
角田裕毅の降格に広がる同情と懸念―「実力とは別の要因」とハミルトン、復帰を願うアルボンと複雑な胸中のローソン
角田裕毅が2026年に向けてF1レギュラーシートを失い、リザーブドライバーに降格するというニュースは、パドックにも波紋を広げている。
ライバルであるドライバーたちからは、角田の才能を惜しむ声とともに、レッドブル・レーシングが抱える特殊な環境を危ぶむ指摘が上がっている。
7度の王者が憂慮するレッドブルという“魔境”
Courtesy Of Red Bull Content Pool
2025年F1第16戦イタリアGPを前の木曜記者会見でルイス・ハミルトン(フェラーリ)と談笑する角田裕毅(レッドブル・レーシング)、2025年9月4日モンツァ・サーキット
7度のF1ワールドチャンピオンに輝いたルイス・ハミルトン(フェラーリ)は、角田の苦戦が単にドライバー個人の資質に起因するものではないとの見方を示した。
最終戦アブダビGPの開幕に先立ち、ハミルトンはヤス・マリーナ・サーキットで、レッドブルという組織が抱える構造的な問題を指摘した。
「ユーキは素晴らしいドライバーだよ。でも、あそこに行くドライバーは誰もが同じような経験をする。それは、彼らが優れていないという意味じゃない。明らかに“何か別の要因”があるんだ」
さらに、角田の後任としてレッドブルに昇格するアイザック・ハジャーに対して、「心配していないと言えば嘘になる」と異例のコメントを発した。
「誰もが知っているように、レッドブルに行くとどうなるかは明白だ。あの環境に放り込まれるんだからね。僕は中にいたわけじゃないけれど、外から見ていても間違いなく相当ハードなのは分かる。一方で、彼が今いるレーシング・ブルズは、かなり良い環境のように見える」
ハミルトンは、才能ある若者が潰されていく現状を憂慮している。
「だからこそ、彼(ハジャー)が適切なサポートを受けられるような変化が起きることを願っている」
アルボンの同情「間違いなくF1に留まる資格がある」
Courtesy Of Red Bull Content Pool
決勝前のドライバーズパレードに参加する角田裕毅(レッドブル)とアレックス・アルボン(ウィリアムズ)、2025年7月6日(日) F1イギリスGP(シルバーストン・サーキット)
誰よりも角田の気持ちを理解しているのは、アレックス・アルボンだろう。彼もかつてレッドブルのレギュラーシートを失い、リザーブドライバーとして1年を過ごした後に、ウィリアムズでF1復帰を果たした経験を持つ。
ドイツの専門メディア『Motorsport-Total』によると、アルボンは「今朝知ったばかりだよ。ユーキにとっては本当に辛いことだと思う」と同情を寄せ、次のように続けた。
「ユーキは本当に才能があると思うし、間違いなくF1に留まる資格があるドライバーだ。僕は彼が再びチャンスをつかめると思っている。チャンスは必ずある」
「ユーキにはその才能がある。彼がF1に戻ってくる姿を見たい」
ローソン「誰であれ同情する」複雑な思いを吐露
Courtesy Of Red Bull Content Pool
鈴鹿サーキットのコース上で並び立つ角田裕毅(レッドブル・レーシング)とリアム・ローソン(レーシング・ブルズ)、2025年4月6日(日) F1日本GP
角田と2026年のシートを争い、また、共にレッドブルのシステムに翻弄されてきたリアム・ローソン(レーシング・ブルズ)は、角田へのライバル心と同情、そして自身の経験が入り混じった複雑な思いを吐露した。
角田を気の毒に思うか──そう問われたローソンはこう答えた。
「ここに来るために長く努力してきた人に対しては、誰であれ同情するよ。ただ、多くの人はそもそもチャンスさえ得られない」
ローソン自身も今季序盤、わずか2戦でレッドブルのシートを失った。その意味では、彼もまた角田と同じく“レッドブルのセカンドシート”という毒杯を味わった一人だ。
F1についてローソンは、「本当に、本当に厳しいゲーム」と表現する。
「悪い時期には『すべては理由があって起きる』と言い聞かせるようにしているけど、信じ続けるのは簡単じゃない。だって、僕らは誰もが自分を信じているからね。自分より優れている誰かがいるなんて思っていたら、この世界では生き残れない」