
「あと1票」が遠い…2027年F1コストキャップ改革、浮かび上がった“埋まらぬ温度差”
ウィリアムズが求めるF1コストキャップの見直しは、2027年の導入に必要な支持の確保が難しい見通しとなっている。現時点では5チームの賛成が見込まれる一方、改定に必要な6票目として期待されていたレーシング・ブルズが、大幅な変更に否定的な姿勢を示した。
ウィリアムズのチーム代表ジェームズ・ヴァウルズは、小規模チームが長年の投資不足を埋められるよう、チャンピオンシップの得点や順位に連動する形で追加予算を認める新たな仕組みを財務規則に盛り込むよう働きかけている。この提案は、次回のF1コミッションでチームによる採決にかけられる見通しだ。
アストンマーティン・ホンダ、アウディ、キャデラック、そしてアルピーヌの4チームは、提案を大筋で支持しているとされる。この場合、ウィリアムズを加えて5票となるが、2027年の変更には全11チーム中6チームの賛成が必要となる。
VCARB、コストキャップ全面改定に反対
Courtesy Of McLaren
パドックを歩くアラン・パーメイン(レーシング・ブルズ代表)、2026年8月20日(木) F1オランダGPメディアデー(ザントフォールト・サーキット)
2026年F1第17戦シンガポールGPの初日会見で、レーシング・ブルズのチーム代表アラン・パーメインは、「支出を大幅に増やせるようにするため、コストキャップの規則を全面的に変更することには、我々は賛成しないと思う」と語った。
制度の導入から6年目を迎え、現行のコストキャップはチームとF1の双方に大きな恩恵を与えていると評価したうえで、細かな修正の余地を認めつつも、設備投資については現行の仕組みで対応可能だと主張した。
「設備投資に多額のお金を使いたいなら、それは今でもできる。そのための仕組みはすでにあるのだから」とパーメインは語り、複数年にわたって償却していく方法を挙げた。
レーシング・ブルズ以外で残された中団チームとしてはハースが挙げられるが、今回の提案には反対の立場を採っているとみられている。
メルセデスとマクラーレン、制限緩和に否定的
トップチーム側も、設備投資の制限緩和によって、財務の安定や競争の接近といったコストキャップの成果が損なわれることを懸念している。
メルセデスのチーム代表トト・ウォルフは、成績が低いチームほど追加の恩恵を受ける方式に極めて否定的だ。順位に応じた補正を、性能調整に当たるバランス・オブ・パフォーマンス(BoP)に近いものと捉えており、「耳にするだけで頭に血が上る」と強い嫌悪感を示した。
また、過去に多額の設備投資を行ったメルセデスでは、その減価償却費がコストキャップに算入され、年間の運営予算を圧迫していると説明した。過去の投資が少ないチームには、その分だけインフラなどへの支出の余地があるという。
ウォルフは「巨大な機械加工部門や大規模な生産設備を抱えた、昔ながらの古いタイプのF1チームという、大きな足枷を抱えていることは承知している」と語り、ヴァウルズに対して共感を示したうえで、「1、2年前に我々が意図して変更したものを覆してしまわないよう、適切なバランスを見つける必要がある」と語った。
マクラーレンのCEOを務めるザク・ブラウンも、設備への投資を増やすか、マシンの部品や開発に資金を充てるかは、各チームが判断すべきとの考えを示した。
そのうえで、2025年シーズンの勢力図を「F1史上最も接近していた」と評価し、自身がレースを見て育った時代には通常1、2チームだった勝者が、今では4チームに増え、2026年には5つのチームがポールポジションを獲得したと指摘。「どんな議論にも耳を傾けるつもりだ」としつつも、「今のままでもF1は非常に競争が激しいと思う」と述べた。
なお、ヴァウルズが主張しているのは、コストキャップによって上位4チームとそれ以外の格差が拡大しているという点であり、ブラウンの発言は、その問題提起に直接答えるものではない。
ウォルフ、人材流出防ぐ給与枠の改定には余地
一方、ウォルフはコストキャップの特定の側面については、修正を検討する余地があると考えている。給与水準が抑えられていることで、優秀な人材を他業種に奪われかねないとの懸念からだ。
「今でも情熱を頼りにF1チームに人を迎えることはできる。だが、5年、6年、7年と働き、博士号も持っているのに、テクノロジー企業やヘッジファンド、投資銀行と比べて給与が低いままだと、問題になってくる」とウォルフは語った。