
「3つの変数」が鈴鹿を揺らす― F1日本GP、速さの鍵は”読解力”にあり?
2025年FIA F1世界選手権第3戦日本グランプリが、いよいよ今週末、三重県鈴鹿サーキットで開催される。春の陽気に包まれる中、今大会は例年以上に“対応力”と“戦略眼”が問われる一戦となりそうだ。
今週末の鈴鹿でドライバーとエンジニアに求められるのは、今季初投入となる最も硬いC1コンパウンド、改良型のC2・C3、そして再舗装された路面という、三つの変数を見極める“読解力”だ。
特にフィールド全体が拮抗する中、これらを的確に把握し、最適なセットアップと戦略を組み上げたチームこそが、春の鈴鹿を制することになるだろう。
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited
スタート直後のターン1の様子、2024年4月7日に鈴鹿サーキットで行われたF1日本GP決勝レースにて
鈴鹿で今季初登場「C1」改良されたC2/C3
ピレリは例年通り、鈴鹿にC1(ハード)、C2(ミディアム)、C3(ソフト)という最も硬いレンジのコンパウンドを持ち込む。これは鈴鹿が、F1カレンダーの中でタイヤに対する負荷が最も高いサーキットの1つであるためだ。
今季初投入となるC1は2024年仕様と大差ないが、C2とC3は柔らかく変更されており、性能差の拡大が予想されている。各チームはフリー走行を通じて、これらのコンパウンドにおける摩耗とデグラデーションの傾向を把握し、決勝に向けた最適なセットアップを見極める必要がある。
「再舗装」で変わる鈴鹿、最大1.5秒短縮も?
今大会の最大の変数は、サーキットの大規模な再舗装だ。最終シケイン出口から第1セクター終端までの区間に新しいアスファルトが敷かれた。ここは高速コーナーが連続する区間で、鈴鹿の中でも特にタイヤに大きな負荷がかかるエリアとして知られている。
ピレリと各チームのシミュレーションによると、新舗装によるグリップ向上とマシン性能の進化により、ラップタイムは最大で1.5秒短縮される可能性があるという。
加えて、週末を通じたトラック・エボリューションの進行具合も注目される。ピレリはこうした変化を見越し、スタート時の最低空気圧をフロント24.5psi(-0.5)、リア23.5psi(+0.5)に微調整。フリー走行のデータを基に、必要に応じてさらなる調整も視野に入れている。
Courtesy Of Red Bull Content Pool
鈴鹿サーキットのS字区間を駆け抜けるF1マシン、2022年10月8日F1日本GP FP3
データが示す傾向、今年は多様な戦略が見られる?
昨年の日本GPでは、C1が全周回の61%、C2が31%、C3がわずか9%の使用率にとどまった。戦略としては2ストップが主流で、ソフトタイヤは一時的なスティントに限定される傾向にあった。
特筆すべきは、フェラーリのシャルル・ルクレールがミディアム〜ハードの1ストップ戦略を採用し、4ポジションアップの8位でフィニッシュした事例だが、今年はC2・C3の耐久性が意図的に下げられたため、1ストップ戦略の成功難度はさらに高まると予想されている。
それでもなお未知数は多く、特にC2とC3の変更を背景に、今大会では戦略の多様化が期待されている。