ガレージに立つエイドリアン・ニューウェイ(レッドブル・レーシング最高技術責任者)、2024年4月6日(土) F1日本GP予選
Courtesy Of Red Bull Content Pool

予算上限ルールの「隠れた危険性」F1業界全体に悪影響を及ぼしていると警鐘を鳴らすニューウェイ

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レッドブル・レーシングの最高技術責任者を務めるエイドリアン・ニューウェイは、財政面での持続可能性と競争力の平準化を目的とする予算上限ルールについて、F1業界全体に思わぬ悪影響を及ぼしていると警鐘を鳴らした。

F1は2021年、史上初となる財務レギュレーションを導入した。これにより各チームは、規模の大小を問わず指定された予算の範囲内でチームを運営しなければならなくなった。

ファクトリーや風洞、シミュレーターなど、規定導入以前のインフラへの投資額に違いがあるため、今も旧来のトップチームがリソース面において多かれ少なかれ有利な立場にあるのは確かだが、チーム間の競争力格差は着実に縮まっており、規定の効果については広く認められている。

しかしながらニューウェイは、優秀な若手エンジニアのリクルーティング、そして既存のF1スタッフの他業界への流出という面において、コストキャップ規定が業界全体に悪影響を及ぼしていると考えている。

蘭「RacingNews365」とのインタビューの中でニューウェイは「コストキャップが導入された当初に我々の誰もが真剣に考えていなかった、隠れた危険性があると思う。F1はそれまで世界で最も給与が高いエンジニアリング分野だった」と語った。

「そのため我々は、大学から最も優秀な若い卒業生を惹きつけ、採用することができた。だが今はコストキャップがあり、インフレの程度に合わせて予算の上限額が引き上げられていないため、それはもはや当てはまらない」

「これは両刃の剣なんだ。新興テクノロジー企業が非常に高い給与を提示しているため、卒業生に魅力を訴えようとして大学に行っても、今の我々はもはや最高の企業ではなくなってしまっている」

「既存のスタッフについても同じだ。テクノロジー企業に人材を奪われている。これは我々チームにとってだけでなく業界全体にとっての大きな問題だ。世界最高のエンジニアを惹きつけるのが難しくなっている」

仕事に求める要素として「給与」か「やり甲斐」かという命題はよく聞かれるが、ニューウェイによるとレッドブル・レーシングは現在、新卒の採用で給与より、やり甲斐をアピールしているという。

ニューウェイの指摘は、F1のエンジニアリングの水準を低下させ、長期的な課題を引き起こす可能性があるという点で興味深いものと言える。