潰えたF1の夢…FIAの”特別扱い”とフィーダーシリーズでの出稼ぎ、いずれも望まなかったコルトン・ハータ
コルトン・ハータのアルファタウリでの2023年F1デビューの夢は潰えた。インディカー史上最年少優勝ホルダーは、国際自動車連盟(FIA)による特別扱いを望まず、駆け出しの若手が参戦するフィーダーシリーズでのポイント稼ぎも視野に入れなかった。
立ち塞がったのはF1スーパーライセンスだった。F1参戦要件である40点に8点足らないため、ハータがピエール・ガスリーの後任として来季アルファタウリでドライブするためには、FIAが不可抗力条項を適用するか、あるいはフィーダーシリーズでの出稼ぎが必要だった。
ハータはインディカーで最も実績あるドライバーではないものの、2019年に18歳で最年少優勝を飾り、翌年には世界トップレベルのプロドライバー達を相手にランキング3位を勝ち取った実力を持つ。
レッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは、そんな実績を持つハータが官僚的なポイントシステムを通じてF1参戦に足る実力がある事を証明しなければならない状況は「理解できない」と語った。
また、マノー・マルシャから5戦を戦った経験を持つ元アメリカ人F1ドライバーにして2016年のインディ500チャンピオンであるアレクサンダー・ロッシも現在のポイントシステムについて批判し、同じインディカードライバーのグレアム・レイホールは「F1はエリート主義のスポーツ」だと非難した。
不可抗力条項については、適用の是非を巡って議論が起こった。結局、FIAがこの例外的な措置を認めることはなく、レッドブルはスーパーライセンス取得の見通しが立たなくなった事からハータの起用を諦め、ニック・デ・フリースへの接触を開始した。
コルトン・ハータは英Autosportとのインタビューの中で「FIAの立場は理解できる」と述べ、特別扱いによるF1参戦は自身の望むところではなかったと明かした。
「インディカーはスーパーライセンスのポイント配分という点で過小評価されていると思う」
「ただ、それが現在のポイントシステムだという事は理解している。僕は”例外”として参戦したくはない」
FIAが作り上げたF1を頂点とするヒエラルキーで最上位に位置付けられているのは、フィーダーシリーズであるFIA-F2選手権だ。
非フィーダーシリーズのインディカーはチャンピオンへの得点配分は40点と、F2と同じだが、ランキング2位以下へのポイント配分は概ね半分以下程度に過ぎない。
8点を埋め合わせるための一つの方策は、来年の1月から2月にかけて行われるフォーミュラ・リージョナル・アジア選手権への参戦だった。ランキング4位以上を勝ち取れれば40点の要件を満たす。
だが、既にプロドライバーとして確立された評価と経験を持つハータは、若手のための修業の場で荒稼ぎする事を良しとしなかった。
「既に4年もプロドライバーをやっているのにフィーダーシリーズに出走しなきゃならないのはおかしいと感じたから、真剣に検討する事はなかった」とハータは語った。
アルファタウリでの来季デビューの可能性は消滅したものの、ハータは将来的にアンドレッティ・グローバルと共にF1の舞台に上がる可能性を信じている。
「今後数年のうちに、(マイケル・アンドレッティが)チームを買収する機会が訪れるかもしれない」
「誰かが売却を考えているかもしれない。新しいエンジンメーカーの参入によって売却の機会が訪れれば、チームオーナーの見方が大きく変わる可能性もある」
「マイケルには僕をF1に出走させる用意があると思ってる。ただ、そのオファーにはある程度の時間的成約があるだろうね」
「もし僕が26歳になる頃に彼が僕をF1マシンに乗せたくないと思ったとしても、それは理解できる話だ」