F1オランダGPより適用の「非対称制動システム禁止ルール」が意味するものとレッドブルへの影響
国際自動車連盟(FIA)はサマーブレイク中にF1技術規則を変更し、”左右非対称ブレーキシステム”の禁止を明確化した。このルールは夏休み明けの初戦、オランダGPより適用される。
第11条1項2号に新たに追加された文言には、「特定の車軸に対して、体系的または意図的に非対称な制動トルクを発生させるシステムまたはメカニズムは禁じられる」とある。
クルマの左右でブレーキ圧が異なるシステムを採用することのメリットは、トルクステア(左右の駆動トルクの差から、ステアリングを切らなくてもクルマが曲がろうとする現象)を利用した旋回性能の向上だ。
現行のグラウンドエフェクトカーは特に低速コーナーでアンダーステアに陥りやすく曲がりにくい。故に左右非対称ブレーキシステムは理論上、クルマのパフォーマンスに大きな影響を与え得る。
もともと、この規定には「ブレーキシステムは、各サーキットにおいて、ブレーキパッドに加わる力が同じ大きさで、特定のブレーキディスク上で対向作用するよう設計されていなければならない」と記されていた。つまりトルクステアの利用は以前から禁止されていたわけだ。
明確化されたのは2026年のレギュレーションがきっかけだった。新時代のルール策定に際し、現行レギュレーションを精査する過程で2024年と2025年の規定に明記された。実際、2026年のルール草案には同じ文言が盛り込まれている。
シーズン途中の規則変更は常に憶測の対象となる。掲示板やソーシャルメディアでは、一部のチームが違法に左右非対称ブレーキシステムを使用していたのではないかとの噂が飛び交った。
中でも開幕5戦で4勝を挙げながらも一転、以降は3勝に留まっているレッドブルの名前が取り沙汰されたが、オランダGPを前にマックス・フェルスタッペンは、規定変更がレッドブルのパフォーマンスに影響すると思うか?と問われると「それはまったくない」と否定した。
違法行為の取り締まりは通常、技術指令(TD)の発行を通して行われるが、今回はレギュレーションそのものが変更された。
英AUTOSPORTによるとFIAは「如何なるチームもそのようなシステムを使用していたという事実はない」として、違法なシステムの使用が確認されたことに伴う措置ではないと説明している。
とは言え究極的には、それは違法ブレーキシステムを使用していたチームが存在しないことを証明するものではない。
仮にこの抜け穴を利用していたチームがあったとすれば、オランダGP以降は特に低速コーナーのパフォーマンスが大幅に低下する可能性がある。僅差の戦いにおいてそれは、リザルトに目に見える違いを生じさせることになるだろう。