
F1アブダビGP決勝展望:角田は“盾”に?タイヤ戦略考と天王山の見どころ総覧、天気・グリッド
日本時間12月7日(日)22時にスタートが予定されている2025年シーズンのF1最終第24戦アブダビGPの決勝レース。ここでは、スターティンググリッド、予選結果からの変更点、外せない見どころ、そして予想されるタイヤ戦略と天候状況について整理する。
グリッド:全車予選順で決勝へ
執筆現時点で降格ペナルティを受けた者はなく、全車が予選順位通りにグリッドに並ぶ見通しだ。
以下は暫定スターティンググリッド。正式版との差異が発生した場合は更新される。各ドライバーの予選結果からの変動も併せて記載する。
| Pos | Driver | Team | Qualifying |
|---|---|---|---|
| 1 | M.フェルスタッペン | レッドブル | 1(-) |
| 2 | L.ノリス | マクラーレン | 2(-) |
| 3 | O.ピアストリ | マクラーレン | 3(-) |
| 4 | G.ラッセル | メルセデス | 4(-) |
| 5 | C.ルクレール | フェラーリ | 5(-) |
| 6 | F.アロンソ | アストンマーチン | 6(-) |
| 7 | G.ボルトレート | ザウバー | 7(-) |
| 8 | E.オコン | ハース | 8(-) |
| 9 | I.ハジャー | レーシングブルズ | 9(-) |
| 10 | 角田裕毅 | レッドブル | 10(-) |
| 11 | O.ベアマン | ハース | 11(-) |
| 12 | C.サインツ | ウィリアムズ | 12(-) |
| 13 | L.ローソン | レーシングブルズ | 13(-) |
| 14 | A.K.アントネッリ | メルセデス | 14(-) |
| 15 | L.ストロール | アストンマーチン | 15(-) |
| 16 | L.ハミルトン | フェラーリ | 16(-) |
| 17 | A.アルボン | ウィリアムズ | 17(-) |
| 18 | N.ヒュルケンベルグ | ザウバー | 18(-) |
| 19 | P.ガスリー | アルピーヌ | 19(-) |
| 20 | F.コラピント | アルピーヌ | 20(-) |
レースの模様はDAZNとフジテレビNEXTで完全生配信・生中継される。
天王山の主な見どころ
2025年のF1シーズンが、ついに決着の時を迎える。アブダビGPの決勝レースは、タイトルを争う3名がトップ3グリッドを占拠する刺激的な展開となった。
最大の注目ポイントは言わずもがな、12ポイント差でランキング首位に立つランド・ノリス(マクラーレン)と、逆転5連覇を狙うマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)の攻防だ。
フェルスタッペンの勝利条件と「禁断の戦術」
Courtesy Of Red Bull Content Pool
ドライバーズ会見に出席するポールポジションのマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)、2番手のランド・ノリス(マクラーレン)、3番手のオスカー・ピアストリ(マクラーレン)、2025年12月6日(土) F1アブダビGP予選(ヤス・マリーナ・サーキット)
ポールポジションのフェルスタッペン、2番グリッドのノリス、そして3番グリッドのオスカー・ピアストリ。ノリスの戴冠条件はシンプルだ。ライバルの結果にかかわらず、決勝で3位以内に入れば、その瞬間に自身初のワールドチャンピオンが確定する。
対するフェルスタッペンのハードルは高い。自身が優勝した上で、ノリスが4位以下に終わる必要があるからだ。仮にフェルスタッペンが独走優勝を果たしても、ノリスが表彰台に上がれば、その野望は潰えることになる。
ここで浮上するのが、かつて2016年にルイス・ハミルトンがニコ・ロズベルグに対して仕掛けた「ペース・マネジメント」という名の妨害戦術だ。
先頭という立場を利用してあえてペースを落とし、2番手ノリスを背後の集団に近づける。そうすることで、4番手スタートのジョージ・ラッセル(メルセデス)らを争いに巻き込み、ノリスを4位以下へ突き落とすオーバーテイクの”カモ”にするというシナリオだ。
フェルスタッペン本人は、現在のマシンおよびタイヤ特性上「やりにくいだろう」と否定的な見解を示している。だが、勝つためには手段を選ばない王者が、土壇場でどのような判断を下すかは誰にも予測できない。
ピアストリがタイトルを掴むための条件はさらに厳しい。フェルスタッペンとノリスがノーポイントでも、2位以上でなければチャンピオンの可能性はない。
なお、アブダビGPでは過去10年間、ポールシッターが必ず優勝している。データはフェルスタッペンの勝利を後押しするが、それだけでは奇跡の逆転劇は完結しない。
数億円が動く中団の「マネー・ゲーム」
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited
ガレージアウトするフェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)、2025年12月6日(土) F1アブダビGP予選(ヤス・マリーナ・サーキット)
視線を後方に移せば、そこにはもう一つの熱い戦いがある。コンストラクターズ選手権6位から9位の争いだ。順位一つで分配金が数億円単位で変動するため、各チームにとって死活問題となる。
現在6位につけるのはレーシング・ブルズだが、その座は決して安泰ではない。12ポイント差で追うアストンマーチンは、百戦錬磨のフェルナンド・アロンソが6番グリッドという好位置を確保している。
さらに、アストンに対してハースが7点差、ザウバーが12点差で肉薄する大混戦。ハースはエステバン・オコンが8番手、ザウバーは期待の新人ガブリエル・ボルトレートが7番手と、好位置につけている。
これらのチームが逆転を狙って「ゼロかイチか」の大胆な戦略を採る可能性は大いにある。また、互いに近いポジションでスタートするため、接触によるアクシデントがセーフティカーを呼び込み、タイトル争いを含むレース全体の流れを一変させるかもしれない。
なお、F1グリッドに「ザウバー」の名が並ぶのは、今回のアブダビGPが最後となる。スイス・ヒンウィルのチームは来季より「アウディF1チーム」として再出発する。すでにアウディによる完全買収は完了しており、「ザウバー」が再びF1に帰ってくる可能性は事実上、ゼロに近い。
チーム創設者ペーター・ザウバーがガレージからその幕引きを見届ける中、ボルトレートとニコ・ヒュルケンベルグは、長い歴史を持つプライベートチームのフィナーレに華を添えることができるだろうか。
Courtesy Of Sauber Motorsport AG
ペーター・ザウバー、2025年12月5日(金) F1アブダビGPフリー走行(ヤス・マリーナ・サーキット)
タイヤ戦略:1ストップ優勢も…
2024年のアブダビGPでは「ミディアム→ハード」の1ストップ戦略が主流となった。一方、ルイス・ハミルトンは「ハード→ミディアム」の逆張り戦略を採用し、16番手スタートから4位フィニッシュを果たした。
Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.
2024年F1アブダビGP決勝におけるドライバー別タイヤ戦略と順位(ヤス・マリーナ・サーキット)
レッドブルのレーシング部門を率いるジャンピエロ・ランビアーゼは、初日セッション後の分析で「タイヤデグが予想以上に高い」と指摘し、当初想定していた“単純な1ストップレース”になる可能性に懐疑的な姿勢を示していた。
しかしながら、最新データに基づくピレリのシミュレーションでは、昨年と同じ「ミディアム→ハード」の1ストップが最速と予測されている。推奨ピットウインドウは「20〜26周目」だ。
次善策は「ハード→ソフト」の1ストップで、こちらの推奨ピットタイミングは「39〜45周目」。後方スタートのドライバーが逆転を狙う場合、昨年のハミルトン同様、強力な選択肢となる可能性がある。
2ストップはやや不利、ただし条件次第で一変
2ストップ戦略についてピレリのモータースポーツ部門を率いるマリオ・イゾラは「やや競争力に欠けるように見える」としつつ、「ミディアム→ハード→ミディアム」が2ストップの中では最良との見解を示している。推奨ピットウインドウは「15〜21周目、37〜43周目」だ。
これは、1ストップ勢をオーバーテイクする際に、タイヤを痛め、タイムをロスするため、総合的に見れば1ストップに分があるとの見通しが背景にある。
ただし、各コンパウンドで初日に確認されたフロントのグレイニングが再発する場合、戦略図は大きく変わる。タイヤが持たない展開になれば、単純に“2ストップが速くなる”可能性があるからだ。
なお、予選が史上稀に見る僅差(Q2でトップから最下位までが0.367秒)であった事を踏まえると、決勝は “戦略こそが勝敗を決めるレース” になる可能性が高い。
タイトル候補3名の戦略予想
Courtesy Of Red Bull Content Pool
ポールポジションのマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)、2番手ランド・ノリス(マクラーレン)、3番手オスカー・ピアストリ(マクラーレン)、2025年12月6日(土) F1アブダビGP予選(ヤス・マリーナ・サーキット)
では、タイトル候補はどのようなタイヤ戦略を取るのか。
ポールスタートのフェルスタッペンは、奇をてらう必要がなく、最も合理的な「ミディアム→ハード」が濃厚と言える。
ノリスもタイトルを最優先すれば表彰台に上がりさえすればよいわけで、こちらも変則的な戦略を取る必要はなく、フェルスタッペンと同じ1ストップが有力と考えられる。
一方でピアストリは別だ。現実的には逆転優勝なくしてタイトルはあり得ず、トップ2の動きを見た上で、彼らとは異なるギャンブル的なアプローチを取る可能性がある。ただし、マクラーレンがフェルスタッペンに王座を奪われることを恐れ、ノリスを優先する場合はこの限りではない。
なおマクラーレン勢は唯一、新品ハードを2セット温存。一方でフェルスタッペンを含む幾つかのドライバーは新品ミディアムを2セット残しており、2ストップを視野に入れているチームは少なくない。
角田:マックス援護の“ロングスティント”か
Courtesy Of Red Bull Content Pool
予選に向けてガレージに入る角田裕毅(レッドブル・レーシング)、2025年12月6日(土) F1アブダビGP(ヤス・マリーナ・サーキット)
10番グリッドの角田裕毅は、フェルスタッペンのタイトル獲得を支援するため、レース中に“戦略的な役割”を担う可能性が高い。
レッドブルが想定し得る最も現実的な戦術は、角田の第1スティントを引き伸ばし、ピットアウト直後のノリスをコース上で抑え込むというものだ。フェルスタッペンが先頭でレースペースをコントロールできれば、この戦術はさらに有効に機能するだろう。
その役割を遂行する上では、スタートタイヤにハードを選択するのが自然な判断だが、多数がミディアムを選択する可能性がある以上、そこは”瞬発力”のデルタを踏まえた上で決定されることになるだろう。
気になる天気:ドライ確実
周囲を砂漠に囲まれた日曜の現地アブダビは、終日を通して降水確率0%の晴天が予想されており、天候がレースを左右する可能性は限りなくゼロに低い。
Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.
フリー走行でMCL39をドライブするオスカー・ピアストリ(マクラーレン)、2025年12月5日(金) F1アブダビGP FP2(ヤス・マリーナ・サーキット)