F1:2021年スプリント予選導入を正式決定!改定パルクフェルメや”タイヤ縛り”含むルールを解説
国際自動車連盟(FIA)、そして今季グリッドに付く全10チームの合意を経て、F1は2021年シーズン中の3つのグランプリでスプリント予選方式(Sprint Qualifying)を導入する事を正式決定した。
過去数ヶ月に渡って導入の是非を巡る議論が行われてきたが、実質的なレース数の増加によって発生するコスト増への対応策がチーム側に受け入れられた事から、月曜日に行われたF1コミッションの投票を経て全会一致で採択された。世界モータースポーツ評議会(WMSC)で正式承認される見通しだ。
スプリント予選はグランプリ週末の土曜午後に計100km(25~30分程度)のレースを行い、その結果によって日曜の決勝レースのスターティング・グリッドを決定するもので、レース上位3名にはチャンピオンシップポイント(1位:3点、2位:2点、3位:1点)が与えられる。
現時点で開催地は未定だが、シルバーストーン(イギリスGP)とモンツァ(イタリアGP)が有力視されている。インテルラゴス(ブラジルGP)も候補に挙がっているが見通しは不明瞭だ。いずれにせよF1はヨーロッパで2回、フライアウェイイベントで1回を行うとしている。
追記:改訂版レギュレーションが発行され一部内容に変更があるため、最新情報はスプリント予選レースとは?を参照されたい。
フォーマット
スプリント予選が採用される各週末のフォーマットは以下に改定される。
日 | 時間 | セッション |
---|---|---|
金曜 | 午前 | フリー走行1 |
午後 | 予選 | |
土曜 | 午前 | フリー走行2 |
午後 | スプリント予選 | |
日曜 | 午後 | 決勝レース |
”スプリント予選”そのもののグリッドは初日金曜午後の”予選”で決定される。”予選”のフォーマットは従来通りで、3ラウンド制によるノックアウト方式で1周のラップタイムを競う。
スプリント予選向けの表彰式は行われないが、優勝者にはパルクフェルメでトロフィーが授与される。なお短距離ゆえ、事実上ピットストップが行われる事はない。
フリー走行は金曜午前と土曜午前の2回、計120分間に渡って行われる。決勝レースはスプリント予選の順位でグリッドが決められ、従来通り日曜に行われる。
タイヤに関するルール
タイヤに関しては各セッションで使用可能なセット数が制限される。
2回のフリー走行およびスプリント予選では各車、2セットをソフト、ミディアム、ハードの中から自由に選択できるが、予選では5セットの新品ソフトのみに制限され、決勝は余った残りの2セットを使用する。よって決勝でのスタートタイヤの縛りはなくなる。
雨用タイヤに関しては、通常の週末と同じ様に浅溝のインターミディエイトが4セット、深溝のフルウェットが3セットずつ各車に供給されるが、状況によっては追加で2セット、最大9セットの雨用タイヤを使用する事ができる。
FP1または予選がウェットの場合、チームはインターを1セット追加で受け取る事ができるが、スプリント予選前に使用済みのインターを返却しなければならない。
スプリント予選がウェットの場合、チームは使用済みのウェットまたはインターを1セット返却し、その代わりに新品インターを受け取る事ができる。
パルクフェルメ制限
初日午後の予選開始からパルクフェルメ規定が適用される。つまり一旦予選が開始されるとチームはマシンに手を加える事ができない。これは”予選専用マシン”を禁止するものだ。
ただし土曜のFP2セッションをより有意義なものにするために、若干の余地が認められる。変更可能なパーツに関する詳細な情報は追って発表されるが、幾つかについては明らかにされているため以下に紹介したい。
安全上の理由からブレーキダクトの変更は可能。また、例えばスプリント予選でパーツが壊れた場合、従来のルールでは同一スペック以外への交換はペナルティの対象であったが、不足していて在庫がない場合は罰則なしに別仕様に変更する事が出来る。
予選からスプリント予選までの間に関しては、スプリングやダンパーなどのサスペンションエレメントの変更や調整、キャンバー、トー、ライドハイトの変更が認められる。
更に予選開始1時間前とスプリント予選開始1時間前のコンディションが異なる場合、具体的にはFIA指定の気象サービスが提供する気温が10℃以上異なる場合は、パワーユニット及びギアボックスの冷却調整のために、エンジンカバーの切れ込み、排熱孔の変更が認められる。
スプリント予選についてF1のステファノ・ドメニカリCEOは「レース週末をより魅力的」にする可能性を秘めたものであるとして、ファンやドライバーからの広範な支持に楽観的な姿勢を示した。
また「すべてのチームがこの計画を支持してくれたことを嬉しく思う。これは、このスポーツの伝統と実力主義を維持しつつも、新しい方法でファンに貢献しようとする我々の団結した努力の証しだ」と付け加えた。
ジャン・トッドFIA会長は「競技面、技術面、財務面での公平性確保」のために多くの議論が重ねられたとして「全ての利害関係者が協力し合っており、F1はかつてないほど強く団結している」と強調した。