F1:結局何がどうなっていたのか? ライコネンを天から地へ突き落とした”世にも奇妙”なレギュレーション是正へ
キミ・ライコネンを天から地へと突き落とした世にも奇妙なレギュレーションが是正される見通しとなった。問題視されているのはスポーティングレギュレーションの整合性で、リスタート方法の違いによるオーバーテイクの扱い、そしてセーフティーカー先導下における追い抜き条項の「矛盾」だ。
2007年のF1ワールドチャンピオンは、イモラサーキットで開催された前戦エミリア・ロマーニャGPで9位フィニッシュを果たし、アルファロメオにとっての今季初ポイントを持ち帰ったかに思われたが、レース後にリスタートに関わる規約違反で30秒の罰則裁定が下り13位に転落。ポイントを剥奪された。
何が起きたのか?
ジョージ・ラッセルとバルテリ・ボッタスのクラッシュを経て、生き残った17台のマシンは再スタートに向けてセーフティーカー先導でコースに向かったが、ライコネンはフォーメーションラップの最初のシケインでスピンを喫し8番手から10番手に後退した。
レース再開時の追い抜きについて定めたF1競技規約第42条6項は、第1セーフティーカーラインまでであればポジションの回復を許可しているが、それが出来ない場合はピットレーンに入り、全車通過後にコースに復帰する事と定めている。
ライコネンはターン14までに先行車に追いついたものの、このタイミングでレースコントロールはスタンディングではなくローリング・スタートを決断。セーフティカーライトは消灯し、FIAのインフォメーションスクリーンにローリングスタートを意味する「RS」が表示されたため、ライコネンはチームからの指示で追い抜きを断念しポジションをキープした。
なぜチームはライコネンに追い抜くなと伝えたのか?
「RS」の点灯の瞬間、ローリングスタート時の手順について定めたF1競技規約第42条12項が適用される事となったためだ。先の第42条6項では条件付きでの追い抜きを許可しているが、同項では「セーフティカーライトの消灯以降は、如何なるドライバーもラインを通過するまで他車を追い越してはならない」としている。
この状況に対してアルファロメオは、レースディレクターのマイケル・マシに対して無線で指示を仰いだが時間内に応答が得られず、結局ライコネンはピットに戻らなかったというわけだ。
そもそも、リスタートに向けてセーフティーカーが隊列を率いてコースに出る時点で、レースの再開方法がスタンディングかローリングかは決められておらず、セーフティーカーが路面の状態を確認した後にレースコントロールが判断を下す仕組みになっている。
スチュワードは規約解釈上、ライコネンにペナルティを科す他にないと結論づけたが、同時にルールには「矛盾」があるとも付け加えて、整合性が取るために何らかの対処が必要との認識を示した。
スチュワードの言う1つ目の「矛盾」は、”条件”付きでの追い抜きを許可しつつも、再スタート方法がスタンディングからローリングに変更された瞬間に”条件”が満たせない恐れが発生する第42条6項と第42条12項についてだ。
もう一つは、競技規約においてはそもそもセーフティーカー先導中の追い抜きが禁止されているにも関わらず、リスタートの際にのみ追い抜きが許可されている点だ。ライコネンは2重の”矛盾”に満ちたルールを放置してきた統括団体のツケを肩代わりしたとも言える。
伝えられるところによると、今後同様の事態が発生した場合に備えて、次戦ポルトガルGPを前にスポーティング・ディレクター達によるオンライン会議が行われたという。まだ正式発表はないため詳細は不明だが、解釈の変更か規約そのものの変更により再発防止が図られるものと見られる。