新車「VCARB 01」初期型はアルファタウリ最終型と大差なし「かなり厳しい」滑り出しになる、とメキーズ
ラスベガスでのイベントで満を持して発表された2024年型F1マシン「VCARB 01」ローンチスペックの競争力についてビザ・キャッシュアップRBのローラン・メキーズは、昨年型アルファタウリ「AT04」の最終型と比較して大きな違いはないとの見通しを示した。
「VCARB 01」はフロント・サスペンションを自社製からレッドブル・テクノロジー製に切り替えた。当然の帰結としてプッシュロッドからプルロッドへと変わり、レッドブル、マクラーレン、ザウバー(ステイクF1)陣営に続いた。
ただし、アンチダイブ(前傾防止)特性の強化を狙うウィッシュボーンのジオメトリに大きな違いはないように見える。ノーズの形状にも手が加えられているが、レッドブルRB19のようにノーズとメインプレーンとの間にスロットギャップがあるわけではない。
また、ライバルチーム同様にラジエター・インテークをレッドブル風の”アヒル口”へと変化させているが、サイドポッドやリア・サスペンションは先代と変わっていない雰囲気で、プレシーズンのレンダリングという事もあるだろうがフロアにも既視感が漂う。
メキーズはF1公式サイトとのインタビューの中で、序盤の競争力を予想するよう求められると、今年のクルマの「出発点は昨年のアブダビとそれほど変わらない」と答え、厳しいスタートになるとの見通しを示した。
「現在進めている大幅な変更と合わせて、我々は新しい道筋と開発レートを見つけようとしている。それが良いポジションをもたらしてくれることを願っているが、シーズンの序盤はおそらく、かなり厳しいものになるだろうと覚悟している」
メキーズが序盤の苦戦を予想する理由として挙げたのは昨シーズンの開発計画だ。
例えば選手権争いのライバルとなったウィリアムズなど、シーズンの折返しを前に開発を終了したチームがある中、RBの前身であるアルファタウリは積極的にクルマの開発を推し進め、最終アブダビGPにさえ新型フロアを投入した。
一般的に言えば、その年のクルマに最後までリソースを割き続ければ、当然その翌年の開幕で大幅なパフォーマンスアップは望めない。チーム再編も2024年のスタートダッシュに良い影響を与える事はないだろう。
ただ、AT04の最終型はコンスタントにポイント争いに絡んだクルマで素地は悪くなく、仮にレンダリングが示すように大幅な変更が最小限で基本コンセプトが変わっていないとするならば、目も当てられないようなスタートは避けられる可能性がある。
また結局のところ、チャンピオンシップは開幕戦ではなく最終戦のチェッカーフラッグを以て決する戦いだ。ダニエル・リカルドは「トップ5が目標であるべきだ。それができれば表彰台も狙えるかもしれない」と野心をのぞかせており、その陽気な性格もあって「楽観的」と言って憚らない。
他チームへの供給が認められているパーツ、いわゆるトランスファラブル・コンポーネント(TRC)にはギアボックスやサスペンション、パワステやハーネス全般、油圧ポンプやリア・インパクト構造などが含まれる。
「VCARB 01」は当初、規約で許される最大限のパーツをレッドブル・テクノロジーから購入するのではとも見られていたが、メキーズは限りなく多くを流用するものの、TRCに分類されるすべてをレッドブルに頼ったわけではないと説明した。
一見するとTRCは良いことづくめのように思われるかもしれないが、クルマを構成する部品を他チームに委ねるデメリットも当然に存在する。
例えば、他チームが設計したギアボックスを使用する場合、それが最終的にどのような形状やサイズになるのかは他チーム次第であり、最終仕様が確定するのをひたすらに待ち続けなければならない。この時間差は自チームのサスペンションの取り付けポイントの位置決めに影響し、ひいてはエアロダイナミクスの設計の決定にも影響を及ぼすことになる。
レッドブルとの連携という点で効率化を図るべく、空力部門と一部のデザイン部門が置かれていた英国ビスターの拠点はシニアチームのレッドブルがファクトリーを構えるミルトンキーンズに移転する。
メキーズは「2箇所に本部があることは常に不利に働いてきた」としつつも「2024年を迎えた今、人々の関わり方を含めて世界は大きく変化している。我々は場所を問わない会社にしたいと考えている」「英国でも最高の人材を雇用する事ができるうえに、ヨーロッパでも最高の人材を雇うことができる」と述べ、複数の拠点がある事をアドバンテージに変えていく方針を示し、「より良い成績を目指して戦えるよう、全力で取り組んでいるところだ」と付け加えた。