータにあることは「誰もが認めるところ」であり、モータースポーツでは「スポーツ的な要素がビジネス的な側面より後回しにされることがあまりにも多い」と指摘。「本当にうんざりする」とスーパーライセンス制度を批判した。

アントネッリの早期F1デビューの障害となったのは2つの要因だが、ハータの場合は1つのみだった。

当時、ハータは年齢制限こそ満たしていたものの、スーパーライセンス・ポイントが8点不足していた。年齢制限の特例と同じ様に、「FIA独自の裁量」によって規定の40ポイント未満のドライバーにライセンスを与えることはさほど難しいことではなかっただろう。

さらに、ハータのケースはアントネッリの件とは状況が異なっていた。

アントネッリが参戦するFIA-F2選手権はスーパーライセンス・ポイントの獲得において、世界中のどのシリーズよりも優遇されている。F2のトップ10ランカーに与えられるポイントは合計201点に及ぶが、ハータが参戦するインディカーは合計124点に過ぎず、これはFIA-F3選手権より4点少ない。

また、インディカー・シリーズのランキング4位に与えられるポイントは10点だが、これはF1アカデミーのチャンピオンに与えられるポイントと同額だ。両者の価値は同一だろうか?

議論の余地があるとは言え、FIAがF2を含む管轄下のシリーズを優遇するのは構造的に必然と言える。他の独立したカテゴリーのポイント付与を高めれば、F2やF3などの管轄下のシリーズの価値は下がることになる。

F2ではチャンピオン獲得者が翌シーズンのF2に留まることを禁止しているため、構造的に競争力が高まっていくことはなく、また、ジュニアシリーズという位置づけであるため、世界のトップドライバーが栄誉を求めて参戦するカテゴリーでもないが、インディカー・シリーズはこれとは対照的で、F2より遥かに高いレベルの競争が行われていることは多くが認めるところだ。

ハータは2019年に18歳でインディカー・シリーズ最年少優勝を飾り、その翌年に世界トップレベルのプロドライバー達を相手にランキング3位を勝ち取った。一方でアントネッリはまだ、F2で一度も優勝やポールポジションを獲得していない。

スーパーライセンスというルールの目的が、実力や経験の面でF1に相応しくないドライバーを弾き落とすことにある点から言えば、ハータのケースはルールを変更、あるいは特例を適用するに値するものだったと言えよう。

実際、レッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは、ハータが官僚的なポイントシステムを通じてF1参戦に足る実力がある事を証明しなければならない状況は「理解できない」と語った

インディカー・シリーズ第6戦デトロイトでポールポジションを獲得したコルトン・ハータ(アンドレッティ)、2024年6月1日Courtesy Of Penske Entertainment

インディカー・シリーズ第6戦デトロイトでポールポジションを獲得したコルトン・ハータ(アンドレッティ)、2024年6月1日

ただ、アントネッリの足かせとなっていた年齢制限の緩和も、同じ様に対処されて然るべきものだったと言える。

18歳以上という条件が設けられたのは、2015年にマックス・フェルスタッペンが17歳でF1デビューした事に伴う若年化傾向に対する脊髄反射的な懸念が根底にあった。そもそも、これは論理的というより感情的な決定だった。

結局のところ、3度のタイトル獲得を含むフェルスタッペンのその後の活躍は、年齢制限の意義に改めて疑問を投じるものだった。

FIAがなすべき役割は、当該ドライバーがF1で競争するに足る能力があることを確認することにあり、それが証明されれば極端なケースを除いて年齢は問われるべき項目ではないだろう。